第八十八話
ジャイナ王国謁見の間、悪魔の国よりの使者ウリグ伯爵が竜王国との戦争協力を求め訪れていた、ジャイナ王国は法王国と敵対しているが悪魔の国とも友好的ではない、そのため今回の訪問も快く思わない者が多くいる。
「竜王との戦いにクレイ殿が参加されるのだな」
「左様です、ぜひ共同作戦に参加していただきたく参りました」
共同作戦ではジャイナ王国はラファエル法王国と戦う布陣となっている、悪魔の国と挟撃になるなら十分勝算はあるだろう、長年の敵国である法王国と戦う好機と考える魔法師長ラウンが国王に助言する。
「クレイ殿は信頼できます」
「カーク将軍はどう思う?」
「恐れながら申し上げます、我が軍が持つ浮遊戦艦の実力は法王国に負けていません、ただ北のエリオン聖王国が南下する可能性も考慮すると、浮遊戦艦の数が足りません、それに南のノイマン王国がどう動くかも気掛かりです」
「ドワーフ族が新造した浮遊戦艦があると聞いておるが?」
「はい、ですが乗組員が不足しております、特に魔法師の数が足りていません」
「ラウンよ、魔法師の育成はどうなっておる?学院で優秀な者はおらんのか?」
「すでに浮遊戦艦への訓練に参加しております」
「それでも人手が足りないか」
国王も魔法師長ラウンと同じく共同作戦に参加し法王国に勝利したいと考えていた、カーク将軍の言う問題を解決する良案がないか考えている。
「恐れながら発言をお許しください」
「キース宰相申してみよ」
「はは、最近この国に来た者の中に一級魔法師がおります、その者はクレイ殿と面識があるようで協力したいとの申し出がありました」
「なんと!それはありがたい、一級魔法師なら実力も十分だな」
「クレイ殿と面識があると言ったが証拠はあるのか?」
「特別な杖を持っておりましてクレイ殿にもらったその杖を使えば再生魔法が使えるそうです」
「再生魔法!そんな杖が存在しそれを譲り渡す者がいるとすればクレイ殿しかいないな」
「それと妖狐族の長からも実力者を派遣したいと使者が来ております」
「なんと!妖狐族は誰とも手を組まない一族それが実力者を派遣してくれると言うのか」
「法王国に囚われていた妖狐族が助け出されたそうで囚われていた時に受けた非人道的な仕打ちに対し報復を強く望んでいるようです」
「妖狐族には上級魔法師が多いと聞く、これで問題は一つクリアされたなカーク将軍」
悪魔の国との共闘に不安を感じている兵士は多いカーク将軍は不安を抱えたまま戦争を始めたくは無かった、問題を再度提示し不参加と決定されるよう話を進める。
「しかし新造した浮遊戦艦を全て投入したとしてもまだ数が足りません」
「何か手はないのかラウン」
「クイント共和国ブルージュ殿とエステリア帝国のフロイス殿から書状が届いております」
魔法師長ラウンが王に二通の書状を渡す、その中には両国とも今回の共同作戦に参加すると書かれていた。
「カークよエステリア帝国がエリオン聖王国と戦ってくれるそうだ、クイント共和国からも浮遊戦艦を我が国に派遣してくれるとある」
「なんですと!」
カーク将軍は驚き声を上げた、これで問題は解決されてしまいもはや共同作戦への参加は決定的な状況となった、だが悪魔の国など信用できないのも事実、ジャイナ王国は最前線で一番被害も多くなるだろう、兵士の気持ちも考え戦いが始まっても積極的に動かず防衛重視の戦いになるよう指揮するしかないと密かに決意する。
「私からもう一つ、懸念されているノイマン王国ですが中立の立場で戦争には参加しないとの情報が来ております、ウリグ殿そうですよね?」
「左様です、交流があるでしょうから公式に確認していただいてもかまいません」
「決まりですね、これで法王国と十分戦えます」
「ウリグ殿、我がジャイナ王国はこの共同作戦に協力しよう」
「良いご決断をされた、必ず竜王を撃ち破って見せますぞ」
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たま達はジャイナ王国の浮遊戦艦に搭乗して訓練を受けている、戦艦の主砲を発射する訓練だった。
「たま、これで本当によかったのか?世界を二つに分ける大戦争だぞ」
「もちろんです、やっとクレイ様の手伝いが出来るのですからしっかりやりましょう」
「我々の仲間も大勢死ぬんだぞ、この戦争本当にクレイが望んでいるのか?」
「バルター、クレイ様の目的は竜王国の竜王を倒すこと、竜王を倒せば戦争は我々の勝利で終わります、何も敵国を打ち負かす必要は無いのです」
「それはそうだが総攻撃があるかも知れんだろ?」
「戦力的にもハーシエルが海に落ちノイマン王国が中立を宣言している状況から我々が優勢です、竜王がクレイ様を倒すまで小競り合い程度はあるでしょうが総攻撃はないでしょう」
クレイが負けるなど微塵も考えていない、そんなたまにバルターは不安を感じていた、万が一でもクレイが竜王に負けたらノイマン王国も参戦する可能性が高い、そうすれば勝敗も分からなくなるはずだ。
「クレイを信じているんだな」
「必ず勝利します!」
たまの澄んだ瞳には少しの曇りもない、心の底から信頼している者の瞳だ、バルターはここまで信頼する人に未だ出会えていない、クレイとはそれほどの人物なのだろうかと思う。
「たま、ここにいたのか、食事だぞ、バルターも行こう」
「ああ、行こう」
「今日のメインは山鳥肉の揚げ物だぞ」
「それは楽しみですね」
バルターにはまだ会ってもいないクレイを信じ命をかけることなど到底出来ない、だがたまとロッシュを守るためなら命をかけられる、自分はたまとロッシュを守るためにここにいる、そのため最悪の事態も想定し動くよう心に決め行動を共にしているのだった。




