第五十七話
砂猫亭に入り夕食にする、サンドリザードの串焼きやイエローリーフのサラダ、オアシスに生息する鳥の卵を使ったオムレツを食べた、どれもこの国でしか食べられない料理でお腹一杯食べたあとクレイの部屋に集まり今後の話しを始める、まずは新たにテイムしたエルリックをみんなに紹介した。
「新たにテイムしたダークロードのエルリックだ」
「ダークロード!上位モンスターじゃないか、よくテイムできたな」
「エルリックだ」
エルリックが会釈するとフォルトとクラリスが驚いた。
「言葉が、私にも言葉が分かりました」
「俺もだ!」
「一定レベル以上のテイムモンスターとは言葉が通じるようだね」
「プニムは?プニムも話せるのか?」
「プニム何か言ってみて」
プニムにはクラリスが拾っていたウイングタイガーの肉やオーガの肉を食べさせていた、クラリス達が注目するのでプニムが話してみせた。
「おいしい です」
「ほんとだ話せるな」
「話せますね」
「言葉が分かるとはのう、上位モンスターに成長しとると言うことか」
プニムは目の前の肉を消化するのに夢中でクラリス達と言葉が通じても気にしていないようだった、フォルトが話をエルリックに戻す。
「エルリックはあの城の王様なのか?」
「そうだ、悪魔に負けるまではこの辺りを統治していた」
「カンド王国は?」
「我の封印後に建国した国だろう」
「城にあった魔法陣は?」
「悪魔が書いた物だろうな、当時は悪魔が世界の半分を支配していた」
「ティアの頃はどうなの?」
「儂の頃は3分の2じゃな」
「今は暗黒大陸だけだよな、何があったんだ?」
「竜王国じゃ、儂を封印した後竜王国に攻め込んで返り討ちにあったんじゃろう」
「悪魔が氷の城にしたのか?」
「我を封印するのに必要だったんだろう」
「じゃあ封印が解けた今はもう普通の城になっても良かったのか?」
「いいや、氷の城から流れる水がオアシスに流れ込んでおる、氷の城が無ければカンド王国は砂漠に埋もれるじゃろうな」
「我の時代も砂漠が少しずつ広がっていたからな」
「悪魔が砂漠化を止めたの?」
「偶然じゃろう、悪魔がそんなことをするとは思えん」
プニムが肉を消化し終わったようなのでエルリックの話は一旦終了する。
「食べ終わったみたいじゃな」
「じゃあ明日からダンジョンに入るから、今日はゆっくり休もう」
「おう」
「はい!」
「うむ」
「じゃあ解散!」
フォルトとクラリスが部屋を出て行く、ティアはクラリスの肩に止まって一緒に出ていった、最近二人は仲がいいようだ、エルリックは人形に戻りプニムは鞄に入って眠りについた、そして翌日朝食を食べダンジョンに出発する入り口は町を出てオアシスの西側にあった、出入りを管理する兵士に携帯端末を見せ通してもらう。
「高レベルの探索者だな、期待しているぞ」
「頑張ってきます」
かなり大きな入り口で共和国のダンジョンを思い出すが探索者の数はかなり少ない、調査員として氷の城に向かった者が多いのだろう、ダンジョンに入ると外とは違い空気が冷たかった、明かりも薄暗く石造りの床をコツコツと歩く足音が響いている、階段の位置をクリンに表示させ最短ルートで移動する。
「五十階のボスまで討伐完了してるんだよな」
「データによればそうだね」
「魔法石を集めるのですよね」
「うん、積極的に倒して行こう」
スライムやスケルトンと戦いながら下層へ移動する、二十階を過ぎた辺りからアンデッドモンスターが多くなってきた、薄暗さもありグールやゾンビが突然襲ってくると恐怖を感じる。
「やっと三十階か」
「モンスターが多いですね」
「探索者が少ないせいじゃろうな」
