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 豪華な部屋だな。謁見の間から解放された俺達は王宮の客間に一時住まわせて貰う事になった。さすが王宮だな。


『じゃあ、僕の姿だっけ?本来の姿だとこの部屋ぶち壊しちゃうからぁ。ちょーっと小さくなるけど形自体は変わらないからいいよねぇ?』


 ポンっと音がしそうな勢いで飛び出してきたのは黒い鱗を持った竜。俺の世界で言う黒龍と呼ばれるものだろう。そして瞳は赤く。サイズ的には手のひらサイズだ。


『可愛らしいな』

『なっ!?か、可愛らしい?この僕が、か?一応これでも階級的には最上級の竜なんだけどぉ?その僕に対してそれはないよぉ』

『仕方がないだろう。俺にはそんな事分からん。そもそも竜に階級があるのを今初めて知った。戦闘に関しての知識はこの世界の人間と大差ないかもしれないが、この世界での常識がこの俺に通用すると思うな。これでも一応異世界人だ』

『戦い慣れているのは認めるんだぁ?やっぱり家業とやらに誇りを持ってるんじゃないのぉ?』

『あぁ、誇りを持っていないと言ったら嘘になるだろう。俺からすればあの場所は俺の唯一の居場所だ。学校や公共の場で俺が友好関係を持つ事は決してあり得ないからな。情など持たない。それが一番の世界だ』


 そうかなぁ。と言ったリォルはその姿のまま俺の膝の上に着地した。ベッドの上に座っている俺の足の間にスッポリと収まったリォルはそのままスゥスゥと寝息を立て始めた。リォルを起こすのも何だと思った俺はそのままの格好で仮眠を取る。俺の体質上睡眠は一時間で事足りる。まぁ、寝るのは好きだから、いくらでも寝れるが。


***


 俺は窓の外に気配を感じて目を覚ます。同族の気配がするな。何も仕掛けて来なければ何もする気はないが、何かする様なら直ぐにでも対処出来る様に胸元に忍ばせてあるナイフに手を伸ばす。向こうからの位置じゃ俺の腕が動いた事は見えない筈だ。何も問題はない。

 少しすると気配は消えた。しかし何だったのだろうか?


『あぁ、奴らがきてたんだぁ。何にもしてこなかったぁ?』

『あぁ、何もされてない。しかし奴らは何だ。あまり気配を隠すのが上手くないな』

『えぇ?あれでもこの国の影なんだよぉ?あるじと一緒』

『生ぬるくないか?俺たちの世界であれだとすぐにあの世行きだぞ?世界で通用する実力者は対象に気配を悟られるなどヘマは起こさない。それ以前に勝負は一瞬だ。あれでは仕事もままならくないか?』

『まぁねぇ、この国は良い意味で平和ボケしてるから、色々な所でレベルが低いと思うよぉ。実際この国で主戦力となり得るのはウィンス公爵家、レオン…レオンリーグとあるじ達勇者候補くらいだからねぇ』


 そう考えると俺はこの国に居る事でデメリットしかなくないか?ここに居れば必然的に自分の実力を開示する羽目になるだろう。それに俺の得意な戦法は後ろから「ズボッ」だ。真正面から向かっていく正当な戦法は苦手…ではないが、あまり好きではない。挙句、俺の使う道具はこの世界に恐らくだが、存在していない。いざとなった時逃げる手立てになる煙幕などは探せばあるかも知れないが、密室などでしか大きな効果は期待出来ない為そういった戦闘技術においてはあまり進化していないと言えるだろう。そんな昔ながらの道具なんてものを扱うにはそれなりに慣れというものが必要だ。それに銃弾があるとは思えない。銃弾がなければ俺は遠距離攻撃が出来ないに等しい。それは困る。というか相手が近接に強かった場合が少し怖いな。それに、銃というものが存在していないと仮定しよう。銃が没収される可能性もないとは言い切れないだろう。自分の使っている銃くらいなら構造が分かる。パーツがあるなら作ろうと思えば作る事は可能だと言える。銃弾に関しては自分で調達する他ないだろう。幸いな事に必要なものがあれば何でも取り寄せてくれるらしいからな。主な材料は金属と火薬。だが、金属にも拘りがあるからなぁ。出来れば指定したものが欲しい所だが…あまり期待は出来ないな。


『うーん?』


 俺が主に使っていた銃弾はフルメタルジャケット弾、貫通性が高い通常の弾丸。弾芯が金属の覆い(ジャケット)で覆われているメタルジャケット弾の一種だ。殆どのフルメタルジャケット弾では、弾芯である鉛をギルディング・メタル(真鍮の一種)で覆っている。人間には打ってつけだ。一瞬で勝敗がつくからな。

 メタルジャケット弾にはフルメタルジャケット弾の他にパーシャルジャケット弾(弾頭の先端部分以外を披甲した弾)があり、パーシャルジャケット弾は、目標に衝突した際に露出している弾頭先端が変形し破壊力を増す構造で、主に大型動物のハンティング用だな。これは山の中で何かに出会った時様に6弾いつも持ち歩いてるものだ。ちなみに普通弾は込められている弾を除いて32弾分だ。

 そして、弾頭先端がギルディング・メタルで覆われておらず、鉛が剥き出しの弾丸。命中すると柔らかい鉛により弾頭が激しく変形・破砕し、目標内部で運動エネルギーを効率的に伝えることにより、致命的なダメージを与える。弾丸が破砕する為貫通力は低い、が拷問には最適でな。情報を漏らして貰う為に撃つのには最適な弾だ。

この弾は貫通力の低さから狙撃時に犯人を貫通した弾丸による二次被害防止のため、主に警察用として利用されているらしい。まぁ、警察もいろいろ考えているんだ。撃っても死なないように。俺達とは真逆だな。


『あるじぃ……理解できないんだけどぉ。要するに何が言いたいのぉ?』

『銃弾を作るにしても多大な材料が必要な上、高度な金属加工技術が必要とされるんだ。そう簡単にホイホイ作れるものじゃない。だからあまり使いたくないんだ』

『えぇ?実物見せてぇ?取らないからぁ。もしかしたら魔法で解析できるかも知れないしぃ?魔法で解析出来たら、材料さえあれば僕が作れるしぃ?訓練すればあるじも自分で作れる様になるかもだしぃ?そんなに複雑な構造じゃぁ、ないんでしょぉ?』

『まぁ、そうだが……あまり複雑でないとはいえ、それなりに高度な技術が使われている。なんせこの銃は新型だからな。弾もそれ用に作り替えてある。父の友人が改良した完全オーダーメイドだ』

『いや、これくらいなら魔法で作れるねぇ。もしかしたらそっちの煙幕とかいうのも作れるかも知れないよぉ?僕に貸してくれるぅ?』

『いいが、返せよ』

『もちろんだよぉ。流石に奪って逃げる事はしないからねぇ。あるじは強いしぃ?魔法も自分で習得して色々使ってきそうだしぃ?何より背後に回られたら勝ち目がなさそうなんだよねぇ』

『そんなに俺の実力を買ってくれている様で何よりだが、褒めても何も出てこないぞ?』


 えぇ?他にも色々見たかったのにぃ、とあからさまにしゅんとするリォルは楽しそうに煙幕と銃、そして銃弾3種類を眺めている。

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