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短編(単発・企画)

異世界魔力批判論

作者: ディスマン

読者の方からの熱い要望により書きました。

 小さい頃もそうだが、今でも私はドラゴンクエストやポケモンが嫌いである。キャラクターやストーリーが嫌いなのではない。あのナメ腐った戦闘システムが納得できないのだ。試合のようなルールと秩序ある場ならまだ分かる。しかし、都市の外に一歩踏み出せば、そこは無秩序と無法の世界だ。命がかかっている場面のはずなのにターン制の戦闘を強制される。子供なのに「ふざけるな」とよく言ったものだ。

 そして、魔法というものにも甚だ疑問が尽きなかった。魔法とは軽々しく言うのは簡単だが、非科学的であるが故に現代論理では説明できない不定形さを内包した概念だ。いざ説明しようとすれば、魔力とかマナとかこれまた訳の分からない言葉を使い出す。


 では、魔力の定義とは何なのだろうか。

 魔力の定義は二つ存在する。それは人を惑わす怪しい力と、魔術の力である。ファンタジー要素としては、「魔法を操る力量」や、RPGの影響から「魔法を使用する際のエネルギー」としての意味で認識されやすい。

 特にコンピュータゲームの登場によってMPというステータスが定着してからは、技術や能力というより出力やエネルギー量といった概念の方面で扱われる傾向にある。

 もうこの時点で一つの矛盾が生まれていることにお気づきだろうか?

 魔力は定義上では魔術の力とされているのに対し、RPGやファンタジーでは魔法に使う力とされている。これはおかしい。本来魔術で扱われるはずの魔力が、魔法でも同じく使われている。この点から見ても、世のファンタジー作家は魔術と魔法の区別ができているのか疑わしく思えてきた。

 魔力の謎を紐解くために、魔術と魔法は似てるようで違うものであることを念頭に置いてもらいたい。


 まず魔術は、科学的推論や根拠に基づいて実践される方法の一つである。現実的な理論や科学技術を基にして、一見人間には不可能な現象を起こすのが魔術であり魔術師と呼ばれる人たちなのだ。つまり、魔術を行う人が魔術使いではなく魔術師と言われるのは、原理や法則などをきちんと勉強して知識を身に付けているからである。薬学や生物学などもきちんと勉強していて、化学反応を起こすことで力を示そうとするのが魔術なのである。但し、その内容があまりにも現実離れしている為に、オカルトやファンタジーの一部と見なされてしまっているに過ぎないのだ。例を挙げるなら、アレイスター・クロウリーが有名だろう。


 それに比べて魔法は、その人の潜在能力に+αの力が加わり発揮されるものだ。特に学術的な知識を蓄えた訳ではなく、魔法の修行を積んだ人がなるもので、これを一般的に魔法使いと呼ぶ。魔法は、呪文や器具を用いたりして現実では不可能な現象を起こすことを言い、大きなことから小さなことまで程度が広くある。魔法使いは占い師も兼ねている事が多く、歴史を見れば王が魔法使いであったり、または王仕える魔法使いがいたことが分かる。ソロモン王が最たる例だろう。

 魔術は科学的根拠や推論に従い、不可思議な現象を起こす術のことであり、魔法は潜在的な能力により不可思議な現象を起こすこととされる。これらが、分かりやすい魔術と魔法の違いと断定できる。このことから分かるのは、魔術に魔力は全く必要ないということであり、魔力は魔法のみに適用される力であることが示されていることだ。


 その魔法を考える上で必要になってくるのが、本論の根本となる魔力の設定だ。ゲームやラノベなどの魔力の設定には、大きく分けて3つのパターンがある。

 1つは「魔力=体内エネルギー」説。

 一般的な認識としては、これが1番多いことだろう。何故かと言えば、これはゲームにおけるMPという概念から来ているからだ。魔法を使う度に消費し、使い切ると魔法は使えない。この設定であれば、魔力は間違いなく体内エネルギーと解釈できるだろう。体内エネルギーという設定は、無詠唱と相性も良い。自分の中にあるものを放出しているわけだから、詠唱のために発声練習や早口言葉を練習する必要なでなく、身体の中の魔力をコントロールするなどの修行の方が効果的だ。

 逆に詠唱は、何故詠唱する必要があるのか、この設定を正としても全く分からない。無理やりこじつけることはできなくはないが、納得感や信憑性は薄くなってしまう。自分のエネルギーなのに呪文などの何かしら起動操作を使うのは、明らかに論理に欠けていると言える。

