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第八十二話

発進から数分で衛星軌道上まで到達したが既に敵宇宙母艦には察知されていたようで多くの宇宙戦艦が出撃し待ち構えていた、クレイは宇宙戦艦に防御魔法とシールド魔法を使い効果の保存機能を使用する。


「プロテクトシールド!フォースシールド!」

「敵宇宙戦艦が展開しています、モニター表示」

「いっぱいおるのう」

「地上の浮遊戦艦と違う所は?」

「浮遊戦艦と言うより完全に宇宙船です、防御シールドを展開していますが脆弱です、魔導レーザーで撃ち抜けるでしょう」

「魔力炉が出力不足と言うのは本当のようじゃな」

「よし射程に入り次第発射する、魔導レーザーへの魔力供給はこの球体に流せばいいのか?」

「はい、手を触れてください」


目の前にある球体に手を当てると魔力に反応して青く光り始める、球体に魔力が吸い取られて行く。


「儂はこっちの球体に魔力を流せばいいのか?」


隣にある球体にティアが小さな手を当てると同じように青く光り出した。


「魔力を吸われる感覚が止まったぞ」

「充填完了です射程に入りました、発射出来ます」

「よし、撃て!」


前方の砲台から青いレーザーが発射されると敵の宇宙船に当たり爆発する、レーザーは貫通し後方の宇宙船も巻き込み次々と爆発していた、ティアの魔力を流したもう一つの主砲も発射され同じように多くの宇宙船を破壊している、隣ではイーリス達の宇宙戦艦も主砲を撃ち始めていた。


「なかなかの威力だな」

「イーリスの戦艦も同じ魔導レーザーを使っておるのじゃろ?こっちの方が凄まじい威力に見えるぞ」

「こちらの主砲は魔導レーザーの出力を高めてあります」

「よーし、イーリスなんかに負けるでないぞ」

「どんどん発射してくれ」

「承りました」


クレイの乗る宇宙戦艦から次々と魔導レーザーが発射され、前方の敵宇宙船が爆発している様子がモニターに表示されている、それでも数で勝る敵の攻撃は凄まじくミサイルが雨のように発射され次にレーザー砲が追い討ちで発射された、クレイのプロテクトシールドがミサイルを防ぎフォースシールドがレーザー砲を防いでいる、数は多いが魔導レーザーのような強力な攻撃ではないためミサイルが着弾する衝撃で多少の揺れはあるが戦艦へのダメージはほとんど無い、イーリスの宇宙戦艦も同様に砲撃を受けシールドで防いでいるが多少被弾していた。


「クレイの防御魔法は完璧じゃの」

「かなりやっつけたな、そろそろ宇宙母艦にも撃ち込もうか」

「承知しました、このまま射程に入るまで前進します」


クレイの宇宙戦艦が前進を始めるとイーリスの宇宙戦艦も後に続き前進を始めた、イーリスの宇宙戦艦は多少の損傷はあるものの戦闘継続には問題無いようだ。


「敵のレーザー砲が発射されます衝撃に備えてください」


クリンの警告から数秒で敵母艦から強力なレーザー砲が発射されクレイの宇宙戦艦に直撃する、防御魔法の効果で船体に傷は無いが十数秒グラグラと揺れていた、敵母艦の主砲は連続発射が出来ないようで次の砲撃はまだ発射されない、だがミサイルや副砲のレーザービームは雨のように続いている、そんな中をクレイの宇宙戦艦は前進し続けていた。


「魔導レーザーの射程に入りました」

「撃つのじゃー!」


発射された魔導レーザーが巨大な宇宙母艦のシールドを直撃し破壊した、二射目の魔導レーザーが敵母艦に到達し装甲を破壊する、敵母艦も再度主砲のレーザー砲を発射するがクレイの防御魔法を破壊出来ずに終わる、しかし敵も必死の抵抗を見せ小型の宇宙船による突撃作戦が行われた、シールドで防ぐが激しく船体が揺れる。


「体当たりして来るなんて!正気か?」

「船体の装甲強度が違いますので損傷は軽微です」

「このまま魔導レーザーで母艦を破壊できそうか?」

「あれだけ巨大な宇宙母艦ですから相当の時間が必要です」

「持久戦は面倒だな何かいい方法は無いか?」

「こちらも体当たりするのはどうでしょう?」

「大丈夫なのか?こっちの損傷もあるだろ?」

「装甲は既に破壊しています、魔導レーザーで中央を集中的に攻撃し更に脆くすれば体当たりで母艦の背面へ貫通可能と予想します」

「なら体当たり作戦をイーリスに連絡するか」


これから体当たりで宇宙母艦を破壊すると連絡するがイーリス達から大反対された、仕方無くしばらく魔導レーザーで攻撃していると宇宙母艦が遂に戦線を離脱する動きを見せた、ここでイーリス達も体当たり作戦をようやく了解してくれた。


「全速前進!魔導レーザーを撃ちながら体当たりする!ティアこっちに来て、最悪の場合イーリスの宇宙戦艦に転移魔法で避難する」

「分かった、まったく無茶な奴じゃ」


ティアがクレイの胸ポケットに入り準備が完了した、どんどん接近し高速で宇宙母艦に衝突するとその衝撃で船体が激しく揺れた、クリンの報告ではこちらの宇宙戦艦は装甲がかなり厚くしかも防御魔法で装甲の強度を高めるよう設計されているため体当たりによる損傷はクレイの予想よりかなり少ない、深く突き刺さるように宇宙母艦の中央へ体当たり攻撃が成功した。


「このまま前進します」

「行くのじゃーー!」


クレイの宇宙戦艦は体当たりの勢いのまま敵母艦を破壊しながら突き進む、敵母艦の船体中央に大きな穴を開けながら予定通り背後へ突き抜けた、反転し再度体当たりする準備をしていると敵母艦から爆発が起き始めた、大きく空いた穴の内側から次々と爆発し敵母艦は完全に破壊され停止した、この状況では戦闘継続は不可能と判断したのだろう敵宇宙船が次々と降伏を始めた、こうして宇宙母艦破壊作戦はクレイ達の大勝利で終わったのだった。


「クレイ殿!無事ですか!」

「はい、船体に傷が付きましたが地上への帰還にも問題ありません」

「まったく無茶をする、体当たりなど作戦ではない、ここまで想定して改造していたのか?」

「クリンのお陰です」

「残存敵宇宙船は全て降伏した、我々の大勝利だ」

「降伏した宇宙船はどうするんですか?」

「地上に降りられる宇宙船のみを連行する」

「戦後処理は任せます」


地上へ降りられる宇宙船に降伏した乗組員を移動させ始める、全員一度には無理なので今後何度か宇宙と地上を往復し全員を地上へ移動させると決まったのだった。

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