終
下区の一画に川が流れている。
川の上には大人3人が通れるほどの広さの橋が架かっているが……外壁の近く故、橋を利用するものは少ない。
なぜこんな場所に橋が架けられているのか住民も理由を知らない。
川も下流に位置するため、こちらもあまり使われていない。
その橋の下に体を丸め、膝を抱え、顔を埋めて座り込んでいる者が一人。
川が目の前にある橋の下は死角になっており、よほど近づかない限り、気づかれない。
クルスは……事件のあったあの日から、夜になるとここへ戻ってきて、うずくまり、一夜を過ごす。後悔と自責の念に駆られながら。
「何も……何もできなかった……僕だけが……」
嗚咽と呻き声。
川のせせらぎや、虫の鳴く声が、すべてがかき消してくれる。
一陣の風がクルスの体を通り抜ける。するとせせらぎしか聞こえなかったはずの川から、水音が音楽のように奏でられ始めた。
クルスが座り込んでいる大地は母のぬくもりのように暖かく、通り過ぎたはずの風はそよ風となって戻り、今度は優しくクルスの頬を撫でる。
「大丈夫……僕は大丈夫だから……」
精霊が慰めようとしているのだ。
言葉とは裏腹に、クルスは顔も上げず、うずくまったままだ。こうして毎晩毎夜、精霊は何とか元気づけようとしているが、クルスは悔恨の日々を過ごすだけだった……。
「クルス……」
扉をノックする音が聞こえ、クルエーティラは物語に入り込んでいたため、思わずびくりとする。
「ティー、早く来なさいよね。あんただけよ」
前回、夕食時に声を掛けに来た姉ではなく、もう一人の姉が呼びにきた。不機嫌そうに。
「まったくなんであたしが……」
クルエーティラに声掛けすると、一人でぶつぶつ文句を言いながら去っていった。
この日は数か月に1度、家族全員が集まり、会食をする日だった。
遠い王都から帰ってきた騎士の兄2人と、領主代理である父親の手伝いをしている三男。母と共に社交に余念が無い長女と、社交界でのお披露目が迫っている次女。そしてもっとも小さき天使の四女を含めると総勢9名。
見目麗しい女性陣も一堂に会するだけあって、全員揃うとなかなか壮観である。当然食事も晩餐に相応しく、豪勢だ。
年に数回は必ず全員顔を合わせること。この取り決めは長男が誕生した日から続いており、いまだに途切れたことが無い。
そのおかげで王都の情勢や流行も知ることが出来るし、家族との結束も強まるというわけだ。
クルエーティラはいつもならば家族団らんを楽しみ、久しぶりに帰ってきて顔を合わせる兄たちに騎士や王都の話をせがんだり、甘えたりするのだが、この日は食事が終わると早々に部屋へ戻ってしまった。
クルエーティラが出て行った後、食堂に残された兄二人は怪訝な顔をしたが、アンバーローズが最近の変化について語ると「あいつもやっと大人しくなったか」二人とも苦笑いした。
本人はそれどころではなく、
(早く続き……クルスはどうなっちゃうの……?)
クルエーティラはクルスの行く末が気掛かりで仕方ない。
部屋に辿り着くと、すでにランプに火が灯されており、部屋は明るい。
毎日夕刻の時間になると、使用人たちが一斉に屋敷中の明かりを灯してゆく。私室も例外ではない。
クルエーティラは本を手に取ると、そのままベッドのど真ん中へ背中から飛び込み、位置をずりずりと調整しながら枕を背もたれにする。態勢が整ったところで、続きを読み始める……が、実はクルエーティラは栞を挟んでいないため、どこまで読んだのか一見しただけではわからず、探すのに時間がかかった。
その間も気持ちは焦れる。
(あーーもう! こんなことなら何か挟んでおけばよかった! どこなのよ! まったくっ!)