三十一階以降で出没するゾンビファイターやスケルトンソルジャーは他のダンジョンで遭遇する時より強い、アンデッドが強化される特性のダンジョンなのだろう、四十階までは苦戦するようなモンスターは襲ってこなかったが四十一階以降はブラックグールやナイトスケルトンが強力な攻撃を繰り出しクラリス達では簡単に倒せなくなっていた。
「アンデッドのスピードじゃねーな」
「炎が弱点なのが救いですね」
「回復魔法をアンデッドに使えばダメージを与えられるのか?」
「ダメージは与えられるけど魔力消費量を考えれば攻撃魔法の方が効率的だよ」
「そうじゃ、アンデッドには炎が効率的じゃ」
「まだ中層だから頑張ろうね」
「そうだな」
五十一階からは霊体モンスターのゴーストやレイスも出没するようになった、物理攻撃が無効なためクラリスは聖属性の魔法で攻撃するが、まだ威力の弱い魔法しか使えないため苦戦している、フォルトの弓は属性攻撃が可能で霊体にも十分ダメージを与えられている。
「やっと六十階か」
「シルバーグールです」
「行くよ!」
「おう」
部屋の中は薄暗かった、広い部屋の中央にうずくまっているのがボスモンスターだろう、赤い目だけがこちらをにらんでいるクレイの魔法でフォルト達の体が淡い緑色に光る。
「ステータスアップの魔法だよ」
「行きます!」
「僕も行くよ!」
クラリスとクレイが駆け出すとモンスターから黒いムチが飛び出した、クレイは避けながら前進するがクラリスは盾で受けてしまう。
「クラリス、無理なら下がって!」
「はい!」
黒いムチがクラリスに集中するその攻撃スピードは凄まじく盾を構えたクラリスの背後からも襲いかかっている。
「ウインドカッター!」
クレイの魔法で黒いムチを切断するその隙にクラリスが後退した。
「トルネードシュート!」
「ヒールウォーター!」
フォルトは弓で援護しティアはクラリスに回復魔法を使う。
「トリプルスラッシュ!」
クレイの剣がモンスターを攻撃するが黒いムチで防がれている、次々と繰り出す黒いムチを剣で捌きながら少しずつ接近するとムチのスピードがさらにアップする、クレイの剣もスピードを増しモンスターを追い詰める。
「速すぎて狙いが定まらない」
「クレイに任そう儂らでは無理じゃ」
高速で繰り出されるムチと剣が火花を放つ、ムチの本数が減りその分硬度が増しているようだ。
「サンライトスラッシュ!」
聖属性の剣技がシルバーグールの両腕と背中から生えている黒いムチを切り飛ばす、ムチが再生される前にもう一歩踏み込み左肩から真っ二つに切り下ろした、苦痛の叫び声を上げるとキラキラと消えてグールの肉をドロップした。
「この肉はちょっと食べられないな、プニムなら食べられるか」
真っ黒に赤い血が滴り落ちる肉をアイテムボックスに収納するとフォルト達が集まってきた。
「クレイすまない」
「ちょっと強かったね」
「この階のボスは倒せると思ったんだがな」
「ダンジョンによって特性が違うから仕方ないよ」
「まだまだ鍛練不足です」
「じゃ、次行こう」
七十階までのモンスターはグールソルジャーとグールナイトが強敵でティアが弱点の火炎魔法でダメージを与えフォルトとクラリスで仕留めて進んだがかなり強敵のためみんなの疲れが見え始めている。
「七十階、やっと到着だ」
「一度町へ帰ろうか」
「私はまだ大丈夫です」
「でもだいぶ辛そうだよ」
「儂も一度帰った方がいいと思うぞ」
「ボスはスカルドラゴンです」
「スカルドラゴンは強敵だしやっぱり一度帰ろう」
「そうだな、クラリスそうしようぜ」
「承知しました」
まだ戦いたいクラリスを説得し一度町に帰ることになった。