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第八十一話

竜王国からの離脱が完了すると慌ただしく作戦会議室へ入りこれまでの状況を報告し合った。


「イーリス、竜王には逃げられた」

「そうか、実はこちらも倒しきれなかった」

「転移魔法で逃げたのか?」

「そうだ、それに一体としか戦っていない」

「俺達は一体倒したよな」

「そうです、あれは古竜でしたよね?」

「うん、竜王よりだいぶ弱かったが確かに古竜だった」

「竜王はどこへ逃げたんだ?転移魔法ならそんなに遠くへは逃げてないんだろ?」

「クリン、何か分からないか?」

「クレイ様、一足遅かったようです、只今宇宙戦艦と思われる飛行物体が発進しました」

「この星から逃げ出したんなら俺達の勝利じゃ無いのか?追い払ったんだろ?」

「いや、戦力を整え戻って来るだろう、我々の国に宇宙から直接攻撃してくる可能性もある」


空に向け発進する巨大な浮遊戦艦をレーダーが捉えていた、脱出した浮遊戦艦も一緒に宇宙へ飛び立ったようだ。


「宇宙か、イーリスどうする?」

「一旦我々の国に戻ろう、追いかける宇宙戦艦もある」

「宇宙戦艦があるのか!」

「なら戻ろう、クリン悪魔に国へ向かってくれ」


竜王国から悪魔の国へ戻り浮遊戦艦をドックに入れると出迎えた兵士に案内され作戦会議室へ入った、既に大魔王ロキエルや幹部達が揃っている、イーリスが席に着くと全員が座りロキエルが話し始めた。


「姉上、無事に御帰還されたのは何よりです、竜王を逃がしたのは残念でしたね」

「宇宙に逃げた所までは分かっている、今頃は宇宙母艦に到着しているだろう」

「姉上からの話では奴らの宇宙母艦を破壊するのに宇宙戦艦が必要との話しだが、実はこの国で開発した宇宙戦艦が二隻あるのだ」

「たった二隻か?それで本当に大丈夫なのか?」

「危険なのは宇宙母艦だけで他の戦艦はたいした性能ではない」

「でも二隻だろ?」

「相手は大半が魔力の少ないただの人間だ、それに魔力炉の出力が魔石との相性が悪いため不足している」

「なぜ新しい魔力炉を開発しないんだ?」


専門家らしい白衣の悪魔が説明しようと手を上げるとロキエルが話すよう頷く。


「私から説明しますぞ、魔力炉で作られるエネルギーのタイプが違うからですぞ、宇宙母艦の新造は物理的に不可能ですから宇宙戦艦を新しい魔力炉で新造しても宇宙母艦との接続が不可能なのですぞ」