 2つ目は「魔力=精霊」説。

 これは、そもそも魔法は呪文を言って発動するのだから、その呪文を聞く相手がいるはずだというものだ。呪文というものと相性が良いと見せかけて、よく考えると大抵の呪文が命令形で失礼というツッコミもせざるを得ない。どちらかと言うと「精霊と仲が良く、普通にお願いをすれば聞いてくれる」みたいな設定のキャラと相性が良いだろう。

 どちらにせよ「何故精霊は、命令口調の一般人の言う事を聞くのか」についての設定を考える必要はある。

 異世界ヒューマン魔法非在理論によれば、人間が魔法を使うことは不可能であり、異世界転生が絡む人物の全員に対しても魔法使用の際に何かしらの矛盾や欠点が生じてしまう。つまり、異世界の精霊と現代人の相性が悪い可能性が非常に高い。なにせ、転移者は異世界にとっては不純物そのものと言っても過言ではないのだ。分かりやすく言えば、宗教なども似たような形だろう。キリスト教徒がどれだけ祈ろうが、イスラム教や仏教の神が救いを差し伸べることはない。異教というのはそういうことなのだ。

 つまり、異界の者に対して精霊が耳を傾けることは考えにくいと言える。異世界人が魔法を使えない証拠がまた一つ増えた反証だった。

 また、精霊は地域の信仰によって解釈が違う場合が多い。しかし、いくら信者が多くの解釈を展開しようと精霊の実存に影響を与えることはないだろう。精霊は人の信仰ではなく自然界の中から生まれる超常的存在なのだから、そのあり方は最初から決まっているのだから。

 3つ目は「魔力=体外エネルギー」説。

 魔力が空気中などに粒子として存在するという説だ。通称「魔素」と呼ばれることもある。1つ目とのハイブリッドの場合も多いが、これはこれで別で考えるべきだと考えられる。この設定は何より、魔道具などの外付けの機器との相性が良い。また、詠唱も無詠唱も両方とも出来なくはない。詠唱をする場合は、所謂音声認識的なニュアンスでできるし、無詠唱に関しても体外のエネルギーを操るのだから特別な力を持った一部の人間だけができるという理もある。

 一方でこの設定では「魔力切れ」という概念は無いことになる。空気中にある魔力を使って魔力を打ち出しているわけだから、無限に魔法が使えることになりかねない。ハリー・ポッターの世界では、恐らくこの世界観が適用されていると考えられる。が、一つだけ欠点もある。それは、魔法使いはマグル界でも魔法が使えることだ。魔法界とマグル界は別世界なのだから、魔素の有無も違って当然である。


 では、そろそろ核心に触れることにしようか。

 そもそも、魔力や魔術の「魔」とは何なのか。この言葉の意味は、人を迷わしたり修行を妨げ善事を害する悪神や、人間業でない不思議な力を持ち悪を成すものとされている。要は、邪神や悪魔のことを指しているのだ。

 ここでまた惚けたコナンが登場する。精霊は精霊であり、決して神ではない。故に善神でも邪神でもない。よって精霊と魔力が結びつくことはあり得ないのだ。

 魔力が体内エネルギーという説も、綻びが生じることになる。魔力を魔の定義で考えるならば、呪いの力のような負のエネルギーこそ魔力の正体なのだ。よって、仮に魔法使いがいたとしたら、それらは全員がもれなく悪の魔法使いだろう。某呪術漫画の通りなら善性の魔法使いもいるとは考えられるが、秩序管理のための期間は必要となってくる。しかし、そんな期間があるのは「葬送のフリーレン」と「魔法科高校の劣等生」くらいである。

 ハリー・ポッターにも魔法省はあるが、あれは魔法使い管理というより魔法界の政治機関の役割の方が強い。それに、あの世界では邪神や悪魔は存在していない。マグルの魔法使いもいる時点で、魔力のような概念は不必要の世界であることも推察される。

 多くの魔法使いが登場する作品においても、魔法協会のような機関がないことが多いのではなかろうか。そう考えると秩序的とは言えない。大前提、勇者が魔族を倒すこと自体がナンセンスなのだ。魔力は悪魔のような存在が持つ力なのだから、その大元である魔王を倒しはすれど殺すなんて論外だろう。そんなことをすれば、それこそ魔法使いは魔法を使えなくなる可能性が高い。しかし、そんな事態になった作品はこの世のどこにも存在しない。


 以上のことから、作品上で描かれている魔法・魔術や魔力の解釈は間違いだらけである。

はい論破

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