相も変わらず自分のせいだと言うのに、腹を立てている。
この姿を見たら「大人しくなった」と評した兄たちも先ほどとは違った苦笑いをこぼすだろう。
(あった! ここだ)
雑に頁をめくっていたクルエーティラはやっと目当ての場所を開く。
年老いた女性は、近頃気になっていることがあった。
昼間の同じような時間帯に、下区の民家脇や壁際に人目を避け、隠れるようにして座り込んでいる人物。
少しづつ移動しているとは言え、似たような場所を選び、誰かが側を通っても、そちらの方を見ようともしない。
誰とも顔を合わせたくないのがわかる。
見るからに服は汚れ、うらぶれているその人物の眼は仄暗く、光が宿っていない。
気配が無いのか、感じさせないのかはわからないが、初めは気づかなかった。
場所が場所だけに仕方ない。そもそも隠れるように座っているのだから。
一度気づくと、たまに目で探すようになった。「今日も居るのだろうか?」と。
同情や哀れみ、施しを与えようとか助けになろうなどと考えたわけではない。この街ではたまに夢破れた若者や、故郷に帰れなくなった者……どんな理由かは様々だが、心折れた人間が現れる。
そう言った手合いに関わらない方が良いのはわかっている。
初めて彼を見つけてから2年が経った頃、彼を見かける度に、老女は自分の息子の事を思い起こすようになった。
姿形が似ているわけではない。外見だけで言えばまったく似ていない。だが、どこか重なる部分があったのだろう。
3年目にして、どう声をかけたものか悩んだ末、ついに声をかけてみることにした。
「飴食べるかい?」
彼は顔を上げなかったし、うずくまったまま何の反応もなかった。自分に声を掛けられているとは思いも寄らないのだ。
「飴、いらない?」
老女は再び彼へ声を掛けると、
「…………」
無言だが、初めて老女の方を向いた。
頭まですっぽりとかぶったフードから覗かせる彼の顔は幼さが残っており、少年のようだった。……空虚な目を除けば。身体は小さく、やせ細り、碌な物を食べていないのは一目瞭然。
しばし見つめ合った後、またうつむいてしまった。老女は彼の手を取り、飴を無理やり握らせた。
何となく放っておけなかった。
「よかったらお食べ」
それだけ言い残すと老女はその場を離れる。
(あれでよかったのかしら……)
老女が去った後も彼はその場に残り、身じろぎ一つせず、飴を手に持ったままだった。
少年の手はとても冷たく、乾いていたため、時間が経っても飴は溶け出すことも無く、手の平に形を変えず残ったまま。
日が暮れ始めると、少年は飴をおずおずと口の中に入れる。
ころころと転がしたり、舐めたりはせず、ただ口の中に入れただけ。
飴が溶け始めると、
「……あまい」
久方ぶりに喋った彼の声は掠れ、聞き取れぬ程小さな声だった。彼が喋るのも、食べ物を口にするのも実に3年ぶりだった。
日々を過ごすだけ……。生ける屍として。
それからというもの……老女は少年を見かけると声を掛けるようになった。ときどき飴も伴って。
「今日はいいお天気ねぇ」などと他愛の無い話を振っているが、少年は相も変わらず無言のままだ。
老女が一方的に話しかけるだけだ。
そんな関係が続き、やがて季節も変わるころ……変化が訪れる。
その日も昼を過ぎた頃だった。
少年が民家の陰に隠れて座り込んでいると、老女が飴を持って現れ、「どうぞ」と言って差し出す。
いつものように老女が手に乗せようとすると……少年は目を合わせ、自ら手を出し受け取った。
「……あ、りがとう」
老女は驚いた。
初めて少年の声を聴いたのだ。
少年を警戒させてはいけないと思い、そんな様子はおくびにも出さず、
「どういたしまして」
なるべくいつも通りに振舞った。飛び切りの笑顔を添えて。この一件から、老女と少年の交流はどんどん深くなる。
しかしそんな二人の仲に水を差すかのように、冬が近づいてきた。
冬が近づいてくると、少年は姿を消す。
これは毎年のことだった。なぜか冬場になると少年はどこにも見当たらず、春が近づき、暖かくなってくると再びどこかの陰に潜むように座り込むようになるのだ。
以前とは違い、交流を深めた老女は少年を心配するようになった。
(あの子……大丈夫かしら。きっとまた暖かくなったら、会えるわよね?)
そうこう思案しているうちに冬は遠のき、春が訪れると……少年は戻ってきた。
そして老女は冬の間、熟考した結果、思い立ったことがある。
いつもは「出会えれば良い」程度だったが、今日は少年を明確に見つけるため探索する。
(今時分ならここらへんに……)
居た。例のごとく民家の陰に隠れている。
「こんにちは」
老女が声を掛けると、少年は膝を抱えたまま顔だけ向け、誰か確認するようにしっかり見据えた後、軽く頭を下げる。
出会った時と比べれば雲泥の差だ。反応があるだけ。
「一つお願いがあるのだけれど、いいかしら?」
