第五話
目を閉じ再び目を開けると生命維持カプセルの中だった、緑のランプが点滅しているのを見つけ近くにいた老人が慌てて近寄りタッチパネルを操作し始めた。
「やっとお目覚めか、待ちくたびれちまったぜ」
「フォルトさん?」
「そうフォルトだ、ずいぶん変わっちまっただろ?」
左腕の肘から先が喪失している足もうまく動かないのだろう膝や足首が変形してしまっている。何より老人の姿に驚いた。
「どうしたんですか?何があったんですか!」
「クレイが生命維持カプセルに入ってから何年過ぎたと思う?150年だ、信じられないだろう?だが事実だ」
「でもアンチエイジングすればこんな姿にならないでしょ?」
「エネルギーが足りなかったんだ、お前のカプセルだけはなんとしても守り抜いたがな」
「そんな、どうして」
「帝国に国が滅ぼされたんだ、俺達も戦ったが勝てなかった、生き残った兵士や俺達探索者は帝国の傭兵として徴兵され戦争に参加させられた、俺はこのありさまで軍を追い出されここに戻って来たが他の奴らはみんな死んじまった」
「そんな」
「この体じゃ今さら治療も出来ない、だがクレイお前が回復して本当によかった、これでみんなのところへ逝ける」
「そんなのダメです!僕が魔法で治します!」
「肘から先が無いんだぜ?再生させるには最高レベルの回復魔法が必要だそんな奴は帝国にもいない」
「大丈夫です、僕は進化の秘石で進化した人間なんですから」
そう言うとカプセルから出てフォルトに手をかざす、どの魔法を使うかは頭の中に自然と浮かんできた。
「リジェネレーション!」
フォルトの体が淡い光に包まれ失った手が再生されて行く、曲がった膝や足首も元の形に修復された。
「クレイ!こんな魔法いつ覚えたんだ?」
「今覚えました、体はこれで大丈夫ですけどそれは契約魔法ですか?」
首輪のように魔法で印されている紋様を見てそう聞くとフォルトが頷いた。
「そうだ、帝国に逆らえないよう奴隷契約が施されているんだ」
「ならそれも解除しましょう」
「出来るのか!ディスペルマジックじゃダメなんだぞ」
「契約魔法は呪いに近い魔法ですから解呪の魔法を使います」
フォルトの首に印された魔法の紋様に手をかざし魔法を使う。
使う魔法は自然に頭の中に浮かんでいる。
「アンチカーズ!」
クレイの手から放たれた魔法が奴隷契約の紋様を打ち砕き印が綺麗に消え去った。
「まじでか!最高レベルの魔法師がかけた契約魔法なんだぞ」
「その契約魔法をかけた魔法師より僕の方が高レベルなんですよ」
クレイは自分のステータスを見せるため近くにあった携帯端末を操作する。
「あれ?レベル28だっておかしいな」
端末の故障かもと考えて自分自身に解析魔法を使う。
「アナライズ!」
クレイの魔法で表示されるステータスは通常ではあり得ない数字や記号が並んでいる、魔法レベルも最高値の999ではなくSSSと表示されている。
ステータスをフォルトにも見せると驚いていた。
「数字が全部異常だな」
「そうですね、数字と記号が混じって読めませんね」
「端末じゃ読み込めないから進化前のレベルのまま更新されてないようだな」
「アナライズの魔法は相手のレベルによって表示されるかどうか決まるけどクレイのは誰も表示できないんじゃないか?」
「端末の情報がアナライズの魔法で表示されるようにカムフラージュの魔法を掛けておきます」
「そんなこと出来るのか?出来るならそれがいいだろうそうしとけ」
カムフラージュの魔法を使いアナライズの魔法で表示される数値を確認する問題ないようだ。
「あの、僕の両親はどうなったんでしょうか?」
「すまない、俺では全てを守り切るのは不可能だったんだ」
なんとなく予想はしていたがやはりアンチエイジングを受けられずにすでに亡くなっていた、両親からの手紙が何通か残されておりどれも俺を心配する内容だった泣きながら読み終えると大切にしまう。
「それじゃフォルトさんはアンチエイジングのカプセルに入ってください」
「エネルギーが足りないと思うぞ」
「僕がダンジョンで魔法石を集めてきます、絶対にフォルトさんを元に戻しますから」
「もう終わりにしようと思ってたんだがお前を一人には出来そうにないな、浅い階層で少しずつ集めるんだぞ」
「分かりました任せてください」
フォルトをアンチエイジングのカプセルに入れ30代まで若返らせる設定をし実行、完了まで18日と表示された。