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第八十三話

クレイ達が宇宙へ飛び立つのを見届けるとフォルトとクラリスは浮遊戦艦で待機していた、それから半日後に大将軍バーリウムの指示でハーシエルとの戦いに備え町の北側に移動を始めた、浮遊戦艦の操縦はクリンのコピーに任せている。


「戦艦が二隻に空母が三隻か」

「これで防衛戦は少し心許ないですね」

「俺達が頑張らないとな」

「そう言えばもうそろそろルメリアさんが目覚めるころです」

「まだ時間はあるし見に行くか」


医務室に入るとカプセルが一つ開いておりルメリアが中で眠っていた、奥の部屋にあるミカエラとユリスのカプセルもあと数分で治療が完了するようだ、クラリスがコーヒーをカップに注いでいるとルメリアが目を覚ました、起き上がるとフォルト達に気が付く。


「あなた達は私達を助けてくれた人間だな」

「フォルトだ、こっちがクラリス」

「イーリス様は?」

「宇宙母艦を破壊しに宇宙へ行った」

「何だって!私が役に立たないばかりにイーリス様に無理をさせるとは」

「クレイとティアも一緒だ」

「ティアが!そうか・・ティア感謝するぞ」

「なんか色々とあるみたいだけどさ、浮遊島ハーシエルが再浮上してこっちに向かって来てるんだ、迎撃を手伝ってくれないか?」

「もちろんだ、出来る限り手伝わせてもらうがまだ力が半分しか戻ってなくてな・・」

「私達にも手伝わせてください」


奥の部屋からミカエラとユリスがふらつく足取りでやって来てそう申し出た、どうやら少し前に治療が終わっていたようだ。


「ミカエラ!ユリス!」

「フォルトさんクラリスさんよろしいですか?」

「大歓迎だ」

「我々は魔導アーマーで出ます、戦艦の操縦はAIのクリンに任せていますが無人には出来ません、ブリッジをお願い出来ますか?」

「承知した、ミカエラ、ユリス行こう」


ブリッジに入り艦長席にフォルト副艦長席にクラリスが座る、ルメリア達はナビゲート席に着いた。


「ルメリア達はAIのサポートを頼む」

「承知した」


ミカエラとユリスは出撃の連絡が来るまでハッチの解放や装備している武器の操作方法などの説明をクリンから受けていた、ルメリアは防御魔法とレーダーを担当する。


「旗艦から連絡が来ています、映像出します」

「バーリウムだ、出撃するそちらの準備はどうだろうか?」

「いつでも行けます!」

「では出撃だ!」

「了解!クリン出撃!」

「承知しました、フォルトとクラリスは魔導アーマーで待機願います」

「行きましょう」

「おう、ルメリア任せるぞ」

「了解した」


浮遊戦艦が出撃する悪魔軍も全艦出撃したようだ、海に出て二時間ほどでハーシエルを映像でも確認する、射程に入るまで接近すると砲撃戦が始まった、ルメリアはシールド魔法を使い防御を固めレーダーの情報を二人に伝える、ミカエラは自らの魔力を副砲のエネルギーとし戦闘機を打ち落とす、ユリスはシールドビットを操作し近付くミサイルから戦艦を守っている。


「ミカエラ!高速で近付く戦闘機が二時の方向!」

「補足しました撃ちます!」

「ユリス!ミサイルが来るぞ」

「任せて!守って見せる!」

「衝撃に備えて!魔導砲が来るわ!」


ルメリアのシールド魔法で魔導砲を受け止めるが衝撃で激しく揺れる、戦闘機のミサイルが続けて発射されるがこちらはユリスが上手く対応し防いだ、激しい砲撃戦が行われフォルト達も魔導アーマーを起動し出撃準備を整える。


「ハッチ解放!前方クリア!いつでもどうぞ!」

「フォルト出るぞ!」

「クラリス行きます!」


魔導アーマーが飛び立つ、クリンの改造であまり魔力の多くないフォルトやクラリスでも空中を高速で飛行可能となっている、戦闘機に狙いを定め照準をロックする。


「射撃を開始する!」

「当たれー!」


フォルトがライフル銃で戦闘機を打ち落とす、クラリスも練習の成果を発揮し苦手なライフル銃で次々と打ち落として行く、戦艦の近くを飛んでいた戦闘機はほぼ打ち落としたが次の戦闘機が来る、今度は数が多い。


「乱戦になって来たな!」

「ここからはランスで戦います」

「俺も剣に持ち替えるか」


敵戦闘機とすれ違いざまに剣で切り払いランスで貫く、戦闘機からの攻撃は魔導アーマーの防御シールドを貫けずダメージを受けない、ハーシエルの主砲と副砲のレーザー以外は回避せず攻撃を続ける二人の活躍は悪魔軍の中でも群を抜いた戦果を上げていた、数で勝るハーシエルの戦闘機を次々と打ち落としハーシエルの側面に取り付くと装甲を剣で切り裂きランスで突き破る。


「クラリス!魔導砲を破壊しよう」

「了解!まずは副砲を破壊しましょう」


副砲の破壊から始め主砲に向かい移動する、次々に出てくる敵の魔導アーマーは動きが遅く相手にならない、一方的に切り払い倒しながら遂に主砲の一つを破壊した。


「悪魔軍の魔導アーマーも来たようだ」

「フォルトここは任せて先に行きましょう」


悪魔軍の魔導アーマーとハーシエルの魔導アーマーは互角の戦いになっている、その中をフォルトとクラリスが別格のスピードで駆け抜けて行く。


「これだけ大きいとなかなか落ちないな」

「司令部か魔力炉を潰さないと」

「中に入るか」

「危険だがしょうがない行きましょう」


フォルトとクラリスが敵魔導アーマーのハッチから中に入り破壊しながら進む。


「魔力炉はハーシエルの中心部です」

「俺が切り開く!」

「敵魔導アーマーは任せて!」


フォルトが壁を剣で切り裂き中央へ向かうクラリスは襲ってくる魔導アーマーを近寄らせないようランスで突き刺し押し返している、そうして中心部に向かいしばらく進むと遂に魔力炉を発見した。


「大きい」

「この大きさだと剣で破壊するのは難しいぞ」

「ライフルの威力を最大にすれば撃ち抜けるはずです」


巨大な魔力炉が並んでいる中を歩きながらライフルで撃ち抜いて行く、高出力のライフルは魔力炉を破壊するのに十分な威力があった、ハーシエルは魔力炉から変換されるエネルギーが減り徐々に落下を始めている、フォルト達もそれに気が付き脱出を始めるが敵の魔導アーマーが次々に押し寄せ邪魔になり進めなくなった。


「このままじゃ俺たちも一緒に沈むぞ!」

「この魔導アーマー無人機です!どんどん来る」

「くそーー!」

「諦めない!」


必死に切り払い出口へ進もうとするが破壊した魔導アーマーが通路に積み重なり邪魔で進めない、ガクンと衝撃があり落下速度が加速する。


「くそ!」

「このままじゃ落ちる!」


その時ガラガラと天井が崩れ落ち空が少し見えた、更にドスンと衝撃が伝わり天井の穴が大きくなる、フォルトとクラリスが見上げた穴の上には小さな人影が見えていた。

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