少年は怪訝な表情をする。
「まだ名乗っていなかったわね。私の名前は、メレディスよ」
メレディスは名乗ったが、少年にはあえて名前を尋ねない。いつも大事なものを扱うように接している。
少年も名乗ろうとはしない。
「お願いというのは……掃除を頼みたいの。あなたの、気が向いたときでいいから」
「……そう、じ?」
「ええ……。実は、最近膝の調子が良くなくてねぇ。うちのそばにある溝を掃除できなくて困っているのよ」
「……どぶ」
「今はまだいいけれど、これから、どんどん暖かくなっていくでしょう? そうすると臭いもきつくなるし、放っておけないのよ」
「…………」
また少年はうつむいてしまった。なので表情が読み取れない。
(余計なお世話だったかしら……)
メレディスは不安が募る。
「ごめんなさいね……。頼れる人が居なくてね。ギルドに、依頼してもいいのだけれど、こういった仕事は、受けてくれる人も少ないのよねぇ……」
メレディスが半ば諦めようとした時、
「……ぼく、やるよ」
「えっ?」
「そうじ、するよ」
「いいのかい? ありがとうねぇ。助かるよ。いつでも、いいからね」
「どこ?」
「うん?」
「……ばしょ」
「今からやってくれるのかい?」
「うん……」
「なら、あたしと一緒に行こうか」
「わかった」
諦めず声をかけてよかったようだ。
メレディスはゆっくりとだが、しっかりと歩を進め、帰路につく。少年がついてきてるのは、振り返らずともわかっていた。なので心配して、確かめるような真似は一度もしなかった。
家にたどり着くと、
「ちょっと待ってておくれ。道具を取ってくるからね」
少年は無言でうなずく。
家の中から掃除用具を取り出すと、外で待っている少年へ手渡す。
「頼んだよ。終わったら、声をかけておくれ。あたしはうちで用事があってねぇ。黙って帰ったらいけないよ。いいね?」
少年が肯いたのを確認すると、メレディスは家の中へ再び入り、遅い足取りで台所へまっすぐ向かうと、料理の仕度に取り掛かる。
いくつかの薬草と香草を適度な大きさに手でちぎり、玉ねぎを細かく刻む。
豚肉を一口大のダイス状に切り、先ほどの薬草類と水を入れ一緒に煮込む。塩を適量入れ、味を調えれば……身体が温まり、お腹も膨れる薬草豚肉スープの出来上がり。
深めの木のボウルに、動かしても零れないよう半分ほど満たし、パンを添えて籠へ入れる。
(掃除、まだ終わっていないのかしら……?)
料理を始めて1時間ほど経っているはずだ。
籠を手に持ち、様子を見に行く。溝はメレディスの家の目と鼻の先にあるため、すぐ確認出来る。
外へ出ると溝板が脇に寄せられており、少年は溝の中で、道具を片手に悠然と立っていた。空を見上げるように。
メレディスは少年に近づき、あたりを見回すと……恐ろしいぐらい綺麗になっていた。思わず目を見張る。
まるで作られたばかり、汚れがあったなど嘘のようだ。臭いもまったくない。おまけに道具にもほとんど汚れがついていなかった。
(魔法のようだわ……この子はもしかして……)
「終わった……のかい?」
少年は頷く。
「そうかい……ありがとうねぇ。助かったよ。お礼と言っちゃなんだけど、これお食べ」
食料が入った籠を渡そうとするが……少年は首を横に振り、受け取らない。
「多く作りすぎてねぇ……よかったら食べておくれ」
「……いらない」
「あたし一人で食べるには多いし、捨てなきゃダメかね……」
これは嘘でもなんでもない。少年の分も含め、作っているのだから、量が多いのだ。
冬場ならともかく、暖かくなってきているこの時期に置いておくことはできない。
さすがにそれを聞いて、少年も躊躇している。
「ごめんなさいね……余計なお世話だったわね。でも、これも人助けと思って、受け取ってもらえないかしら……?」
「人助け……」
「そうよ、食べてくれればとっても助かるわ」
少年は沈思した後、
「わかった」
「ありがとうねぇ」
メレディスは内心ほっとしつつも、喜びを隠さず表した。今度こそ籠を少年に渡す。
「中にスープが入っているから、気を付けてもっていくんだよ」
「うん……」
「また、何かあったら頼んでもいいかい?」
「……いいよ」
「ふふっ、ありがとうねぇ。気を付けてお帰り」
「……うん」
メレディスは少年の姿が見えなくなるまで、暖かい気持ちで見送った。少年の足取りは、今までとは違い、どこか生気を取り戻したようだった。
これを機に、時折屋根の修理、雑草取り、配達……などを少年に頼み、お礼と称しては食べるものを分けていた。
この様子を目撃した隣近所の住民が心配し始め、メレディスに尋ねる。
突然薄汚れた見ず知らずの少年がメレディスの家周辺をうろついているのだから、当然だろう。
「あの子かい? いい子だよ。それより見ておくれ」
少年が掃除をした溝を、様子見にきた女性へ見せる。
「なんだいこりゃ! たまげるぐらい綺麗じゃないか! まさか作り直したってこたぁないさね?」
