第七十四話
扉を開けると山小屋の中ではなく最初に三人が別れた場所に出た、ロッシュはたま達を見つけ声をかける。
「たま、バルター、すまん時間がかかっちまった」
「私も今来たところよ」
「俺もだ」
「そうなのか」
「時間を調整されているのかもね」
「その通りだ」
声のする方を見ると古竜のゼムが立っていた、たま達に試練の続きを説明する。
「支給した装備は気に行ってくれたみたいだな」
「助かったわ」
「これが無ければ倒せなかったな」
「では試練の仕上げにあれと戦ってもらう」
「あれ?」
「あそこにいるだろ?」
目の前の草原を見渡すと遠くに何かいる、かなり遠いが蛇のようなモンスターだった、動かずに待ち構えているのはボス扱いだからだろうか。
「あれってヒュドラか?」
「頭が七つの蛇、確かにヒュドラに見えるが」
「そうだ、今の君達なら何とかなるだろ?」
「倒せるのか俺達で?」
「いや、無理だろ!」
「本当に何とかなると思いますか?」
「属性攻撃が可能で壁役もいるんだ、弱点を見極め攻撃を続ければ不可能じゃないさ」
「分かりました、やってみます」
たまが真剣な眼差しでそう言うと驚いたロッシュが慌てて声を上げる。
「おい、たま!」
「どれ程実力が上がったのか知りたいでしょ?」
「そうだな、やってみるか」
「バルターまで!」
ロッシュは全く倒せる気がしないが二人を説得するのは無理だと思いため息を付く。
「じゃあこの扉であそこまで行けるから、無理なら引き返せばいい」
「本当に引き返せるのか」
「あくまで試練だからな、まずは十分に休息してからにするといい、今日はここで休め」
ゼムの用意した山小屋に入ると食事が用意されており、お風呂にマッサージそれと回復薬も用意されていた、ベッドで休み翌日の朝に対ヒュドラ戦闘の作戦を話し合う。
「ヒュドラは頭にそれぞれ違った弱点があるんだよな」
「俺が攻撃を引き受けるその間に頭の数を減らしてくれ」
「分かった、私が炎と氷それに雷の弱点がある頭を担当するわ、まず狙うのは回復担当の頭ね」
「じゃあ俺が風と土か、他はどうする?」
「あとは何があるんだ?」
「物理攻撃が弱点のタイプね」
「物理攻撃なら俺が仕留めよう、但し頭の数が減ってからだぞ」
「分かったわ、では行きましょう!」
「おう!」
山小屋を出るとヒュドラのいる場所へと通じる扉の前に集まりたまが扉を開く、中に入るとヒュドラが目の前にいる、強敵ヒュドラを目の前にするとやはり恐怖心が沸いてくる、予想はしていたがこれほど巨大で威圧感を感じるモンスターは少ない、ドラゴンくらいだろう。
「恐ろしいな、本当にやるのか」
「まずは準備しましょう」
身体強化魔法やシールド魔法を使い準備を整え武器を構える、遠距離からの攻撃魔法で戦闘が始まった。
「アナライズ!弱点を確認してね、ファイアトルネード!」
「ウインドショット!」
炎属性と風属性が弱点の頭を攻撃する、ロッシュは続けて三本矢を射ると頭部に命中しその頭が動かなくなった、回復魔法を使おうとしていた別の頭部もたまの魔法が直撃しぐったりしている。
「キャッスルウォール!」
怒り狂うヒュドラの意識がバルターに集中し残った頭部で強力な噛みつき攻撃と炎の玉による連続攻撃が始まった、猛攻に耐えるバルターは必死に盾で防いでいる。
「アイスジャベリン!」
「ロックスパイクアロー!」
「ギャーオーーー!」
「グァーーーー!」
「まだまだよ、アイスジャベリン」
「ロックスパイクアロー!」
次々に攻撃が命中し四つ目の頭を倒した、だがヒュドラの猛攻は更に激しさを増しバルターを攻撃する、強力な噛みつきと火の玉を盾で受け止め必死に耐えている。
「バルター大丈夫か?」
「もう長くはもたないぞ」
「サンダーバースト!」
「ハイパーシュート!」
「サンダーストーム!」
「スパイラルアロー!」
集中攻撃が大ダメージを与えると残る頭が二つになった、ここで強力な吹雪のブレスが放たれる、猛吹雪の中噛みつき攻撃が繰り出されバルターの盾が変形して行く。
「もうダメだ!」
「もう少し頑張って、アクアトルネード!」
「ハイパーシュート!」
吹雪を吐き続ける頭部にダメージを与え戦闘不能にすると同時にバルターの盾が破壊された、両手で剣を持ち剣技を連発する。
「カイザーストライク!」
「ライジングスラッシュ!」
「ハイパワースマッシュ!これでどうだ!」
全力を出し切ったバルターがふらつき膝をつく、ヒュドラの尾がバルターを直撃する直前にたまの防御魔法が発動したがそれもあっさり砕け散りバルターは飛ばされダメージを受け転がっている。
「ハイパーシュート!」
「ガーーー!」
最後の力を振り絞り強力な噛みつき攻撃がロッシュを襲う、防御魔法のシールドが破壊され大ダメージを受けた、瀕死の状態で横たわっている。
「みんなよく頑張ったわ、あとは任せて!サンダーサイクロン!」
雷の上位魔法がヒュドラを直撃する、絶叫する最後の頭が吹き飛びゆっくりと胴体が倒れた、キラキラと消えあとにはヒュドラの革と牙が残されていた、戦いが終わったすぐあと古竜のゼムが現れ動けないたま達をメイドに運ぶよう指示を出す。
「まさか一回目で倒すとはね、みんな無理してボロボロじゃないか」
「ゼム様、救護室にて治療を始めます」
「うん、牙と革も回収しといて」
「ははっ」
「さて、じゃあ頑張った褒美でも用意するか」