「なるほどな」

「クレイ殿に協力して頂けるなら勝算は十分にあると考えております、ルシト博士詳しい説明を続けてくれ」

「奴らの宇宙戦艦を奪取し解体、そして全ての部品を調べ研究し開発しました、今では奴ら以上の宇宙戦艦を製造できると自負しておりますぞ」

「宇宙での戦闘も経験済みなのですか?」

「単発的ですが何度もありますぞ、奴らの宇宙母艦も確認済みですぞ」

「武器は?」

「魔導レーザーを搭載しておりますぞ、我ら悪魔族の魔力なら複数回の発射が可能ですぞ」

「ジャイナ王国の城塞にあった魔法砲台と同じタイプの兵器ですか、確かにあれなら戦えるかも」

「クレイ殿、我も宇宙戦艦で出撃するつもりだ、一緒に戦ってほしい」

「姉上!危険過ぎます!宇宙になど行かせる分けには行きません!」

「悪魔族の中で一番魔力が高い我が行かねばならん、魔導レーザーの発射回数にも影響するからな」

「ならば私が」

「ロキエルは王としてやるべきことを成せ、クレイ殿どうか力を貸して欲しい」


クレイ達に頭を下げるイーリスを見てロキエルが慌てている。


「一隻任せてもらえるなら、一緒に行きましょう」

「感謝する!」

「それではクレイ殿、宇宙へ行く主なメンバーはこの部屋にいる者でよろしいですかな?」

「宇宙戦艦にはAIロボットをクルーとして乗せようと思っています、それとフォルトとクラリスは地上で待機してもらいます」

「クレイ様お一人で行かれるのですか!お供させてください」

「フォルトもクラリスも魔力量が多くないでしょ、地上の町を守ってくれ」

「クレイ殿、AIロボットで宇宙戦艦を動かすおつもりですかな?我々の技術者無しでは発進も難しいですぞ?」


クリムがクレイの前に現れ悪魔族にお辞儀する、イーリス達が少し驚いていた。


「俺の浮遊戦艦はこのクリムが動かしています、宇宙戦艦もクリムが動かせるようにシステムを変更すれば問題無いでしょう」

「しかしクレイ殿一人では色々と大変でしょう?魔導レーザーを撃つにも魔力が必要ですし、いくら優れたAIロボットとは言え無理なのでは?」

「儂が一緒に行ってやろう」


クラリスの胸ポケットからティアが飛び出した、華麗に着地を決めると腕組みをしている。


「ティア!いいのか?」

「儂の魔力量は悪魔族に劣らず多いからの、勘違いするでないぞ悪魔族!お前らの仲間になるのではないミカエラを助けてくれたクレイの力になりたいだけじゃ!」

「分かった、ではティアと俺で行きます」

「それでも二人では」


イーリスが手を挙げルシト博士の話を遮る、まだ何か言いたそうだったがそれ以上は発言しない。


「いや、クレイ殿がそれでいいのならそうしよう」

「イーリス様!」

「そのAIが動かしやすいよう宇宙戦艦のシステムを変更して構わない、終わり次第出発しよう」

「助かります」

「では我々も準備を始める行くぞ!」


会議が終わりドックに戻るとクリムにシステムと宇宙戦艦の改修を命じる、浮遊戦艦に保管されていたロボット達も運び込み手分けして作業を進めた、クレイ達はその間に魔導アーマーを動かし必要な機材を積み込むそうして一週間で出発の準備が整った。


「クリン完成したって?」

「はい、魔法による強化は二つまで保存出来ます、装甲が弱かったので前方の装甲を大幅に強化しました、防御魔法の効果が最大限発揮されるように設計してあります」

「操縦は大丈夫か?」

「はい、いつでも発進可能です」

「よし、じゃあイーリスと話しに行くか」


準備が出来たと伝えるため城に入り兵士に取り次ぎを依頼すると、控えの間に案内されソファーに座り待つ。


「クリン、イーリス達が乗る宇宙戦艦の性能も分かるか?」

「はい、大きさはほぼ同じで魔力炉のエネルギーをシールドとして利用出来るようです、念のためルシト博士の許可を得て防御魔法を保存出来るようこちらと同様の性能を追加してあります、魔導レーザーは同じ性能です、機動力は魔力炉の性能が高いので向こうの方が少し高速です」

「その性能なら気にせず戦えそうだな」

「クレイ様、必ず帰って来てください」

「大丈夫だよ、最悪の場合転移魔法で帰って来るから」

「そーか、それで俺達が行かない方がいいんだな」

「ティアだけなら俺一人と変わらない魔力で転移出来るからね」

「お待たせしました」


作戦会議室へ入るとイーリスを含め出撃する主なメンバーが集まっていた。


「準備出来たそうだな、こちらも出撃可能だ、ただ一つ悪い知らせがある」

「何かあったのですか?」

「ハーシエルが再浮上した、こちらに向かっているらしい」

「再浮上!」

「再浮上と言っても大きさはだいぶ小さくなってる、町や城を切り離したようだ巨大な浮遊戦艦と言ったところか、だが戦争は避けられないだろう」

「宇宙へ行く前に戦うつもりですか?」

「いや、戦艦と空母はこちらにもある我々は計画通り宇宙へ向かう」

「俺の戦艦も出撃しましょうフォルト、クラリス頼んだよ」

「魔導アーマーの見せ所だな」

「お任せください、クレイ様安心して宇宙へ行ってください」


出撃の準備が整い宇宙戦艦が出港する、浮遊石の力で上空へ舞い上がると宇宙に向け発進した。


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