「違うよ。あの子に頼んだのさ。あたしは膝が悪いからね……いろいろ助けてもらっているのさ。提案なんだけど――」
後日、メレディスは少年と他愛無い話を交わした後、今度は隣の家の溝掃除をして欲しいと伝える。
「となり……?」
「あなたの仕事を何人かに話したら、『ぜひうちもやって欲しい』って言われてねぇ。ほら、すごく綺麗にしてくれたでしょ?」
「……うん、別にいいよ」
「きっと、みんなびっくりするわよ。『作り変えたのかい』なんて、言われたぐらいだからね」
「そうなんだ……」
少年はあまり関心を持たなかったが、この事が広まるのには時間はかからなかった。
奥様方の井戸端会議の威力は凄まじく、
「うちもやってもらったらすごかったのよぉ」
「ならうちも今度やってもらおうかしら……」
「やってもらいなさいよ。ギルドに依頼を出すよりはるかにいいわよ! ただ、報酬にお金は渡しちゃダメよ」
「えっ、そうなの?」
「あったりまえでしょ! そんなことしたらギルドが黙ってないわよ」
金銭が発生した場合、例え知人同士の手伝いであっても、依頼はギルドを通さねばならない。
これは個人で依頼を受け、詐欺を働くものや、成果についての揉め事防止の意味合いが強い。
なので原則金銭のやり取りは禁止されている。(商売や仕事は別)
もちろん抜け道はあるが、よほど後ろめたいか隠したいことがなければ使うことはない。
「メレディスさんに聞いたんだけど、碌に食べてなさそうだから『食べ物を渡してあげて』って言ってたわよ」
「なんだい。それぐらいでいいなら安いもんじゃないか」
「まったくあんたは、むかしっからおっちょこちょいなんだから」
「「あっははははは」」
この調子で少年の仕事ぶりは評判となり、どんどん「手伝い」という名の「依頼」が舞い込むようになる。
しかし、少年の素性を知るものは誰もおらず、名すら知らない。
一番仲が深いメレディスも敢えて訊ねようとしない。なので皆遠慮して、詮索するようなことはしなかった。
少年が仕事をしている最中に、首からのぞかせていた鉄のネームプレートを、たまたま見たものがいた。
実はネームプレートを首からかけているのは「冒険者をやめていない」証でもある。
やめた者は通常、勘違いが起きないよう外しておくのだ。
やめたからといって返却の義務はない。
もちろん常時首に掛けておくのが億劫で、他の場所に保管していることもあるし、昔取った杵柄で冒険者時代が忘れられず外さない者もいる。だが、それはどちらも特殊なケースだ。
現役の冒険者がこんな場所で、過ごしているはずもなく、事情があって現状に
至っているのには、誰しもが察するに余り有る。
それからは誰が言ったか知らないが、名も知らない少年の事を下区の住人は「路地裏の冒険者」と、呼ぶようになった。
半年もこの暮らしを続けると……自ずと顔見知りが増えていく。いつしか少年は、下区で一番の有名人になっていた。
メレディスと出会った頃の少年は、眼は仄暗く、光が宿っておらず、身なりは薄汚い。身体は細く、いつもどこかで顔を隠すようにうずくまっていた。
まともな返事もこず、反応すらなかった。
それが今やどうだろう。
仕事のお礼に薄汚れた衣服は洗濯してもらい、若草色のローブも元通り……とまではいかなかったが、色がはっきりわかるようになり、痩せ細った身体にも肉が付き、見違えるようになった。
或る日……。
少年が建物の陰に隠れて座り込んでいると、
「おい」
今まで見たこともない人物に声をかけられた。
声のする方へ顔を向けると、茶色の髪で大柄な男が目の前に立っており、こちらを見下ろしている。
「おまえだな? 最近このあたりで『路地裏の冒険者』って、呼ばれてんのは」
よくわからないが、敵意はなさそうなので、正直にうなずく。
男は少年を隅々まで注視する。
「チッ、ただのガキじゃねぇか……骨折り損だぜ」
男は小声で文句を言っている。
「まあいい。派手にやりすぎるなよ」
忌々しげに言い捨てると、男はだるそうな足取りで去っていった。
少年には何がなんだかまったくわからなかったが、気にするようなことでも
なかったので、そのことはすぐ忘れた。
少年と大柄の男は双方共に、記憶に留めていなかったが、出会うのは二度目であった。
メレディスが少年を見つけてから、6年目。
今やすっかり下区の有名人となった少年は、「冒険者様」と親しみを込めて、呼ばれるようになって、陰でうずくまっている少年を見かけた住人が「よぉ、冒険者様」とか「今日も臭うな」などと気軽に声をかけるようになった。
少年も一言二言返事をして、軽く頭を下げる。お互い慣れたもので、少年も悪い気がしなかった。
これはひとえにメレディスの功績が大きい。彼女が何かにつけては少年について広めていたのだ。
「仕事が丁寧」「文句一つ言わずにやる」
