第九十八話
ギルドから寮への帰りに寄り道し屋台で焼き鳥を買う、それを食べながら歩いていると寮の前に見慣れた人が待っていた。
「あ、帰って来た」
「リアナとリディアか久し振りだな」
「何処に行ってたんだ?」
「ギルドの依頼で西の森へ行って来たんだ」
「ギルドって言うと冒険者ギルドの依頼!冒険者ギルドに登録したのか!」
「昨日先生が保護者代理になってくれると言うから登録したんだ」
「リアナ、私達も登録に行くぞ」
「でも保護者が必要なんですよね」
「大丈夫だこういう時こそ貴族の力を使う、兄上を呼びに行って来るから先にギルドへ行っといてくれ!」
「えー、リディア様、本気ですか!」
「行くぞ!」
リディア達も冒険者ギルドに登録するつもりらしい、とりあえず今日は休むとしよう、焼き鳥を食べ終え寮に入ると部屋に荷物を置きゆっくり風呂に入る、久しぶりのベッドに入るとすぐに眠りについた、翌日、何だか嫌な予感がしたので朝食を済ませ早めにギルドへ向かった、ジュンス達はまだ来ていないが依頼の掲示板で依頼を探す。
「鉱石採取かこれがよさそうだな」
依頼書を取り受付へ提出する、昨日依頼を達成しておりジュンス達と仮パーティを組んでいるのですんなり受けられた、入り口近くのテーブルで待っているとリディアとリアナが入って来た、咄嗟に隠密魔法を使い姿を隠す。
「リディア様、まだ来てないようですよ」
「そうだな、待とう」
「本当に依頼を受けに来ますかね?」
「来る、絶対パーティを組むぞ」
「断られませんか?」
「そこは気合いだ、気持ちをぶつけるしかない」
「それに魔物と戦うなんてまだ私達では早いのでは?」
「確かに試験では倒せなかった、だがノルトと一緒なら大丈夫だ」
「足手まといになるんじゃ」
「心配性だな、とにかくパーティを組んでからだ、いざとなれば色仕掛けもアリだからな」
「そんな、まだ心の準備が」
「大丈夫だ、私はもう胸を見られてるからな」
何やら面倒になりそうだと思っていると貴族風の男が入って来た。
「リディア!やっぱりここに」
「兄上!どうされた?」
「帰るぞ!母上がカンカンだ」
「嫌だ帰らない!」
「お前にはまだ早い!昨日はお前に泣きつかれて仕方なく登録したがあれから俺がどれ程怒られたか!」
「兄上!見逃してくれ!」
「ダメだ!」
「一緒にお風呂入ってあげるから見逃してくれ!」
「・・・いや、やっぱりダメだ帰るぞ!」
リディアを兄が連れて行った、リアナも後を追いかけギルドを出て行く、ギルドに平穏が戻ったところでジュンス達が入って来た、隠密魔法を解除し手を上げジュンス達と合流する。
「ノルト、待たせたか」
「いや、丁度よかった」
「ジュンス今の見た?スネイル家のご子息が兄弟喧嘩してたわよ」
「ああ、貴族がこんな所で喧嘩とは珍しいな」
「優秀な兄弟と聞いておったがまだ子供じゃ喧嘩もするじゃろーて」
「知ってる貴族か?」
「ああ、スネイル家の三兄弟は優秀で一番上が王国宮廷魔法師の副長官に最年少で任命されたばかりだ、次男も王国騎兵隊の副隊長で今はこの町を守る任務のため戻って来ているが近いうちに王都の騎兵隊を率いる隊長になるって言われてるな、年の離れた三男はノルトと同じ学校の上級魔法師クラスにいると聞いたぞ」
「それは知ってる一番下なんだな」
「仲良くして損はない相手だが俺達には遠い存在だ」
「それでノルト、今日はどの依頼にするの?」
「これを受けた」
「鉱石採取か、よし行こう」
