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第七十一話

たまは青い扉を開け中に入る、そこはジャングルのような森の中で昆虫系のモンスターが多く生息していた、今入ってきた扉を開け入り直すと山小屋の中になりリビングにはテーブルとイス、寝室にはベッドとクローゼット、キッチンの冷蔵庫には食材が入っていた、テーブルの上には手紙が置かれており特訓場のボスを倒すと帰れるとあった、クローゼットには着替えと装備品も揃っている、今身に付けている物より少し性能がいいようなので着替えてみた。


「サイズもピッタリ、これで戦えってことよね」


外に出て戦いの準備を始める、山小屋の周辺はシールドがありモンスターも入って来れないようだ、シールドの外側に出て辺りのモンスターを索敵すると飛行タイプの虫が襲ってきた。


「アイスバレット!」


蝶のようなモンスターは倒せたが地面を歩いて近寄って来る甲虫には効かなかった。


「アイスニードル!ダメかじゃあアイスジャベリン!」


次々に襲って来るモンスターを倒しているとすぐに魔力切れとなりシールド内に避難した。


「こんなに数がいると大変だわ」


その日から毎日モンスターを倒し続けた、ジャングルの中を少し進んでは撤退し魔力を回復させる、出会うモンスターはだんだん大きくなっていった、防御力が大きく向上しどんどん倒しにくくなってきている。


「このままじゃダメね、どうにかしないと」


山小屋に戻り対策を考える、寝室にある本棚から魔法についての本を手に取り読んでみた。


「魔法の威力は魔力量に比例するか、そんなの知ってるわ、でも単に魔力を多く込めても高位の魔法を発動するのに時間がかかるのよ」


ページをめくり書かれている内容を一つ一つ自分は出来ているか考える。


「ふむふむ、集約、魔力の密度、細かな魔力操作が必要なのね、この杖ならできるかも」


魔力の回復を待って外に出る、杖に魔力を集中し基礎魔法を放つと少しだが威力が上がった気がする。


「基礎魔法に多くの魔力を込めるか、考えたこともなかった、確かに基礎魔法を強化できれば放つ間隔も短いし連射も可能ね」


何度か練習してみるがなかなか思ったように行かない、基礎魔法は少ない魔力で発動してしまうため多くの魔力を込めるにはまず魔力を圧縮するイメージで小さな固まりにしこれを込める必要がある。


「アイスニードル!」


標的を撃ち抜く貫通力が備わったが連射できなければ意味がない。


「魔力の玉を複数作って体内に貯めておく必要がありそうね」


この日以降、基礎魔法の強化を何度も練習する日が続いた、数週間が過ぎた頃、たまは基礎魔法でモンスターを倒せるようになっていた、魔力を温存しながら延々と続くジャングルを進む、するとジャングルの終わりが唐突に訪れた、比較的モンスターが弱い北側を探索していたのだがそこには壁があった、そう、ここはダンジョンの階層だった、予想はしていたのでそれほど驚きはない、探索範囲が限定されるのはいいことだ、ただここにはボスモンスターがいると分かっているので今後は居場所を探して移動を続ける必要がある、ボスはおそらくモンスターが強い南西にいるだろうと予想し探索していると強力な魔力を持ったモンスターを発見した、人間のように二本足で立っているが背中の羽や尻尾の先にある針それに頭部がどう見ても蜂だ、四本の腕には二本の剣と盾それに杖も持っている、たまは一旦引き返すとどう戦うか対策を考え始める。


「自然の森じゃないし炎の魔法使ってもいいわよね、上手くすれば羽も燃やせて機動力も奪えるし、うんそうするとして、問題は接近戦になった時ね」


たまのシールド魔法で防げるだろうか?風魔法で距離を取りながら戦うとして近距離用の武器も必要だ、クローゼットに何か無いか調べる、ガサゴソ探して見ると短剣のような武器を見つけた。


「これは、使えるわ」


黒に金色の装飾がある鞘に納められた武器をローブの中に隠しボス戦の準備を始めた、十分な休憩の後ボスがいた場所へ移動する、まずはシールド魔法と身体強化の魔法を使うそれからたまが使える最高威力の遠距離攻撃魔法を発動する。


「フレイムサイクロン!」


ボスを中心に炎の竜巻が発生し周囲の木々を含めて業火で焼き尽くした。


「最初のダメージは十分よね」


魔力回復薬を飲み次の魔法を発動しようとした時、ボスは目の前まで迫っていた。


「アイスバレット!」


ボスは氷の礫を盾で受けながら接近し二本の剣を振り下ろす。


「アイスジャベリン!」


剣での攻撃はたまのシールド魔法を破壊したがアイスジャベリンがたまの足元とボスの胸につっかえ棒のような形で当たり剣はたままで届かなかった、だがアイスジャベリンの先はボスの胸に少し穴を開けただけだ。


「硬いわね、でも殻は少し破れた、次はフレイムバースト!」


炎の爆発でボスを吹き飛ばし距離を取ると次の魔法を準備する、シールド魔法をかけなおし攻撃魔法を使おうとした時には目の前に迫ってきている、先程の魔法で盾を持っていた腕が吹き飛び胸の穴も少し大きくなっていた、羽が燃えて機動力が落ちてなければ間に合わなかっただろう、二本の剣がたまに襲いかかる、後ろへ逃げると判断したボスは思い切り踏み込んできた、たまは逆に懐へ飛び込み胸に空いた穴に短剣を突き刺す、ボスの剣は空を切っている、穴に深く突き刺さった短剣を放し魔法を放つ。


「ブリザード!」


吹雪でボスとの距離は取れた、ボスは攻撃してこず苦しみながら短剣を抜くのに必死になっていた、体が徐々に凍ってきているにも構わず呻き声のような声をあげながら剣を放し両手で短剣を引き抜こうとしていた。


「相当嫌なのね、このまま行かせてもらうわ、ウインドカッターハリケーン!」


右手でブリザードの魔法を使いながら左手で魔法を追加で放つ二重魔法、これもたまが新たに習得した攻撃方法だ、ボスの体を風魔法が切り刻み短剣が抜けた時にはボロボロで戦う力は残っていなかった、傷口意外に口や目からも青い血が流れている。


「猛毒の短剣が効果的だったようね」

「ギギ、ギーー!」


苦し紛れに雷の魔法攻撃を放ってきたがフォースシールドを破壊しただけでたまには届かなかった、力尽きたボスはバタリとうつ伏せに倒れ動かなくなる、こうしてボスの討伐が完了したのだった、ボスが倒れている焼けた場所に歩いて近寄ると、地面に落ちている短剣を拾い上げる、刀身からは紫の雫が地面に落ち土を溶かしていた鞘に納めるとボスの死体を確認する。


「盾は壊れてるわね、この剣は私には使えないけど一応戦利品よね」


ボスの死体の横にリングが一つ落ちているのを発見し拾い上げる。


「アナライズ!雷の魔導リングか、そう言えば雷の魔法使ってたわね」


たまはこのリングで雷魔法を新たに使えるようになった。


「ボス戦はかなり危なかったけど勝ちは勝ちよね」


ボス戦に勝利し山小屋へ向けたまが去った後、ゼムがその場所に現れる。


「予想以上に成長してる、後の二人ももうすぐか、そろそろ最終試練の用意が必要だな」


ボスの死体を消すとゼムも姿を消した。

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