第八十七話
クイント共和国に悪魔の国から使者が訪れていた、会談は急遽作られた特別な会議室で行われている。
「ブルージュ宰相閣下、この度は会談に応じていただき有難うございます、本日は我が国とクレイ殿が竜王と戦うための共同作戦に貴国にも参加いただきたく交渉に参りました」
「今クレイ殿と申したのか?クレイ殿は悪魔の国にいると」
「左様でございます、我々の敵は他の星から侵略に来た古竜、つまり竜王国の竜王でございます、ハーシエルを海底に沈めた理由も我々の星を守るための一手となります」
「悪魔の国からの話だけでは信じられん、何か証拠はあるのだろうな?」
騎士団長が使者に問うと使者は持っていた鞄から何かを取り出した。
「クレイ殿よりメッセージ映像を預かっています」
渡された映像をブルージュ宰相とその場にいた政府高官が視聴する。
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「お久しぶりですブルージュ宰相、なかなか帰れずにすみません、世界を旅して回るうちにようやく真実にたどり着きました、竜王を討伐するのはダンジョン創造主の願いでありこの星の未来を守るためです、無理にとは言いません可能なら少しだけ力を貸してもらえれば嬉しいです」
「ブルージュ宰相、私からもお願いします、少しでいいので力を貸してください」
「この戦いが終わったら帰るからその時もよろしく頼むぜ」
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「確かにクレイ殿だそれにフォルト殿にクラリスもいる、間違いないようだ」
「不正が無いか調べてもらってもかまいません、どうぞ」
魔法師と技術者が映像を調査するが不正はない、悪魔の国など信じるに値しない、だがクレイへの信頼がブルージュ宰相にはある。
「共同作戦に参加して頂けますか」
「クレイ殿の手助けになるならその申し出を受けよう、我が国の浮遊戦艦は少ないが幸い敵国とは国境を接していない、最前線のジャイナ王国に派遣させてもらおう」
「有難うございます、感謝いたします」
「クレイ殿によろしく頼みますと伝えてくれ」
「承知しました」
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エステリア帝国謁見の間に悪魔の国から使者が訪れていた、厳重に警戒された謁見の間には皇帝リチャードを守るためインペリアルガードのライエンとマックスが左右に並び、将軍ルースが警備兵を直接指揮している。
「悪魔の国の使者など信ずるに値しない、早々に引き上げていただきたい」
皇帝リチャードの声が響くが使者も諦めずクレイからのメッセージ映像を渡す、ライエンが受け取り映像を確認する。
「これはクレイ殿!おい!この映像に不正が無いか調べよ!」
フロイス宰相が指示すると魔法師と技術者が映像を入念に調べ始めた。
「不正はありませんでした」
「本物だと!クレイ殿は竜王と戦われるのか、詳しく聞こう」
「我々の敵は他の星から来ている古竜なのです、竜王国の竜王を倒さぬ限りこの星に未来はありません、クレイ殿に竜王を討伐してもらうため共同作戦に参加して頂けませんか?」
フロイス宰相とライエンが皇帝リチャードに助言する。
「リチャード様、クレイ殿の力になれるならよろしいかと」
「クレイ殿ならきっと竜王にも勝てるでしょう」
「うむ、クレイ殿が協力を願うなら参加すべきだな」
信頼する二人の助言を聞き入れリチャードが使者に返答する。
「いいだろう、クレイ殿の浮遊戦艦は元々我が国の所属、クレイ殿のために参加しよう」
「有難うございます、貴国が参加されたのなら作戦成功は間違いありません」
「エリオン聖王国への攻撃は我が国が担当すると伝えてくれ」
「承知しました」
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エルフ王国の会議室に王と幹部それにミリア姫が集まっていた。
「クレイ様とティア様が悪魔の国と協力し竜王を討伐されると言う情報は本当なのですか?」
「はい、エステリア帝国にいる仲間からの情報では帝国が聖王国と戦う準備を始めたようです」
「悪魔狩りのティア様が悪魔の国と共闘など信じられません」
「ハーシエルに拘束されていた現悪魔王の姉イーリス、ティア様の仲間だった吸血鬼ミカエラ、それにエルフのユリスと言う者をクレイ様が救出したとの情報もあります」
「ユリス!そうか生きておったか」
「父上、ユリスとは?」
「英雄リューズの姪じゃ、この国を出てからの行方が分からなくなっておったがそうか、それで悪魔の国で何をしておる?」
「ミカエラ様と共に悪魔の国と共闘しているようです」
ミリア姫もエルフ王も驚いていたが少し考え頷く、エリオン聖王国への攻撃はしばらく控えていたがエルフ王国内では不満が高まっていた、エステリア帝国との挟撃なら勝算は十分にある。
「その情報が正しいのならティア様が悪魔の国と共闘する可能性も十分ありますね、では我々もエリオン聖王国へ攻撃を加えましょう」
「うむそれがよかろう」
「今こそ戦う時です!エステリア帝国との挟撃になるよう準備しなさい!」
「はは!」
悪魔の国から共同作戦への要請は無かったが長年の宿敵エリオン聖王国への攻撃決定に国内は沸き兵士の士気も高まっていた。
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竜宮城の作戦会議室、グプト王はこれから始まる戦いについて幹部達と話し合っていた。
「竜王は北の海底要塞にいるのだな」
「はい、今回はクレイ殿にとって不利となるでしょう」
「助けが必要だと思うか?」
「相手は他の星の古竜と聞きます、我々では力不足、いや足手まといとなるでしょう」
「グプト王、クレイ殿が望むことを考えてはいかがでしょう」
「ナナシュ、何が言いたい」
「我々がクレイ殿の役に立つにはやはり海中の安全を確保することではないでしょうか、海中に落ちた者を救助し安全な場所へ運ぶ準備をしてはどうですか」
その場にいた将軍や幹部達からも賛同の声が上がる。
「クレイ殿は戦争の死者が増えるのを望まぬか、よしクレイ殿の救助も考え準備しよう」
「戦争に参加するよりクレイ殿の役に立つに違いない」
「我々にしか出来ぬ作戦だな」
グプト王が幹部達の発言を聞きこれからの行動を決定する。
「皆の者、よく分かった、海上で戦争が行われる場所に仲間を派遣しよう、クレイ殿の救出部隊として海底要塞の近くには儂が自ら行こうと思う」
「我々キングスナイトもお供します」
「魔法師も必要でしょう私も行きます」
「ナナシュ、うむ、では準備を始めよ!」
こうしてクレイの知らない場所でも戦争の準備が進められていたのだった。