事実、少年は受けた依頼を一度も手を抜かず、さぼることもせずきっちりやり遂げた。
屋根や柵の修理、雑草取り、水の運搬など様々な事をこなした。
もう一つ理由があるとすれば、少年の素行の良さだろう。貧困なものがやりがちな盗みたかり、暴行、傷害……物乞いしている姿すら誰も見たことがない。
初めは薄気味悪がっていた、住人たちも口数こそ少ないものの、悪い子ではないとわかったうえ、仕事をしっかりやってくれるのだから、評判は上がる一方だ。
唯一の欠点は……臭いがきついことぐらいだろうか。衣服もお礼替わりに洗濯しなければ、そのままだし、水浴びなどもしていないのだろうと住民たちは考えていた。
最近ではそれすらお馴染みであるため、軽口の対象だが。
或る日、少年はメレディスに夕食の招待をされる。今まで一度も誰かの家に上がったことはない。
何度か誘いを受けたことはある。
なんとなく気が引けていたのだ。でも少年の中ではメレディスだけは別格だった。
この街に、下区の皆に、認められるようになったのは、メレディスのおかげであることを薄々感じていたのだ。
最後に誰かと食卓を囲み、温かい食事を共にしたのはいつだったかすら思い出せない。
食事が終わると……
「メレディス……いつもありがとう」
少年の偽らざる正直な気持ちだった。
「いいのよ」
メレディスは微笑み、顔に皺が寄る。その時、誰かが玄関から戸を開けて入ってきた。
食卓でのんびりしていた二人はそちらの方を向く。
先に反応したのはメレディスだ。
「あら、おかえり。今日は早かったのねぇ」
「ああ、今日は……ん? てめぇ……なぜここにいる」
入ってきた大柄の男は少年を見つけると睨みつけ、一気に殺気立つ。
少年は男の雰囲気に呑まれ、色めき立つ。
「この子はなんて口を利くんだい。やめとくれ、お客様に失礼だろ。あたしが世話になってるっていうのに」
温厚なメレディスが珍しく怒っている。
男はメレディスの言葉で毒気を抜かれたようで、
「母さん……子供扱いするのはやめてくれ。……俺が悪かった。すまんな『路地裏の冒険者』。まさか家に居るとは思わなかったんでな……」
冷静になったようだ。
「……家?」
少年はまだ状況が飲み込めていない。そもそもこの大柄の男が誰なのかすら知らない。どこかで見たような気もするが……。
「ここは俺の家だ」
「何が自分の家だい。遅くに帰って来てばかりで。ほとんど寝起きしてるだけじゃないか。ごめんなさいね、この図体ばかりでかいのはうちの息子でサーシュっていうのよ」
「そうなんだ……」
メレディスから紹介があった茶色の髪をした大柄の男は……息子のサーシュで、冒険者組合のマスターだった。
「気を付けて帰るんだよ」
「うん……またね」
少年が帰ったあと……。
「母さん……どういうつもりだ? あんな野良犬を拾ってくるなんて」
「誰かと似てる……と思わないかい」
「冗談だろ? どこをどう見たら俺と似てるっていうんだ? あんなちっせぇガキと……」
「ふふっ、あたしゃ誰と言った覚えはないんだが、自覚はあるようだね」
「……っ」
「あたしも初めはわからなかったよ……。でも最近気づいたのさ。あの子は昔のあんたにそっくりだよ」
「っち、もういい。……寝るッ!」
サーシュは不貞腐れた態度で頭を掻きむしりながら、寝室へ行ってしまった。
「はいはい、おやすみ」
一人居間に残されたメレディス。
「まだまだ子供ね……どちらも」
それから2度、3度……と食事をする回数が増え、そこへたまさか現れるサーシュが交わる。
この頃になると少年の目には生気が宿り、人間らしさが戻ってきていた。
ある時、食事が終わるとサーシュが耐えかねたように、少年に迫る。
「その臭いなんとかしろ。母さんは気にならないのか?」
「そうねぇ、あたしはあんまり匂わなくなってきてるし、慣れたのもあるでしょうし、あんまり……」
「僕、そんなに臭う……?」
少年は思わず自分の匂いを嗅いでみる。
「くせぇもくせぇ。水浴びもしてねぇだろ。うちの風呂に入っていけ」
「ふろ……?」
湯に浸かれる浴槽など富裕層が多く住む上区の住民ならともかく、庶民が……ましてや下区の住民が浴槽を持てるはずもなかった。
話に聞いたことはあっても現物を見たことがないもの多い。
サーシュはギルドマスターだけあって、高給取りというほどではないが、上区に引っ越せる余裕は十分にあった。
しかし、母親のメレディスが良い顔をしなかった。
昔から住んでおり、馴染みの顔も多い気取らない下区が好きだったのだ。そこで引っ越さない代わり、母親のために用意したのが風呂だった。
「あったかい湯で浸かるんだ。冷たい水と違って、汚れも落ちやすい。用意してやるから、入っていけ。……いいな?」
「う、うん……」
サーシュはそう言うと浴室へ準備しにいってしまった。
よほど嫌だったのだろう。実は食事をする時、少年の隣はサーシュなのだ。真向いがメレディスで、ちょうど三角になるように座っていた。
