あらすじ
この話は投稿先を考えていた最中に工事現場をみて思いついたものです。
今年7月1日に投稿し、再度、設定から構成をし直し、それが全10エピソードとなりました。
これは本編として描いているものの、今回投稿するのは全てではないかも知れません。
また、主人公は記憶喪失です。
※あらすじの文字数には入りきりませんでした。予めご了承ください。
※挿絵有
「お目覚めですか?」
彼の者が目覚めたのはモノゴトリー協会という総合施設だった。
その複合施設には医科学、人工生命、商工建築の文明により医療施設、工事区域、商業施設、自然区域、生態製造区域のほか、空中都市、地下鉱山で構成されている。
目が覚めた彼は医療施設の一つの医務室にいたが、そこで働いていた医師が迎えてくれた。なぜモノゴトリー協会付近の砂の上に倒れていたのかと尋ねられ、出生、名前、生年月日、年齢、家族関係、所持品の有無などを問われる。
「いえ、何も憶えていないのです」
彼は以前の記憶を失っており、医師のどんな質問にも答えることができない。記憶を失ったという混乱を隠せず、医師に一体何と答えればいいのか、どうすれば記憶を取り戻すことができるのかと尋ねる。
「まずは、検査から始めましょう」
医師は直ちに医療班と研究班に連絡し、彼の全身状態、身体年齢、生命状態の詳細な検査を実施した。それ等の資料によると、頭に打撲痕があったが、これにより記憶を失ったという。そこで医師は彼が起きてすぐ何を見たのかを尋ねる。
「はい、何とも眩しい光です」
身体年齢的には問題ないが、医師は記憶を覆していたモノが眩しい光である証言を得た事から彼の脳内神経損傷のほうを疑う。また身体感覚のバランスをとるのに時間がかかると推定され、25~30歳程度と推定される。彼は医師から、人生の状況には意識の奥深くにある記憶に問題があると教えられ、医師たちはそれを総合的にサンシャイン現象(何らかの衝撃により記憶が眩く感じ取れるモノ)と判断した。
「あなたは重度の記憶障害。まずはその記憶の回復に努めるべきです」
医師は彼に対し、身体の回復をリハビリテーションで記憶を持って行うことを提案した。モノゴトリー協会はまだ学習施設を建設していないため、日常生活の資金援助を行われることになり、医師は学習施設の建設区域で記憶力や身体年齢を測定したいと考える。
そのためには彼に対し、まず工事現場の宿舎で現場支援スタッフの監視下で生活をバックアップ。料理、買い物、住み方法を習い、そこでナンバーネームを決めておく。
「それで、自分は何をすればいいのです?」
医師は今の状態では生活条件のみでサンシャイン現象たる記憶障害とその身体能力を測るのは難しいと告げ、まずは定期的に医療班の監督のもとでカウンセリングを受ける事を提案する。そこで薬物と電波治療を行い、データー解析による記憶操作も行うので、いつか正常に戻る可能性を示唆する。彼自身には記憶が無いため日常生活の日記も必要で、肉体的に負担がかからない事を説明する。そしてモノゴトリー協会の総収容人数は28万人である事情から、主人公の識別用ナンバーネームは“850”と位置付けられた。
「我々からもあなたへ対し、最善の支援を約束しましょう」
№850となった彼は医療助手からモノゴトリー協会で作成されたマニュアルシートを渡される。それから添付書にはモノゴトリー協会創立について載せられていた。しかし彼は言葉が読めなかった。困った彼に対し医療助手の彼女がマニュアルシートの内容を大まかに口頭で説明する事となった。
このモノゴトリー協会の建つ大地は超自然界ダス・ダ―ネスという地であり現在は大地の75%が砂漠化したという話から始まる。そこで住む生命が壊滅的であり残り25%もの生命維持のためモノゴトリー協会という施設建設が始まったとされている。サンシャイン現象の誕生秘話、様々な記憶喪失者が運ばれ患者とされたが収容人数が多いためナンバーネームを義務付けて、施設拡大の工事担当を命じ、規則上は各自ナンバーネームで呼ばない事を約束させてゆく。注意事項として彼等ナンバーネームと呼ばれる者達は理由も分からず“名前を呼ばれない苦しみ”を抱えており、その痛みが伴う措置を施されると告げられた。
