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 異世界に召喚された次の日から早速訓練は開始された。と言っても、本当に基本的な事だけだけど。まず最初に後で確認すると言われていたステータスの確認。そしてその後はそれぞれに合った武器探し。決まった人から順に、訓練を開始することになった。そして、筋力など色々な能力を見た上で俺は双剣やナイフが良いだろう。と言われたが、間合いが狭い戦闘方法ばかり極めても仕方がない。そう思った故、片手剣を選んだ。筋力的にも片手剣を使えるだけの筋力はある。そう判断されたからだ。


『そんなこと言ってるけどぉ、ナイフだと懐のソレと、別の人格が出てきそうだからぁ、でしょぉ?』

『否定はしないが、肯定もしない』

『へぇ?じゃぁ肯定と受け取ろうかなぁ?受け取り方は僕次第だもんねぇ?』

「……」

『勝手にしろ』


「おい、桜木!俺と勝負しろ!」


 声を掛けて来たのは菊池亮平。多少腕が立つものの、俺からするとそこまで強いといえないのが現状だ。さて、この訓練でどれだけ上達したかな。あいつの拳が多少強くなってると良いな。皮肉にそんな事を考えながら、菊池の前へと立つ。


「なっ!あんた達やめなさい!」


 おっ、ギャル代表一ノ瀬鈴香。佐々木桃香と横田真果は何も言わないな。


「菊池と桜木、何やってんの!仲間でそんなことしたってしょうがないだろ!」


 我が強い荒井風雅。正直俺はこいつが大嫌いだ。何でも自分中心で回っている人間は見ていてイライラする。


「はぁ?テメェらには関係ねぇだろうが!これは俺と桜木の話だ!」

「なっ!何言ってるんだ!今はみんなで協力しないと!」

「知るかよそんなの。おい、やるぞ」

「あぁ、分かった。模擬戦の勝負形式はそっちで決めろ。俺は何でもいい」

「なっ!」


 なんか言おうとしてたが、俺は知らん。俺には関係ない。嫌いな奴の意見を聞くほど俺は心が広くないんでな。


『あるじぃ、それじゃ主人が不利になるんじゃないのぉ?』

『問題はない武術なら多少は出来る。始めたばかりのヒヨッコに負ける程俺も落ちてはいないからな』

『あるじが良いなら良いやぁ』

「あぁ?じゃぁ、一対一のタイマンで、タイムはどっちかが降参か、意識を失うまで、でどうだ?」

「おい、2人共聞いてるのか!」

「そうよ!」


 何か言っているがギャルと俺の嫌いなヤツは無視だ。俺は一切2人の話に耳を傾けず、返事を返す。


「分かった」


 模擬戦のルールを聞いた瞬間クラスの奴らがざわついた。俺が菊池に勝てるわけがないと思ったからだろう。


「合図はどうする?」

「じゃぁ、合図は俺が決めていいか?」

「かまわねぇ」

「じゃぁ、この石が地面に落ちたと同時に開始だ」


 俺はそこら辺に落ちている少し大きめな石を手に取る。

 この開始合図は王道だ。しかし、何ともタイミングが取りづらく、落ちた瞬間に動き出すというのは意外と困難を極める。


「行くぞ」

「あぁ」


 俺は手に持った石を少し高めに、そして俺と菊池のちょうど間に落ちる様に投げる。これなら石が遠くて見えなかったから出遅れたなど戯言は口から出来ない。


 石が落ちたと同時に俺は少しだけ後ろに下がる。菊池は腕の長さが長いから丸腰ながら間合いは広いと言えるだろう。そんな菊池にまぐれで勝ったように見せるのはちょっとめんどくさい。早速カウンターに飛んでくる拳を軽く後ろに下がって躱わす。ぴょんと兎の様に飛び跳ねながら後ろに後退する。しかし、ずっと避け続けているわけにもいかない。どうしたものか、少しばかり迷ったものの、菊池の動きに多少隙があるのを確認した俺は、攻撃と攻撃の合間にこちらから仕掛ける事にした。そうは言っても、菊池はそれなりに喧嘩慣れしてる。そんな奴に一発入れる能力が学校で演じていた俺に出来るだろうか?いや、運動神経がある程度良いというのはみんな知っている筈だ。それなら多少変な動きをしても怪しまれない。菊池の攻撃パターンは囮の左カウンター、そしてすぐさま右の蹴りが入り、その後左の蹴りが色々なパターンで入ってくる。そして、パターンによって次に来る場所はほぼ決まるに等しいが、無理やり入れた攻撃の間には必ず隙が生まれる。俺はそこを突けば楽に勝てるのだが……払腰でいいだろうか?あれは投げられると結構痛い。受け身が上手く出来なければ肩と足から猛烈な痛みが伝わるだろう。畳でも痛いのだから地面なら尚更だ。

 まぁそんな事知らんがな。

 左カウンター、右足、回って、そのまま左足、そして一旦後ろに後退……だけど、下がる前に払う!