単純にサーシュが綺麗好きという線も捨てられないが……。
「無理を言ったようでごめんなさいねぇ」
「ううん、平気だよ」
「あの子もいろいろあったから……あなたのこと、気にかけているんだと思うわ」
「そう……なの?」
「ちょいと口は悪いけどね。気を許してなかったら、うちに上がらせて『風呂まで入っていけ』なんて、言わないさ」
「そっか……」
少年はどことなく嬉しそうだ。しばらくするとサーシュが戻ってきた。
「用意ができたぞ。入れ」
少年を浴室まで案内すると、サーシュは服を脱ぎ始めた。
少年は驚く。
「あん? 何突っ立ってんだ。早く脱げ。どうせ入り方もわかんねぇだろ。俺が背中ぐらい流してやる」
もぞもぞと着ているものを全部脱ぎ、浴室へと入る。
「そこに座れ」
少年は言われた通りにする。
木風呂の中にはたっぷり湯が入っており、いかにもエールを入れるようなカップで湯を掬い、そのまま少年の背中にかけ、石鹸を塗りたくる。
「あう」
「女みてぇな声を出しやがって。じっとしてろ」
そこへ濡らしたタオルで擦るのだが……いかつい見た目と体格の割に強すぎず、優しい手つきだった。
「ったく、きったねぇなぁ。垢がぼろぼろ出てくるぞ。くせぇわけだ」
後ろが洗い終わると、
「前を向け」
「うん」
少年が前を向いたのを確認すると……
「やっぱり前は自分でやれ。やり方はわかっただろ」
「うん」
石鹸とタオルを少年に渡す。
「洗い終わったら、浴槽に入って、体をあっためろ。あんまり入りすぎるとのぼせるから、適当なところで出ろよ。着替えも出しておくからな」
それだけ言うとサーシュはさっさと自分の身体を洗い、湯で流すと出て行ってしまった。
少年も洗い終えると、浴槽に入る。
「ほんとだ……あったかい……」
少年が風呂から出ると、サーシュ一人が椅子に座って待っていた。
「綺麗になったようだな。こっちに座れ」
サーシュに促されるまま、隣に座る。
少年は目でメレディスを探し始める。
「母さんなら先に寝てもらった。おまえとはちょいと大事な話があるからな……」
その後、サーシュは黙ってしまった。
少年にとってメレディスと二人きりなら、緊張もしないが、サーシュとはまだ慣れ切っていないため、沈黙が続くと辛い。
サーシュは一向に喋ろうとせず、何かを待っているのか、それともどう切り出そうか思案しているのか……。
「……クルス、だな?」
それは疑問ではなく、確認だった。
湯上りで紅潮していた少年の顔が見る見る青くなり、瘧のように体を震わせはじめた。
額には脂汗が浮き、うつむいたと思ったら……椅子を倒して咄嗟に戸口へ駆け出す。
「座れッ!」
サーシュが一喝する。
それを背中越しに受けたクルスは、体がこわばり、停止する。
「おまえをどうこうするつもりはない」
有無を言わせぬ雰囲気に呑まれ、しばし立ち尽くした後、恐々椅子を戻して座りなおす。
「風呂の時、ギルド証を見させてもらった」
クルスは風呂に入る時もネームプレートだけは、外さなかった。
彼にとってギルド証は、亡くなった彼らとの思いででもあり、唯一の繋がりだった。
すべてをやめ、すべてを忘れ、故郷の里へ帰ればどんなに楽だっただろうか……。
でも、クルスにはそれが出来なかったし、したくもなかった。
「あの事件について調査は終わっている。……おまえに非がない事もわかってる。
俺だって好きで古傷ほじくり返してぇわけじゃないが、これでもこの街のギルドマスターなんでな。
不幸な事故だったんだろう……新米冒険者には間々あることだ。
だが、あいつらもそれを覚悟して冒険者になったはずだ。
冒険者なんざいつ命を落としてもおかしくねぇ。そういう稼業だ。
てっきりおまえは故郷にでも逃げ帰ったのかと思ってたが……まだこの街に残ってたとはなぁ。まぁそういう野郎もたまにいるが……。
何にせよ『路地裏の冒険者』なんて呼ばれる得体の知れない輩を、放っておくわけにはいかなかったのさ」
サーシュが喋っている間、クルスは橋下の時と同じように、ひたすらうつむいて黙っている。
「正直、俺にはおまえの気持ちはわからねぇ」
サーシュが大きめのため息を一つ。
「一つ昔話をしてやる」
いまだにクルスは何の反応も示さない。
「まだ若くて、ちょっと名の知れた冒険者が居たんだ。
そいつは20代そこそこで、依頼も確実にこなし、仲間ともうまくやってたし、面倒見も良くて後輩にも慕われてた。
金等級にも届くんじゃないか、って噂されるぐらい人生順風満帆でな。期待の新人だったんだよ。
だが……ある時魔物にやられて怪我をしたのさ。
慢心してたんだろうよ。あまりにうまく行き過ぎてて、な。
冒険者に怪我はつきものだ。珍しいことじゃない。
ただ、受けた場所が悪くて利き腕が使い物にならなくなった。
武器もまともにもてねぇ野郎が冒険者をやっていけるわけがない。
どうなったと思う……?
