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ー7ー闇の世界線「モノゴトリー」  作者: 醒疹御六時
第一章 リハビリテーション
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輪廻の予感

俺は事の真相を知りたくて緊張している。医師の見解では俺は頭を打っているという。だが倒れるまでに意識が徐々になくなり前が見えないし、音も聞こえない。そして眩い閃光が目の内を瞬時に広めてゆき、そして何もかも消えたように小波が見える。実際は何も起きずに倒れて口から泡を吹き白目になっている。当時は分からなかったが、俺は光を通ってこの世界へ来たのだ。


―――キィイイ――ッ


“――思い出せないと?君は眩き王だ。世界線が光って私達の元へ降臨した”

“そうか君は、かつての僕を憶えていないのか。僕は光の王だった者さ”

“あのホールは光と闇の集合体だよ。どうして生きていただって?それはねぇ――”


―――――ィイイ―――ッン


だが、当時の俺は記憶の無い状態だった。その俺が光など知らず彼とこうして相談する。それも、ここでの初日に支給された日誌を付けているからこそ出来る事だった。


「きっと記憶が戻るときがやってくるでしょう。決して焦らないように」

もっと早くに俺の記憶が戻せたならモノゴトリー協会の外の景色が見られる。

ここの施設内で働きそして外を見たい。他にも施設があるそうだが俺は俺の居た場所へ戻りたい。だが、今の俺はここから離れられないで居る。何故だろう。

「あの、もしかして運ばれる以前に暴れていたのでしょうか?教えてください・・・」

誰でもいいので、せめてもの情けをかけてほしくて声が漏れていた。

「俺やっぱりわかりません!すみませんが・・・何かこう、滑る様な感触が残ってっ!どこから流れていたとか――、滑ってッ頭を打っていたとか――!?もし、もしィ手掛かりが希望さえあれば、すこしは記憶が戻せると思うんですゥ―ッ!」

俺の記憶がまだら模様に見えてきて意識が飛んで行く。その俺の言葉一つ一つは酷く興奮していた様子。その様子は訓練されし医療班の誰もが見ても異様だろう。

「№850―ッ?」

医師は驚き俺の様子を窺った。彼は慌てて席を立つ。このような状態極めて稀ではないだろう?俺の居た場所は何処へ―――。

「フゥッ、フウゥ―ッ、だから先生ィ、俺はァア――ッ、ハァッ、ハァァアッ!!」

星よ、意志よ、どこへ向かう?俺はここまでやって来た。だが俺の意志は遥か遠くを見つめ何も訴えられないのか。いつかは約束を守れる等と信じているのか。

「№850ッ、ナンバーネーム850!・・・これはいかん――!!」


―――プスッ


医師は小型銃のようなもので俺を打った。俺は瞬時に意識を失った。そしてパチンッと音が鳴るとともに目が覚めた。パッチングといい暗示から目を覚ます手法である。


―――うん?俺は・・・何をしていたんだ・・・?


「№850、あなたは自己暗示に掛かっていた。それは遠い夢を見ていたのです」

涙が出た。

「いいですか?あなたはまだ運ばれてきて約7カ月。流れていたなら川で発見されたときに体へ擦り傷や感染症もあった筈です。これ等があなたの出生の手掛かりと示す判断材料としては不適切です。前を向いてください」

俺はボロボロとこぼれた涙を拭く。


――そうだ、記憶が戻れば俺はそれで元に戻る事ができる!


まだ7カ月なので判断のできる段階ではない。平静を取り戻せたなら俺はこの外の世界へ歩いているかも知れない。そう、俺の意識の中では繰返す。

外は豊かな緑と温かな空、冷たい水までありふれているのかと、俺はこの一室の天井へ頭を向けていた。遠い意識の中、この体はそれらを覚えていたのだった。

「もう一つ。№850自身が頭をぶつけていた。しかし記憶が無いことの理由が一致しない。理由が一致するならあなたの“意識はもう一つあったのだ”と判断できるとします。だが今は“その時”じゃない。私も、もしかしたら元々記憶がなく宛もなく彷徨っていただけかも知れない。だが私はあなたの目の前に居る。果たしてそれが真実かどうか№850、誰が決めるべきでしょう」


そうだ、俺はまだ自分がどのように動いていたのかすら覚えていない。だから俺の別の意識が働いていただけかもしれない。医師の意見に耳を傾けているこの日、今は現場で働いている方の意識で俺はその日を過ごさなくては明日が無い。


「あなたは今日、再びここへ運ばれた。そしてまたその原因を知りたくなる。そして落着けるよう自分を取り戻そうと必死だ。しかしそのことが一つでも分かるたびリハビリとして施設工事をするため働く。その苦しみはやがて消える。そこにあなたの明日があると祈ってください。そして今日は宿泊施設で休息をとるようにしてください。私から現場監督のほうへ連絡しておきますので、このままお帰り頂いて結構です」

「―――分かりました、先生。また運ばれたらお世話になりますね。俺も不安にならないように、安静に過ごしたいので」

「そうですか、それはいい事です。『決して焦ってはいけません』、どうかお大事に―」

それから俺は病院からそのまま宿泊施設へ足を向けていったのだった。

(さて、食事も済ませた。病院まで運ばれたが何とかシャワーも浴びられたな・・・)

また、明日も現場で働く。


―――そうか、君もそう思うのか・・・。

データーは送っておくから。・・・うん?本体だと?

・・・うん、うん――、なるほどォ~それはいい案だろう―――。

分かった、そうするよ―――。では、また頼むよ。


君は見ていてくれるだろうか?

時は過ぎ去るモノだという事を。

そして、この輪舞を―――。



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