 俺に胸ぐらを掴まれ、見事にバランスを崩した菊池はそのまま俺の方へ向かって倒れてくる。菊池が自分の体に被さらないように引っ張り出し、左足で軽ーく飛ばしてあげればぐるんと回転して見事な払腰が決まる。父相手では無理だったからだろうか?技が綺麗に決まったらすごく気持ちがいい。こんな感覚は久方ぶりだな。なんせ、父と俺の仲間達は俺に容赦なかったからな。そういえば最近は投げ飛ばされるか、ぶっ叩かれるか、踏みつけられるかの3択だったな。


 さっきまでクラスメイト達はキャーキャー言ってた癖に、今はだんまりか。ちょっとは祝福してくれても良くないか?


『あるじぃ、おめでとぉ。負けなくてよかったねぇ』

『あぁ、このくらいなら楽勝だ』


 さすがぁ。と告げてきたリォルは俺のマントの中に現れた。


『お前、そうゆう趣味あんのか?』

『ないよぉ?』

『ならそういうことはやめるんだ』

「うおおおぉぉぉぉぉ!すげぇなお前!」

「俺ずっとお前の事ただの陰キャな問題児だと思ってた!」

「あぁ、僕もだ。お前、柔道出来たんだな」


 囲まれてしまった。一方負けた菊池はと言うと、やばい程に顔が歪んでいる。そんなに悔しかったか。まぁ、本来ならこの席はお前になってたはずだもんな。それはそうもなるか。今回は相手が悪かった。


『あるじぃ?僕はこの世界で生きていく為には魔力が必要になるんだけどさぁ?人間が多大な魔力を魔法石に封印してしまったせいで、自然環境の魔素濃度が著しく下がっててさぁ?僕、魔力がないとこの姿維持できなくなるかもぉ』

『!?そう言うことはもっと早く言うんだ。俺は現状魔法を使って生活しているわけではない。リォルと会話ができるくらいに魔力を残してくれればいくらでも持って言って構わない』

『ほんとぉ!それは助かるぅ。じゃぁ、僕はこれから人間の姿であるじのそばにいるぅ!』

『却下だ』


 えぇ?と言いながら未だ俺のマントの中に居座っている。そしてあろうことか上着のポケットに入ろうと試行錯誤しているようだ。リォル曰く、姿を消し続けるのは容易なことではなく、そう易々と使える魔法じゃないらしく、俺を見つける過程で竜だと悟られてはまずいからと姿を消していた。という経緯があったらしい。この世界で竜はとうに絶滅した架空の生き物という事になっているらしい。未だ竜が存在している事は各国のお偉いさん達は知っている様だけど。


「さぁさぁ皆さん、各自の訓練に戻ってくださいね。訓練しなければ強く慣れませんよ。それともう一つ、勝手に模擬戦はやめてくださいね。今回は許容しましたが、訓練したあなた達が全力で暴れられてはこの場所は無事じゃすみませんからね」


 女の一言でその場は治った。囲まれていた俺は少しばかり安堵しざる負えない。人に囲まれるのはあまり慣れていないからな。友達もろくに居ないんだ。コミュニケーション能力はものすごく低い。


 片手剣の訓練といっても、教えられた型通りの素振りをすることの繰り返しだ。魔法を教えてくれるという訳でも無く、ただただ素振りだ。筋トレとかならまだ納得出来た。だが、これは納得出来ん!俺もつまらん!


『あるじぃ?竜族の剣術習う気ないかなぁ?』

『そんなものがあるのか?正直に言うとこの訓練内容はクソつまらない。挙句型と呼ばれるものもある程度知っているものだから、このくらいなら全て繋げて出来る』

『うん、これが出来てなかったら言わないよぉ』


 そして俺は竜族の剣技というものを教えて貰った。竜が使う剣技なだけあって、その剣捌きはなかなかに難しいものだった。はっきり言って仕舞えば人間業ではない。


『そーそー!人間には出来ない芸当ばっかでしょぉ?だから強いんだよねぇ。結構使い勝手いいと思うしぃ、これが完璧に出来る様になったらぁ、誰にも負けないよぉ』

『あぁ、これはやりがいがあるな』


 リォルはでしょでしょぉ、と言いながら俺のマントの中を元気に飛び回っていた。まぁ、クラスの奴らにバレてもいいか。俺は関係ないし?


『僕を裏切るきぃ?させてあげないよぉ?覚悟してよねぇ』

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