酒場に入り浸って、飲んだくれの毎日さ。
来る日も来る日も、嫌な現実から目を背けがため浴びるように飲みまくった。
初めは心配して声をかけてくれる奴もいたが、そいつは大馬鹿野郎で誰にも耳を貸さなかった。
パーティを組んでた仲間も、慕ってくれてた後輩も、誰も寄り付かなくなった。
1年も経った頃、酒と不摂生で廃人同然だったそいつを、
『いつまで不貞腐れてんだクソガキがッ!』
って殴り飛ばした奴が居てな……。それが当時のギルドマスターさ。
そのくそ爺も元冒険者で、引退したといえなかなかの実力者でな。
飲んだくれの首根っこ捕まえて、絞りに絞った後はシゴきまくりよ。
そのおかげで酒も抜け、健康になったら、今度はギルド職員としてこき使われまくってな。
そんなどうしようもない奴がいまじゃあ、ギルドマスターを継いでるってんだから、世も末だぜ」
いつのまにかクルスがテーブルに置いてあったサーシュの腕を食い入るように見ている。
「その傷……」
サーシュの右腕の内側には、かぎ爪で引き裂かれたような大きな傷がある。時間が経ち、薄くなっているとは言え、いまだに痛々しい。
「くそったれの飲んだくれってのが俺で、くそ爺が先代のギルドマスターさ。この腕は、日常生活に支障はないが、もう剣を握ることはできん」
サーシュが腕を確かめるように何度か拳を握る。
「さっきも言ったが、俺におまえの気持ちはわからん。そして、おまえにも俺の気持ちはわからんはずだ。わかって欲しいとも思わねぇ。……皆、自分で折り合いをつけていくしかねぇんだよ」
「ぼくは……僕は彼らのことが忘れられないんだっ!!」
クルスが感情を露わにして、声を荒げる。
「なら、そのままでいいじゃねぇか。……覚えていてやれよ」
「だけど……僕だけが生き残って……」
「昔、同業者から聞いた話がある。『人には二度死が訪れる』とな」
「二度……?」
「一度目は肉体の死……これはそのままの意味だ。
二度目は……”忘れ去られること”だ。これが本当の死、と聞いた。
俺も聞いた当時はよくわからなかったが、今なら少しわかるぜ。
……人から忘れられるってのは、悲しいもんさ。だから覚えていてやれ。いつまでも。ほかの誰しもが忘れたとしても、おまえだけは……な」
「うううぅぅ……うわぁああああああああああ」
メレディスの家では、いつまでも泣き声が続いた。あの事件以来、クルスが涙を流したことはなく、感情にも蓋をしてきた。一度表に出た感情は堰を切ったように溢れ出し、止まることを知らなかった。
その間サーシュは、慰めるわけでも、声をかけるわけでもなく、静かに寄り添っていた。
2時間ほど泣き続けたクルスは、うんともすんとも反応が無くなる。
次第に小さな寝息が聞こえてきた。
「やれやれ……俺のガラじゃないんだがな」
サーシュは小さなクルスを抱きかかえ、自分のベッドへ寝かせてやる。
翌朝……。
「少しはマシな面になったじゃねぇか」
「そうかな……? ありがとう、サーシュ」
「あらあら、二人ともすっかり仲良しさんねぇ」
「仲良しだぁ? 冗談やめてくれ」
昨日とは打って変わって、穏やかな雰囲気が流れる。クルスも憑き物が落ちたように生気が漲っている。
「前々から思ってたんだが、そのうっとおしいのもなんとかしろ」
サーシュが指摘したのは、クルスの髪だ。前は口元まで伸び、顔がまともに見れない。後ろは腰の長さまである。
近頃住民の間で噂されているのがクルスは「実は美少年なのでは?」だ。
元々伏し目がちで、誰とも顔を合わせようとしない。
伸びた前髪を払おうともせず、仕事をする。
なので、どんな顔をしているのかまともに見たものは誰もいなかった。時折髪から見え隠れする、眼の色を除けば。
誰かが「髪を切ろうか?」と提案しても、静かに首を振るだけだった。
それでそんな噂が広まったのだ。
クルスは前髪を指でいじりながら、
「邪魔……かな?」
と聞いてくる。
「ああ、邪魔だね。見てるだけでうっとおしい。母さん、切ってやってくれないか」
「あたしは構わないけど……無理しなくていいんだよ?」
クルスに訊ねると、
「ううん、大丈夫。切ってほしい」
「なら、朝ごはんの前にやっちゃいましょうかねぇ」
サーシュが小さい頃はメレディスが髪を切ってやっていた。久しぶりとは言え、長い髪を手際よくばっさばっさと切ってゆく。
「ほら、こんなもんでどうだい? だいぶすっきりしたね」
完成した姿を見たサーシュが、
「ちょっと待て……。おいクルス……おまえドワーフや妖精の類なのか?」
「えっ? 僕は人間だよ……?」
「……今、いくつだ」
「いくつって、何が?」
「……歳だよ」
「えっと……33か34ぐらいだったかな」
「ふ、ふざけんなよ……? 俺と10しか変わらねぇだと!?
