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第七十話

翌日からダンジョン探索を始めた、この国のダンジョンは町の北側にある、入り口に繋がる通路には兵士もいるが検問はなく軽く会釈する程度で通過できた、ダンジョン入り口には探索者のパーティもいるが数は少ない、その理由はダンジョン内を徘徊するモンスターがアンデッドだからだ、アンデッドはドロップ品が少なく質も悪い、もちろん高位のアンデッドなら高価なドロップ品もあるが下層まで行くには食料や回復薬も必要で危険を考慮すると挑戦する者は少ない。


「スケルトンやゾンビが多いな」

「魔力は温存しておいてくれ」

「打撃武器も持ってるんだな」


バルターは金棒のような武器を振り回しスケルトンを粉砕している、浄化魔法で簡単に倒せるが探索者が多い浅い階では使わないようにして進んだ、三十階辺りで他の探索者は鉱石のドロップを狙いロックゴーレムやアースハンドを倒していた、たま達はさらに地下深く進み四十階に到着していた。


「食料はまだある?」

「大丈夫だ」

「あまり金になるものは無いな」

「そうね、フロアボスはどの階から出るの?」

「六十階にいるそうだ」

「まだまだ先ね」

「ロックゴーレム狩りが正解か?」

「もう少し先へ行ってみよう」


モンスターはあまり強くないが物質系がたまに現れるくらいでこの階層でも多くはアンデッド系が徘徊している、バルターが金棒で粉砕し先へ進むと五十階のボス部屋で休憩することにした。


「三人でよくこんな深い階までこれたな」

「徘徊してるモンスターが他のダンジョンより弱いからな」

「食料的にはそろそろ引き返さないといけない階だぞ」

「そうね、休憩が終わったら引き返しましょう」

「ロッシュの転移の指輪は使えないのか?」

「使用回数があるからな」

「そうか、今はまだ使わない方がいいな」


軽い食事とお茶を飲んでいるとズズ、と何か音がした。


「ん?」


ズズッ、ズズッ壁が少し動いていると分かった、三人は警戒する。


「ここフロアボスの部屋だよな」

「討伐後は安全なはずだが」

「ボスが復活したのかも」

「このタイミングでか!」


壁が動き中から小さな人の形をした何かが出てきた。


「ふー、やっと見つけた、おいお前ら、こっちへこい」

「子供?」

「誰だ!」

「敵じゃない、他の奴に見つかるとまずいんだ早くこい」


怪しいと思ったが敵意を感じなかったので少年の手招きに応じ壁に空いた隠し部屋に入ってみた。


「ここは何の部屋だ」

「狭い部屋だな、その装置は何だ?」

「行くよ」

「え、動くの」


少年が手をかざし魔力を込めるとリフトのように下層へ移動を始める、入ってきた壁は自動的に復元され隠し部屋には入れなくなった、部屋の動きが止まると扉が開く。


「着いたぞ」

「ここは?」

「最下層だ」

「最下層!と言うことは」

「そう、このダンジョンの創造主古竜のゼムだ!」

「古竜だと!子供にしか見えないんだが」

「ロッシュ失礼ですよ!お招き頂きありがとうございます!」


たまが少年の姿をした古竜ゼムに頭を下げる、他の二人はまだ信じられない様子だった。


「よいよい、見た目がこれだからな」

「それで私達をここに招いた理由を聞かせていただけますか?」

「お前達はクレイの仲間だろ?」

「クレイ様をご存知なのですか!」


たまは突然出てきた恩人の名前に驚き聞き返してしまった。


「誰だクレイって?」

「俺とたまにとっては恩人で、とてつもなく強い魔法戦士の名前だ」


ゼムがたまの問いに答える。


「知ってるよ、本当はクレイに力を貸す予定だったんだがな」

「クレイ様がここに来るのですか?」

「いや、それは分からん、まあ来たらまたその時だ、とにかくついてこい」


奥の建物に入るとテーブルに紅茶とお菓子が並べてありゼムはソファーに座るとたま達にも座るよう促した、紅茶を飲み話を続ける。


「さて、見たところお前らはクレイの仲間にしてはとても弱いな」

「はい、今の実力ではここまで自力でこられないでしょう」

「そうだな、まあ六十階に置いたボスは倒せないだろう、そこでだ、古竜の試練で鍛えてやろう」

「ちょっと待ってくれ、俺達はやらなきゃいけないことがあるんだ」

「妖狐の母と姉を助けるんだろ?」

「そうです、ご存じでしたか」

「まあな、大丈夫まだ時間はある、ここで強くなった方が成功率も上がるぞ」

「どれくらいかかりますか?」

「3週間くらいかな」

「それくらいなら大丈夫か」

「ご褒美も用意してある、武具に装飾品だ、どれも一級品だぞ」

「分かりました、やらせていただきます」

「うんいい返事だ、じゃあ早速行こうか」


建物の奥にある扉を開けるとまるで外のような風景が広がっていた、木々が生い茂り山小屋のような建物が複数ある、入ってきた扉も他と変わらない山小屋の入り口になっていた。


「妖狐族は青い扉の山小屋、ホビット族は緑の扉の山小屋お前は白の扉の山小屋へ入れ」

「一緒じゃないのか」

「成長する能力が違うからな、それと扉の向こうにいる間は時間がほとんど経過しないから何日かかろうと気にせず頑張ってくれ、安心しろ、試練で死んだりしない」

「じゃあ行くか」

「分かりました、行ってきます」

「俺一人で大丈夫かな」


三人がそれぞれの思いを胸に山小屋へ向かい歩いて行った。

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