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第七十二話

バルターが扉を開けて入った先はモンスターが徘徊する城だった、巨大な城の中にいるモンスターはサイクロプスやオーガなど大型タイプばかりで、一階で遭遇するモンスターは何とか倒せる強さだったが二階以降は全く倒せなかった、バルターは普段攻撃を受け止める役割なのだが二階で徘徊しているモンスターはパワーがあり過ぎて盾で防御しても吹き飛ばされてしまう、山小屋に用意されていた武具の性能が高いのでダメージこそ少ないがこのままでは上の階へ行けそうにない、何か解決策は無いものかとベッドにある本を読み始める。


「アンカーシールドは使ってるんだけどな、上位の技で今使えそうなのは無いし、もしかしてこの盾で使える固有技があったりするのか?」


盾を調べると内側に小さな宝石が嵌め込まれているのを発見した、この宝石が本に記載されておりバルターの予想通り固有技を使える盾だった。


「キャッスルウォールか、試してみるか」


一階で単体のモンスターを選び戦闘を開始する、固有技で物理攻撃をどの程度防げるのか調べる。


「キャッスルウォール!」


強烈な薙ぎ払い攻撃を吹き飛ばされずに防ぐことはできたダメージもほぼ無い、だがこちらから攻撃を始めると技が解除されてしまう、防御専用の固有技なのだろうか?


「攻撃してから再発動までの時間が問題だな」


何度か練習するがキャッスルウォールの再発動に時間が必要なため上手く行かない、一旦山小屋に引き返し他の本も読んでみることにした。


「二つの技を同時に発動する方法か」


本の内容は二つの武器を使いそれぞれ技を発動する方法だった、片方が盾でも可能ではないかと考え本の先を読み進める。


「同じ系統の技なら同時に使える技があるのか、キャッスルウォールを発動したまま剣技を使う方法は同じ系統の剣技だとすると・・」


剣の柄に宝石が嵌め込まれている、本で調べてみるとこの剣で使用可能な固有技が記載されていた。


「カイザーストライクか同じ系統だし強そうだな」


再び城の一階で練習する、キャッスルウォールを発動し攻撃を防いだ後カイザーストライクで倒す、最初はタイミングが難しく三回に一回程度の成功率だったが何度も練習するうちに成功率も徐々に上がっていった。


「カイザーストライク!」


モンスターの攻撃を耐え次の攻撃に移る瞬間を逃がさず固有技を叩き込む、ロングソードが白く輝きオーガソルジャーの首を切り落とした。


「この技、威力も高いし扱いやすいぞ、よしこのまま登ってみるか」


モンスターの城を登りながら実戦で練習を重ね二階や三階のモンスターも倒せるようになった、そして遂にボスのいる最上階へ。


「あれか、アイアンジャイアントの進化したモンスターだな、魔法が使えれば楽勝なんだろうけど」


全身が黒いフルアーマーの巨人アイアンジャイアントは雷系の魔法が弱点だが、そこにいたのは全身が白いフルアーマーの巨人ミスリルジャイアントだった、ミスリルジャイアントは魔法にも高い耐性がある、この場に魔法を使える者がいてもかなり苦戦するだろう、バルターは回復薬を飲み干し戦闘を開始する。


「キャッスルウォール!行くぞ!」


ミスリルジャイアントの巨大な斧がバルターに振り下ろされるがバルターは盾で受け止めた、ダメージはほとんど無い。


「よし、行けそうだ、カイザーストライク!」


ミスリルジャイアントの斧を持つ手を切り落とした、だがすぐに再生される。


「ゴーレム系だったか」


再び斧が振り下ろされる、今度は赤いオーラが斧を包み込んでいた、盾で受け止めるが少しだけ後ろに押し返された。


「まだまだ、カイザーストライク!」


今度は胸に剣技を叩き込む、大きく切り開かれたフルアーマーの中に赤い核が見えた。


「もう一度だ、カイザーストライク!」


ミスリルジャイアントは盾で攻撃を受け止める、お互い攻撃と防御を繰り返し一時間以上も戦闘を続けている、そのうちミスリルジャイアントの傷がどんどん増えて行った、だがバルターのキャッスルウォールも限界が近付いている


「ガギン、ガギン、ブーーーーン!」


傷だらけのミスリルジャイアントが斧技を放つ、遠心力を効かせた一撃が直撃するとバルターのキャッスルウォールを粉砕した、だがバルターも最後の攻撃に最強の技を選択する、キャッスルウォールが解除される技だが既に砕け散っているので構わずロングソードを振り抜いた。


「ライジングスラッシュ!」


下段から切り上げられた剣にミスリルジャイアントの盾が切断される、続けて上段から振り下ろす連続技で胸の核を狙う。


「ハイパワースマッシュ!」


大きく踏み込みロングソードを振り下ろすと防御しようとする腕ごと切り落とし、その尖端が核を切断した、ミスリルジャイアントはボロボロと崩れ落ち、その中から腕輪が一つ転がり出てきた。


「腕輪か、これだけ苦戦したんだ性能は期待するぜ」


巨人の腕輪を身につける、携帯端末で確認すると攻撃力と防御力が大幅に上昇する装備品だった、疲れてその場にすこしの間座り込む。


「なかなかの性能じゃないか、よし戻るか」


回復薬を飲み干し山小屋へ引き返すバルターを古竜ゼムが見つめる。


「上手く成長できたみたいだね、さてホビット君はどうかな」


ボスの残骸を消し去るとゼムも姿を消した。

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