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第四十九話

その日はそのまま日没を迎えた、夕食に携帯食料を食べテントで眠ると翌日も簡単な朝食を食べた後でブラックラビットを追いかけまわしていた。


「ちくしょー!」

「もう少しなのにね」

「作戦を考えよう、得意な魔法を教えて」

「私の魔法は木を操る大地の魔法だ」

「私は風の魔法」

「僕は」

「あー、君は魔法戦士だろブラックラビットを探せるだけで十分だよ」

「そう、じゃあ作戦だけどフランが風魔法をブラックラビットの上空から地面に浴びせてくれる?エノンは僕が素早く近寄れるように道を作ってそれで僕が近付いて紐で縛るよ」

「あのスピードだぞ!近寄れるのか?」

「僕は魔法戦士だよ、魔法師より力もスピードもあるからね」

「それもそうか、じゃあそれでやってみよう」

「分かったわ」


昼過ぎにブラックラビットを見つけ作戦の通り実行する、フランの風魔法は思っていたより強力で風圧により動きが鈍ったブラックラビットは魔法から逃れようと必死に前進している、エノンの魔法で作った真っ直ぐな道をクレイが疾走すると、魔法糸で脚を縛り捕縛に成功する。


「本当にやりやがったぜ!」

「やりましたね」

「エノン、こいつを入れる籠を作れる?」

「任せろ」


魔法で木の小さな檻を作りブラックラビットを入れるとゆっくり持ち上げた。


「これで試験は合格だな!」

「そうでもなさそうだよ」

「え、なになに」


クレイ達を囲むように他の魔法師が集まっている、横取りが目的なのだろう。


「集まって!」

「こいつら横取りか!」

「大丈夫、クリエイト魔法ドームハウス!さ、入って!」


ドームハウスに入り扉の鍵をかけると中にあるテーブルと椅子に案内した。


「クレイ!あいつら入ってくるんじゃないのか!」

「大丈夫、鍵もかけたし」

「いや、そー言う問題じゃ無いだろ?入って来ないのか?」

「二級魔法師じゃドームハウスを外から壊すのは無理だよ安心して、さ、お茶でも飲んで」


紅茶を淹れるとアイテムボックスからお菓子を出し中央に置いた、エノン達は入り口を注視していたが入って来ないのでとりあえず椅子に座る。


「全然音もしないし入って来ないな!」

「こんな魔法初めて見たよ」

「エノンも籠とか檻とか作ってたじゃん」

「そうだけど」

「これは土や石を操って作るんだよ、原理は同じさ」

「本当に安全なんだな?」

「もちろん、今日はここに泊まって明日の正午ゴールしよう」

「そうだな、そうするか」

「うん」


三人は紅茶を飲みお菓子を食べ始めた、外では必死に扉を開けようと魔法師がドームハウスを攻撃しているが傷一つつけられずにいた。


ーーーーーーーーーー

「ティア様、今です!」

「ストームブレス!」


ブラックラビットが風に煽られ後ろに吹き飛ぶと岩に頭をぶつけ気絶している。


「ロッシュさん行きますよ!」

「おう」

「押さえて!」


ホビットのロッシュが首を押さえ込むと妖狐のたまが素早く脚に枷を嵌めた。


「やった!」

「籠に入れるぞ」


籠の中でもまだ意識がなくぐったりしているが死んではいない。


「やっと捕らえたのう」

「また横取りされないよう気を付けましょう」

「うむ、隠れ家に使える岩場へ急ごう」


今回は周囲に集まってくる魔法師を事前にティアが排除してから捕らえたのでまだ知られていない、隠れ家になる場所もあらかじめ探しておいたので移動し一晩過ごす。


「問題は明日じゃな」

「きっと横取り魔法師が集まってますよね」

「儂とたまで両側を守りながら前進するロッシュは警戒しながら進むのじゃ」

「分かった」

「ここは安全です、明日に備え今日は休みましょう」

「おう」


翌日、ブラックラビットを持ちシールドドームの出口へ向かうと三組の魔法師が集まっていた、捕獲済みの組も近くに来ているのだろうがまだ誰も出口でに進めず息を潜めている。


「最短距離で行くぞ」

「はい、正午まで10分です」

「うむ、儂が右たまが左で良いな、行くぞ!」


ティア達が駆け出すと一斉に襲いかかってきた、ティアは杖をかざしストームブレスでなぎ払う、たまはフォースシールドで攻撃魔法を受け止める、その間をダッシュで駆けるロッシュだが後ろからエルフが迫る。


「サンダーバースト!」


ロッシュの足に魔法が当たり転げた、だがブラックラビットはしっかり持っている。


「ロッシュ!」


ティアが救出に向かおうとするがファイアボールが放たれ防御している間に追い付かれてしまった。


「放せチビが!」


ロッシュが蹴り飛ばされる、必死に籠を守ろうとするがとうとう奪われてしまった。


「邪魔だ!向こうへ行ってろ」


足が痺れて動けないロッシュを蹴り飛ばしニヤニヤしながら籠の中を確認している。


「くそー、また俺のせいで!」


ロッシュが泣きそうな顔で地面を叩くと横取りした魔法師が出口へ向かおうと走り出すだが、次の瞬間エルフ達の前に三人の姿がいきなり現れた。


「本当に転位した」

「な、なんだお前ら!」

「アイスバレット!」


氷の弾丸が籠を奪ったエルフに打ち込まれた 、エルフは白目をむき仰向けに倒れる、クレイは籠を拾いロッシュの元へ向かう。


「キュアウインド!はい、これ君のでしょ」

「ありがとう」

「エノン、フラン、籠を持ってこの人と一緒に行って!」

「クレイは?」

「泥棒退治だ!」

「分かった、行くよ立てる?」


エノンとフランがロッシュを支え出口へ進んだのを確認し振り返る。


「妖狐族だね、加勢するよ」

「え、はい!」

「アイスバレット乱れ撃ち!」


四人の魔法師へ二発ずつ氷の弾丸を撃ち込む魔法で相殺しようとするが突き抜け命中すると四人とも仰向けに倒れ動かなくなった。


「ティア、手伝おうか?」

「クレイ、無用じゃ、フレイムブレス!」


ストームブレスにフレイムボールを合わせ撃ち込むと魔法師四人の体に命中し黒こげになって倒れた。


「クレイ、魔力は抑えろと言うておいたはずじゃぞ!」

「抑えたさ、アイスジャベリンじゃ無いだろ」

「そんなの撃ったら全員死んでしまうわ!」

「ティアこそあいつら丸焦げだぞ!死んでないか?」

「手加減しておるわ」

「あのー、そろそろ行きませんか?」

「そうじゃな、行くか」

「行こう」


差し出されたクレイの手をたまが握ると三人でエノン達の待つ出口へ走って行った、その後も三組がブラックラビットを捕らえ到着した、横取りの魔法師達はまだ気絶している、その間にさらに遅れて捕縛に失敗した二組が到着し合格者は五組十五名、不合格二十六名、内六名は未帰還と発表された。


「合格者は魔法闘技場へ移動し明日、戦闘形式で準特級魔法師と戦って最終合格者を決定します以上」


一旦町へ戻り協会の宿泊施設で一晩過ごすと翌日バスに乗り移動する、魔法闘技場はホルンの町の北にあり観客席には多くの人が見に来ていた、闘技場は観客席と戦闘エリアに分かれており観客席には被害が出ないよう強力なシールド魔法が掛けてあるようだ。


「ここで試合か、ワクワクするね」

「クレイだけじゃろうな、ワクワクするのは」

ーーーーーーーーーー

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