「とても長い。あの、これほどのモノを覚えなくてはいけないのですか?」
「これもあなたの記憶がどの程度の期間で回復するのかを計るためなのです」
モノゴトリー協会からは福祉支援プログラムが一部認められている。医師から手渡された本にはそこで使用されている言語について図面が載せられており、その内容に従い行動を決めるというもの。幸い№850は言葉に応答でき、自ら行動を起こせる事のみ認められていた。
「私は生活案内係。ここであなたは生活をするのです。」
№850は宿舎での生活は初めてだった。最初何から手を付けるべきか苦悩していたものの毎月5万ルドの資金援助が支給されるだけで彼は清掃、料理、買物、洗濯は1週間でおおよそ覚えられていた。その反面で、工事区域での挨拶、合図、資材名称を覚えられるには、ある程度の作業工程は期間をかけて組まなくてはならなかった。
「この工程の対策として医療班は各々のボーダーラインを敷き意見交換を行う」
医師は他のナンバーネームと比較し№850の身体記憶力について“リカバリースタッフ”による支援プログラム報告書をデーター解析し、僅か7日間で21%もの上昇値を示された事をはじめ、認知記憶では持つ、動かす、置くことは可能と判断したいと言う。リハビリテーションでは名称を覚えるために発声を行うためのプログラム変更をするほか様々な医学的視点まで設けると言う。それとは別に研究班による視点からは身体記憶力の特性上、現場指導員の監修のもとで発声と合図に対する発音、言語聴覚能力の計測を必要とする。
「№850の場合、挨拶は55%早くでき合図に10%反応遅れる。総評価45%と計測」
医療班はそのデーターを基にモノゴトリー協会のマニュアルにある規則、各自ナンバーネーム等の名称で呼んではならないという理論上から声帯的応答を求める。特に現場で記憶に波がある事が発見される場合に限り、各ナンバーネームの脳領域を計測する目的で一時的な投薬が行われ、№850も同等の扱いで保護される事とされた。
「薬物使用により脳領域35%正常。脳のダメージも鑑み神経経路が遅延。本を読ませること僅か14日で言語取得39%、平衡干渉における身体感覚56%を計測。課題を設ける」
ナンバーネームには記憶を覚える道具が無い。そこで日常生活における行動記録のために自ら執筆を求められる。その日の出来事からどれに対しどのように患者が反応するのか疑似的解析をする一環として医療班は各自に一冊356ページの日誌を支給する。その日誌を基に身体記憶の動作範囲を測り、その脳の記憶能力がどの程度保存されるのかを試験する。この一ヶ月で言語取得99%、身体感覚65%以上を計測できれば医師から生活可能と判断されナンバーネームは次の課題が設けられる。
「№850は初日から僅か21日で言語取得100%、身体感覚95%を達成。究極的速度だ」
「了解。それでは資材運搬から重機操作へ移行・指導を執り行う。現場監督へ連絡」
このようにして身体記憶に従い、脳の記憶能力が回復に向かうというモノゴトリー協会の医療班、研究班による監修が入ると、ようやく自らの記憶回復という課題へ向けられる。
「クレーン車?いきなり何故このような重機の操作が必要なのですか?」
「№850は平衡感覚のみ左右同時に操作できず、逆に複雑な動作が必要と思われます」
「あなたは頭脳での記憶が苦手です。そこで重機操縦が適切と判断しました」
「つまり№850の身体記憶能力は優秀なデーターを示している事になります」
初めは何も覚えられなくて以前どんな人だったのかも分からないままだった。苦しんだのは№850と呼ばれる彼自身だけでなく、同じ状況で出会った人々も同様だった。そして、思い出せることがどんどん増えていくと、“何故だろう”という感情意識が芽生える。彼の様に『サンシャイン現象とはそういうモノなのだ』と医師から言い伝えられると、同時に医療班による実験が始まる。
「№850、まずはこの薬を飲むのです。そして以前の記憶を呼び覚ますのです」
「あ・・・がが・・・ァ・・・きおく・・・」
本当の自分を記憶に目覚めたら!
施設のスタッフや同僚の応援が欲しい!
そして明日へ向かう・・・!
さまざまな葛藤に苦しみながらも、№850の希望は大きくなるのであった。




