第六十五話
「クレイ様」
「シルフィーどうしたの?」
「浮遊戦艦を手に入れたら連れて行って欲しい国があるんです」
シルフィーが真剣な眼差しでクレイを見つめる、余程重要な国なんだろう
「なんて言う国?」
「浮遊島ハーシエル王国」
「浮遊島?ハーシエル王国?」
「そう、そこに友達が封印されているの」
「そんな国聞いたことも無いけどその友達の封印を解いて欲しいの?」
「そこまでは頼めないわ」
「どうして?友達なんでしょ?」
「そんなことをすれば聖王国、法王国、魔法国家ホルン、ノイマン王国これらの国全てが敵になるわよ」
「敵に!どうして?」
「封印されているのが先代大魔王の娘で現大魔王の姉に当たる悪魔族の姫イーリスだもの」
「悪魔族!」
「そうよ、魔力が非常に高い亜人種」
「どうして封印されてるの?」
「イーリスがこの星を侵略した宇宙人達と戦ったからね」
「宇宙人と!悪魔族は人間の敵なんじゃないの?」
「そう思われるのもしょうがないけど、でも宇宙人は今も衛星軌道上にある宇宙母艦からこの星を監視しているの」
信じられない話だがシルフィーが嘘をつくとは思えない、クレイはもう少し詳しく聞いてみる。
「じゃあ悪魔族ってのはこの星の亜人で、宇宙人から人間や亜人達を守ろうとしたの?」
「その通りよ、宇宙人もこの星のと同じようなタイプの星に住んでいたのだと思うわ、何らかの理由で星が滅び脱出した母艦がこの星を見つけたってわけ」
「悪魔族以外は戦わなかったの?」
「宇宙人と言っても種族は人間だから気が付かなかったのよ、高い技術力を持った技術者として慎重に国の上層部に入り込んだの」
「悪魔族だけが気が付いたのには何か理由があるの?」
「宇宙人が魔力を込めると赤く光るの、普通は青く光るでしょ?不思議に思ってそれでダンジョン創造主に確認したって聞いたわ」
「ティアやエルリックは悪魔と戦っていたと聞いたけど?」
「当時悪魔族の言うことを信じる者は少なかったからね、人間の国を侵略していると思われても仕方ないわ」
「みんなが戻って来たらシルフィーから詳しく説明してくれない?僕には真実かどうか判断出来ないから」
「ええ、いいわよ」
シルフィーの話は真実なのだろうが今まで怪しく思っていた悪魔族を信じるには何か証拠が必要だ、浮遊島ハーシエル王国に行ってみるしかないだろう、そんな事を考えているとしばらくしてプニムがマジックスライムのブラックに進化した、その後フォルト達が戻って来たので説明してもらうためシルフィーを呼び出した。
「クレイ戻った」
「今回も疲れました」
「みんな疲れている所悪いんだけど話を聞いてくれる?」
古竜のサキや精霊達も全員呼び出しシルフィーの話を聞かせた、精霊達の中では当然の事実であり今さら改めて話すことでも無いと言う雰囲気だったが、フォルトやクラリスはもちろんティアには到底信じられない話だった、エルリックも納得していない様子だ。
「信じられんわい、シルフィー本当なのか?そんな話し今初めて聞いたぞ!」
「悪魔と戦っていたティアにこんな話しをしても信じなかったでしょ?」
「そうじゃが、ぬううう」
「空に巨大な島が浮かんでいるのですか?」
「もしかしてアンチエイジングのカプセルも宇宙人の技術か?」
ここまで見守っていた古竜のサキが静かに話し始める、フォルトやクラリスも聞きたいことがあるようだが黙って聞いている。
「宇宙人はダンジョンに入れないよう規制しています、この星の人々が滅ぼされていないのはそのためです」
「じゃあこれからも滅ぼされずに共生して行くのですね?」
「聖王国や法王国ではこの星の多くの人々が侵略者の奴隷となっています、とても共生とは言えません、将来的には他の国でもそうなるでしょう」
「そんな、俺達はどうすりゃいいんだ」
「悪魔と協力するしか無いのでは?」
「儂は無理じゃぞ」
ティアは腕組みし反対する、だが古竜のサキからも改めてクレイに依頼された。
「クレイ様、我々古竜や精霊達は宇宙人の排除を望みます、ハーシエル王国を地に落とし宇宙人の宇宙母艦を破壊してもらいたい」
「地上にいる宇宙人の全てを排除するのは無理じゃない?」
「宇宙人と言っても人間ですので宇宙母艦やハーシエル王国から支援が受けられ無ければ脅威ではありません、この星の人々を支配する力は失われます」
「やるしかないか」
「うーーん、儂はどうすればいいんじゃ」
「悪魔族と話してみて納得出来なければ不参加でもいいよ」
「う、ぬぬぬ」
「とにかくハーシエル王国に行ってみよう」
話しが終わりプニムを回収すると起動してもらった転移装置を利用し地上に戻った、ティアは頭を抱えうーーんうーーんと考え込んでいる、宿敵とも言える悪魔に協力するのはどうしても難しいようだ、エルリックも納得はしていないが主であるクレイの指示に従うと伝えてきた、ダンジョンを出ると今日は赤猫亭に泊まり翌日ゲンの工房へ向かった。
「すみません」
「おう、出来てるよ入って」
「お邪魔します」
ゲンとギエモンがブースターのある場所へ案内してくれた、そこには銀色に輝く大きなブースターが完成し置いてあった。
「どうだ!こいつは凄いぞ設計以上の性能を持たせてある」
「これを使う浮遊戦艦を見てみたいもんだ」
「ありがとう、クリン確認してくれ」
クリンがブースターの性能と重量それに形を調べ始める数分で完了し問題ないと結果をクレイに伝えた。
「性能も大きさも問題無いようです、お金は足りましたか?」
「十分だ、受け取りのサインをここに書いてくれ」
「はい」
「それでどうやって持って帰るんだ?送ろうか?」
「いや、アイテムボックスに入れます」
「これが入るのか?大き過ぎるだろ?」
笑っていたゲンはクレイがアイテムボックスにブースターを収納する所を目の当たりにし目を丸くして驚いていた。
「じゃあまた用があれば依頼してくれ、ギエモンから病を治療してくれた話を聞いた、ありがとよ」
「クレイ殿、本当に感謝するまたゲンと仕事が出来るとは思わなかった」
「こちらこそ高性能のブースターをありがとうございます」