町を出て北西に向かう、昨日の森の北側にある山が目的地だ、平地を馬車に揺られ走り途中お昼休憩を取る、その後夕方まで走ると野営地帯に到着した、ジュンス達は焚き火に鍋を掛けスープを作っている、ノルトは寮の食堂で弁当をたくさん買ってアイテムボックスに入れてあるのでそれを取り出し食べていた、アイテムボックスは魔法師なら誰でも使える便利な魔法だ。
「ノルト、一緒に食べないか?」
「俺は弁当があるからな」
「そうか、ちょっと質問してもいいか?」
「ああ、いいぞ」
「弁当はアイテムボックスに入れてるのか?」
「ああそうだ、弁当以外も日用品や着替えなんかも入れてるぞ」
「じゃあその鞄は?」
「これは親父が作ってくれた魔道具の鞄なんだ、中は薬が入ってる」
「俺達は魔道具の鞄に日用品と食料を入れてる薬はベルトのポーチだ」
「たくさん入る鞄なんだな」
「いや、恐らくノルトの鞄と同じような容量だと思う」
「それだと食料が不足しないか?トールがアイテムボックスに入れてるのか?」
「ワシのアイテムボックスには貴重品や武具のスペアを入れてあるそれ以外は入らんのじゃ」
「もしかして人によってアイテムボックスの容量が違うのか?」
「そうじゃな、ワシはこれでもかなり大きいアイテムボックスだと思ってたんじゃが上には上がおるもんじゃの」
「そうかそれで腐りにくい乾物の食材を食べてたのか」
「ノルトも俺達以外と一緒に行動する場合は料理した方がいいぞ、面倒事に巻き込まれるのは嫌だろ」
「そうか、料理か」
「大丈夫だよノルト、みんなの前では固いパンと干し肉を噛っとけばわからないよ」
「そうだな、そう言う食料も入れとくか」
食事が終わるとノルトはアイテムボックスからテントと寝袋を出し眠るがそれを見たジュンス達はため息をつき横になった、翌日馬車で山の中腹まで登ると山小屋に到着した、ここで昼食を食べ管理人に馬車を預かってもらう、そこから徒歩で鉱山入り口に向かった、山小屋には鉱山ギルドの職員がいて馬車の世話をしてくれるようだ。
「この先は魔物が出る、慎重にな」
「空を飛んでる奴は襲って来ないのか?」
「ロックバードか、滅多に襲って来ないな、それにあの高さじゃ戦えないだろ?」
「あいつの羽はいい値で売れるんだけどね」
「そう、なら狙ってみるよ」
「狙うってロックバードか?」
「ワシは見たいの!どうするんじゃ」
「まあ見ててくれ」
ノルトは狙いを定め魔力を練ると右手をかざしロックバードに魔法を放つ。
「サンダードラゴン!」
イナズマがドラゴンの形を作り一直線に飛んで行くと見事に命中した、ロックバードが絶叫し落ちて来る。
「当たった」
「落ちてきた行こう」
「ジュンス止めを」
「ああ」
地に落ちたロックバードに近寄り大剣で首をはねると大量の羽が散らばった。
「試験の時にノルトが防いでいた魔法だな、まさかノルトも使えるとは」
「あの時はトリプルサンダードラゴンだったな」
「コルマールが驚くだろうな」
「あの時の冒険者か?」
「B級の魔法師だ、トールと同じ等級だがあいつはサンダー系に特化した魔法を使うんだ、それにしても一発で当てるとはな、威力はノルトの方が高いんじゃないか?」
「そうかな?それでこれが売れるのか?」
「そうそう、全部拾おうね」
ロックバードは肉も食べられるらしくフェムが解体し部位ごとに袋に入れてノルトに渡す、羽は山分けにした。
「アイテムボックスに入れとくといいよ、鮮度が落ちないしね」
「そうしよう、美味しそうだ」




