第四十七話
ティアとクラリスが手を振りベヒモスを見送るとクルマに乗り港町へ出発した、港町リンドではクラリスが乗船手続きを済ませすぐに出発する船があったので乗船する、部屋割りは前回と同じだ。
「チケット上手く取れたね」
「上級船室は高価ですので取りやすいんですよ」
「そうなんだ」
「食事は食堂で食べますか」
「そうだね」
食堂は賑わっていた、クレイはエビフライと海鮮スープ、クラリスはイカとタコの海鮮炒め、フォルトは深海牛のステーキ、ティアは渦巻き貝の網焼きをそれぞれ注文し食べた。
「珍しいな、エビフライか」
「こんな大きいの初めて見た」
「軍艦エビだな」
「フォルトはステーキ?」
「尾ビレに近い部位のステーキが旨いんだよ」
「へー」
「いい匂いじゃ、熱、熱」
「ティア美味しい?」
「最高じゃ、クラリスのもいい匂いじゃな」
「一口どうぞ」
「うむ、うまいのー」
プニムの分を少しアイテムボックスに入れ部屋で食べさせるプニムも美味しそうに食べていた、乗船から二日で到着した港町ギサンは魔法国家の港町らしく多くの魔法師が町を歩いていた。
「今日はこの街に宿を取りましょう」
「空いてるかな?たくさん降りたよ」
「見てきます」
クラリスが宿を探す間に町の地図をクリンにインストールする陸地側の壁はそれ程高くないこの近くには強力なモンスターはいないのだろう。
「活気があっていい町だな」
「この国は永世中立国だからな」
「魔法国家ホルンは魔法の最高研究機関じゃ、国立魔法師団は世界最強の魔法師が集まっておるこの国と戦争しようとは思わないじゃろ」
「なるほど」
「それよりクレイ、これから先は魔力を抑えておけよ」
「ラビット族のセリみたいなのがいるんだね」
「そうじゃ、特に魔法師協会内は要注意じゃぞ」
「クレイ様、宿が取れました」
「行こう」
縞猫亭と言う宿に入り一晩過ごす、翌日町をクルマで出発すると乗り合いバスも複数台発車していた、ホルンの町へ行く人が多いのは学校があるからだろう。
「よく整備された道だな」
「あまりモンスターが出ないんだろうね」
「この分だと夕方には着きそうですね」
クラリスの予想通り夕方には到着し携帯端末からフリーの探索者と照会されるとすんなり門を通してもらえた、この街を囲う壁はあまり高くない、だがよく見るとシールド発生装置が取り付けられていると分かる。
「すんなり入れたな」
「まずは宿を探そうよ」
「そうですね、宿屋は向こうの通りのようです」
通りにはかなり多くの宿屋があったが空きはあまり多く無い、魔法師学校に入学の手続きにきた者や試験を受けにきた者、教師や魔法師協会の関係者達が宿泊しているようだ。
「三毛猫亭か」
「ここ空きがあるようです」
「じゃあここにしよう」
チェックインすると魔法師協会へ受験手続きに行く、ホールには多くの魔法師が手続きに訪れていた、列に並び順番を待っている。
「次の方どうぞ」
「受験手続きをしに来たんですけど」
「では現在の階級証を提示ください」
「初めてなので持っていません」
「それでは受験出来ませんのでまずは学園に入学してもらう必要がありますね」
「魔法師長ラウンさんの紹介状があるんですけど」
「拝見します」
紹介状を見せるとそれを持って奥の部屋へ行き別の担当者を連れてきた。
「紹介状は確認しました、三級のお二人と現在二級のティア様は問題ありませんがクレイ様は魔法戦士ですよね?」
「はい」
「いきなり一級を受験されるのですか?」
「はい」
「一級の試験は毎年死者も出る試験内容ですよ?」
「そうなんですか」
「それでも本当に一級を受験されますか?」
「はい」
担当者は険しい顔をしてクレイを見ている、魔法師ではない者が一級を受けるのが気に入らないのだろう。
「承知しましたでは手続きをします、ここにサインしてください」
手続きを進め受験票を受け取るとクレイ達はホールを出て行った。
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「上級試験管!あの者に受験させるのですか!」
「ラウン殿の紹介状があるんだ断れんだろ」
「しかし魔法戦士が一級試験など死にに行くようなものですよ」
「よほどの自信があるのかそれとも単なる怖いもの知らずか、とにかく忠告はした」
「本当に死んでしまった場合ラウン様に責められるかも知れません、試験内容を少し変更しますか?」
「いいや、それでは不公平になる」
「そうですか」
「それに一級の魔法戦士など誕生させては魔法師協会の威厳に関わるからな」
「死んでしまっても構わないと」
「魔法の専門職以外が受験するとどうなるか、いい見せしめになるだろう、手を抜かないよう関係者に伝えておけ」
「承知しました」
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