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第八十五話

クルマを走らせ悪魔の国に到着すると門番の兵士に帰還を伝える、町は勝利を祝うパレードでお祭り騒ぎになっていた、城まで先導してもらい到着するとクルマを降り門の前で待っていた案内役の兵士と一緒に城へ入る。


「クレイ殿中へどうぞ」

「ありがとう」

「そちらの方はお仲間ですよね」

「ええ、そうです」

「イーリス様がお待ちです、どうぞこちらへ」


謁見の間には多くの人が集まっており戦勝の祝賀パーティーが始まっていた、クレイに気が付いたイーリスが駆け寄りその場にいた全員の注目を集める。


「クレイ殿!よく戻られた、こちらへ」

「もう宇宙から戻ってたんですね」

「クレイ殿の手助けをしようと急いで戻ったんだが、既にハーシエルは沈んでいた、さすがだな」


部屋の中央に移動するとイーリスがその場にいた大勢の人に話し始める。


「こちらのクレイ殿が宇宙母艦を破壊した最大の功労者だ!我々の宇宙戦艦も多くの敵艦を破壊したが宇宙母艦破壊までは届かなかった、巨大な宇宙母艦への攻撃は魔導レーザーだけでは不十分だったのだ!そこでクレイ殿が体当たり作戦を提案された、当初我々は自殺行為だと反対したのだが、クレイ殿の宇宙戦艦は装甲強度が非常に高く改修されており、またクレイ殿のシールド魔法が想像以上に強力であったため、戦線を離脱する動きを見せた宇宙母艦に対する体当たりを許可した!我々の宇宙戦艦も援護したが成功する可能性は低いと思っていた、クレイ殿の宇宙戦艦が宇宙母艦に衝突すると激しい爆発が起こり我らは退避せざるを得なかった、爆発する宇宙母艦の最後を祈りながら見つめているとクレイ殿の宇宙戦艦が戻って来たのだ!信じられない光景だった、傷ついた宇宙戦艦から通信が入り無事を確認すると自然と拍手が起こり喜び合った、そのまま一緒に地上へ帰還する予定だったのだが、ハーシエルとの防衛戦が苦戦中との報告を受け援軍に向かうと提案された、脱出カプセルで戦場へ直接降下すれば間に合うと判断し実行された、我々も急いで地上へ帰還するべく準備を急がせ地上へ戻ってみると既にハーシエルは海底に沈んだあとだったのだ、二つの戦いに勝利した最大の功労者クレイ殿に敬意を表する」


大きな拍手が響き渡る、イーリスから話をするよう促され、少し考えこれからのことを話すことにした。


「皆様、二つの大きな戦いに勝利し気分が良いことと思います、ですがまだ戦いは終わっておりません」


笑顔で勝利を喜んでいた多くの人々がクレイの発言で静まり返った。


「何ですと!それはいったい、まだ何かあるのですか?」


予想外の発言に思わず宰相が問いかけた、クレイが隣にいるアルシェを紹介する。


「こちら宇宙人の星から連れて来られた古竜のアルシェです」

「宇宙人の星から来た古竜ですと!敵では無いのですか?」

「アルシェはハーシエル王国に捕まり封印されていました、戦闘海域で海面に浮かんでいるのを偶然発見し助けたのです」


アルシェに注目が集まっている古竜である証明に竜人化を少し解除すると銀色に輝くドラゴンの姿に変身した、多くの人がその姿に驚きの声をあげる。


「我々は古竜など初めて見ます、ですがこの神々しさは確かに古竜なのでしょう」

「私の星から来たのは人間だけではありません、古竜の王やそれに従う古竜も来ているのです、古竜がダンジョン創造主であるのはこの星も同じでしょう、母艦を破壊しても古竜が生きている限りいつの日か再び宇宙母艦を作り上げてしまうでしょう」

「何と!それではアルシェ殿と同じ星から来た古竜はまだ生きていると言うのですか?」


宰相の質問に答える前にフォルトが疑問を問いかける。


「竜王国の古竜は倒したよな?宇宙に逃げたのも倒したんだろう?他にもいるのか?」

「宇宙母艦にいたかどうかは正直分からない、あの爆発で生きているとは思わないが姿を見てはいないからな、それに宇宙へ逃げたと見せ掛けた可能性も十分あると思う」

「なら何処にいるんだ?」


アルシェがフォルトの問いに答える。


「北の海中にいます」


謁見の間がざわつく、アルシェの記憶によるとこの星に最初に降りた場所が竜王国の更に北の海だったそうで宇宙戦艦が海中に沈んでいるとの話しだった。


「海中に宇宙戦艦があるのか」

「あれからかなり時間が経過しています、宇宙戦艦を格納する基地が作られているでしょう」


宰相が現在の戦力について確認する。


「戦争から帰って来たばかりです、今は戦力が足り無いのでは?」

「そうだな、修理にどれ程かかる?」


ルシト博士が技師長らしき人物と現状を確認し回答する。


「二つの戦場で受けた浮遊戦艦の被害を修理するのに3ヶ月以上はかかるでしょう、ただ修理が終わったとしても他の国が連合すれば勝ち目はありませんぞ、ハーシエルの件で既に我らの国は法王国と聖王国から宣戦布告を受けておるのですぞ」


集まっていた多くの人々が不安を口にする、今後の対策を考える必要があるイーリスはパーティーの終了を告げた。


「みんな、パーティーの途中だが今後の対策が必要になった、ここで終わりにする、クレイ殿は残ってくれ」


多くの貴族や役人達が出て行くとイーリスと宰相カルムら上層部だけが残った、今後の作戦を話し合うため会議室へ向かう。


「さて、今回の戦いには他の国も参戦してくるだろう、我らの味方になってくれるよう説得する必要がある、ウリグ伯爵!ジャイナ王国と交渉してみてくれ」

「かしこまりました」

「マシール公爵!ノイマン王国との交渉に当たってくれ」

「承知しました」

「クイント共和国とエステリア帝国は私が交渉しましょう」

「うむ、宰相カルムに一任する、あと交渉可能なのはカンド王国か、リムントス頼めるか」

「お任せください」

「さて、クレイ殿にはこの国のダンジョン創造主に会って欲しいのだがどうだ?」

「この国にもダンジョンが、分かった会いに行こう」

「浮遊戦艦の修理はルシト博士に任せる、なるべく急いでくれ頼んだぞ」

「早急に取り掛かりますぞ」

「連合に参加する国を1つでも減らせるよう交渉に当たってくれ、法王国、聖王国の動きを見張るのも忘れないように、頼んだぞ」

「ははっ!」


こうして次の戦いに向け準備が始まったのだった。

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