流言ワルツ
「それで、どうしたと思う?奇跡が起こったんだよ。どんなかっていうと、光ったんだよへそが。目が眩むくらいぺカーって。そりゃもうびっくりしたよ。でも、へそなんか光ったってどうするんだっていう話だね。まぁ頭が光るよりはいいけれども。えっ?へそが光ってからどうなったかって?失業したらしい。あくまで噂だが。考えてみてくれ。仕事場にへそがひかってる奴なんていたら、仕事に集中できないだろ?なっ、そうだろ。しかし、奴も気づいて対策はしたらしい。週刊誌によると、黒い腹巻をして、光っても見えないようにしていたそうだ。しかしだ。腹巻が光の熱でものすごく熱くなっちまって、しまいにはジリジリ溶け始めたっていうから驚いた。僕は奴のことはあまりすきじゃあなかったけど、すこし気の毒だと思うぜ。ああ。でも、失業した奴は、灯台に再就職して、海の安全を守ってるってTVでやってた。奴は昔っから目立ちたがり屋で、高いところが好きだったから、会社で働くよりは、向いてんじゃないかな。そうかそうか。お前もそう思うか。おっ。噂をすれば奴のお出ましだぜ。あいさつしてやんな。」
「やあやあ。ひさしぶりだねぇ。元気だった?俺は毎日へとへとだよ。へそが光るからってライト代わりにされたり、テレビに出演したり。おいおい。羨ましがるなよ。大変なんだぞ。休む暇もないんだぞ。目立ったっていいことなんかないよ。美人とおつきあい?とんでもない。光に向かって寄ってくるのは虫けらばっかりさ。あーあ。へそが普通だったころに戻りたいよ。」
「おい!お前のへそ、光が弱くなってないか?」
「ハハハ。まさかそんな・・・。」
「よかったな。これで普通の生活に戻れるじゃあないか。」
「へー。そう?」