お、おまえどう見たって――」
レムスが見送った時に感じた違和感も、
受付嬢が彼の顔を見て幼すぎて驚いたのも、
農村育ちの4人組が何の警戒心も抱かず、気軽に声を掛けたのも、
サーシュが口に出したことも……すべてはここに帰結する。
クルスはどう見積もっても、14、5才の小柄な少年にしか見えなかった。身長や体格もそうだが……顔に残るあどけなさ、喋り方一つとっても、精神構造があまりに幼く、つたない。
彼の環境は特殊すぎた。
人間ながらも時間が緩やかなエルフと共に育ち、外界を知ること無く、悠久の時を生き、時間の感覚がないレムスと生活する。
そして決定的なのが、レムスが寄越した果実……千年樹の実だ。これが原因でクルスの寿命は伸び、老いも成長も緩やかになってしまった。
彼は精霊術を扱い、定命の理から外れた半不老、この世界に置いて人間族の中で……唯一無二の存在「人ならざるもの」になったのだ。
事実彼は事件があったその日から、3年もの間、何も食べる気が起きず、過ごしていた。レムスと同じように1年、2年は食べなくとも生きて行ける。
空腹を覚えなかったのは虚脱状態だったためで、まったく摂取しなければやせ衰えていってしまい、次第には命を落とすだろう。
「はんふろう……もしかして、今も生きてるの……?」
「いつまで起きているの? 早く寝なさい」
クルエーティラが気づかぬうちに、アンバーローズが部屋に入ってきていた。
「はぁーい」
クルエーティラはしぶしぶ了承して、本をサイドテーブルに置くと、ベッドへ入る。
「明日は大事なお客様がいらっしゃるのですからね」
アンバーローズがクルエーティラの額にキスをし、
「おやすみ、愛しのティー」
「おやすみなさい、お母様」
明かりを消して、部屋を出ていく。
翌日……。
『精霊術のことはレムスから誰にも明かさないほうがいいって、忠告されていたんだけど、メレディスとサーシュにだけは説明したんだ。
サーシュはびっくりしてたなぁ。メレディスは僕が魔法を使えると思ってたみたいで、逆に納得してた。
「魔法みたいに綺麗に、掃除してくれたんだもの」だってさ。
それからは目まぐるしかったよ。
サーシュが下区の依頼を定期的にもってきてくれてね。
僕が立ち直ってから、3年……ザールで一所懸命に働いた。
だけど、それも続けることは出来なかった。
「十年近く姿かたちが変わらねぇ奴がいたら、怪しまれるか希少種だと思われる。だから街を離れろ」って言われてね。サーシュが山ほど依頼を持ってきたのは、路銀を貯めるためにいろいろ気を回してくれたみたい。
僕もザールから……二人と離れるのは辛かったけど……、里へ帰るか、別の国に行くかの選択に迫られた。
思えば僕の人生はいつも2択だったな……。』
「ティー、準備はできているの?」
アンバーローズが確認にやってくる。
「あっ、お母様……」
少しでも長く本が読めるようにとメイドに髪や服はすでに支度させていた。
「あら、杞憂だったみたいね」
「それで、今日は何という方がいらっしゃるのですか?」
「ク……ク……クレ……? クリ……? なんだったかしら?」
「もしかして……クルス? お母さま、クルスじゃない?」
「ああ……ええ、たしかそんな名前だったわね」
クルエーティラは興奮する。もしかしたら、あのクルスかもしれない。
「早く行きましょ!!」
「あっ、待ちなさい! 走ってはダメよ」
クルエーティラはまだ気づいていない。残りの頁数は少なくなっており、物語が終わりに近づいていることを。
しかし未だに彼の名前も判明しておらず、人生のすべてが記されているわけではない。
なぜならこれはC=W=Hが残した、一冊目の手記に過ぎないのだから……。
食堂に家族が集まり、客人が挨拶をするところだった。
「本日はお招きいただき、ありがとうございます。領主様にご招待いただくとは光栄です。もうご承知かと思いますが、改めまして……
私の名は――」
想像以上に時間もかかったし、ボリュームも増えました……。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。




