第四十五話
転移魔法で一階へ移動し王宮へ戻る、ダンジョンに入ってから二週間経過しており家に帰るとメイド達が編み上がった強化服を見せにきてくれた、それぞれの好みに合わせ模様を編み込んでいる。
「上手に編めたね」
「はい、教え方が分かりやすかったですから」
「クレイ様、ドロップ品は王宮でも買い取りしているようです」
「量が多いからギルドよりそっちのがいいかもね、じゃあ換金に行こう」
王宮の素材買い取り窓口で大量の兎の毛皮や兎肉を見せるとその量に驚きとても喜ばれた、しかも予想より高値で買い取りしてくれた。
「高額過ぎませんか?」
「この国では毛皮が貴重な素材なんです、こんな高級品は滅多にありませんから」
「それなら良かったです」
不要なドロップ品を売り払い家に帰るとメイド達が豪華な食事を用意してくれていた、クレイの好きなハンバーグは大きくほどよい柔らかさでとても美味しく大満足だった、食後にゆっくりお風呂に入り疲れを取るとふかふかのベッドで眠った、そして翌日。
「では、行ってきます」
メイド達に見送られダンジョンに入り転移魔法で八十階へと移動する。
「さて、頑張りますか」
九十階までは進化したオーガが多く現れた、パンチやキックの武技を使いクレイに襲いかかってくる、狭い通路では進化し巨大化しているオーガが思うように動けないようでロングソードを使い次々と切り倒して行く。
「これ配置ミスじゃないの?」
「クレイだから切れるんだぞ」
「そうです私達ではダメージを与えられず追い詰められてしまいます」
「ちょっと硬いだけなんだけどな」
大きなオーガを次々と簡単に切り倒し進むクレイの姿が仲間達には鬼神のように見えていた、九十階のボス部屋にたどり着くとクリンがプレートを読み上げる。
「キングトロールです」
「トロール種が進化した強敵だな」
「クレイ様」
「大丈夫、行くよ」
部屋に入ると巨大なモンスターが中央でトゲのついた巨大な棍棒を構えている、緑色の肌に金色の鎧を身につけ鋭い目で睨んでいた。
「威圧感凄いな、クレイじゃなきゃ上手く動けないぞ」
「本当にクレイ様は凄い」
フォルトとクラリスが見つめる先でクレイが戦っている、巨大な棍棒を盾で受け止めロングソードで切り返す、その度にトロールの体が傷つき血が流れ叫びながらまた棍棒を振り回す。
「あんな攻撃を盾で受けて吹き飛ばされないのは何でだ?」
「大盾のスキルね、私はまだ取得してないけど」
「そんなスキルがあるんだな」
戦闘はクレイが優勢に進めていたがダメージが蓄積されたキングトロールの体が発光しダメージが回復すると武技を使いだした。
「ブオーー!」
三連打を盾で受ける反撃する隙を与えず上段から棍棒を振り下ろし防御力を下げる技アーマーブレイクを発動、そして棍棒を両手で握り全力で撃つドラゴンクラッシュそれらを盾で全て受け止めロングソードで切り払う振りをして魔法を放つ。
「サンダーバースト!」
キングトロールに命中し体が痺れ攻撃が止まるとロングソードで切り付ける。
「サンライトスラッシュ!」
「グガアーー!」
棍棒を持った右手を切り飛ばし更に追撃する。
「アッパースイング!」
逆袈裟に切り裂くとキングトロールはフラフラと後ろへ下がった、前進し連続で剣技を使う。
「ベアクラッシュ!」
「ブベガーーー!」
上半身を切り付け後ろに倒れるキングトロールは絶叫しキラキラと消えていくと、後には美しい指輪が落ちていた。
「また指輪か、アナライズ!」
トロールリングの性能は攻撃のクリティカル率が上昇するようだ。
「指輪か?」
「そう、フォルト使う?」
「私は先ほどいただきましたからフォルトどうぞ」
「そうかなら」
「よし最後まで行くよ」
100階まではオーガとトロールが何度も襲ってきた、ドロップ率は低いがボスがドロップした指輪と同じ物を複数回収できたのはありがたかった、そして遂に100階に到達する。
「古竜です」
「やっぱり最後はそうなんだね」
部屋に入ると小さなお婆さんが待っていた。
「クレイだね、いらっしゃい」
部屋の奥に案内され緑茶を出される茶菓子は水羊羹だった。
「ジン様から協力するよう聞いておる」
「モンスターテイマーのスキルを取得したんですけどどうやったらテイムできますか?」
「モンスターテイマーか、ふむ友好的なモンスターに出会う必要があるの」
「ダンジョンにいますか?」
「残念だがダンジョンのモンスターはテイム不可能じゃよ」
「そうなんですか」
「ふむ、一匹儂が用意してやろう待っておれ」
そう言うと部屋を出て行き一時間ほどで戻ってきた、小さな檻に青い半透明のスライムが入っている。
「ポワラ山で見つけてきた、こいつで練習してみよ、心を通わせるよう会話をするのじゃぞ」
「ありがとうございます」
「ふむ、お供の者は鍛練じゃな、ついてくるがよい」
「やっぱりか」
「行ってきます」
クレイも檻に入ったスライムを持って部屋の外に出る、とても小さなスライムで手のひらに乗せられる大きさだった。
「スライム檻から出していいんだよね」
檻から出すとプルプルとふるえている会話をしようと話しかけてみる。
「えーと、初めましてクレイです」
「プニプル」
「スライム語は分からんな」
「プニ」
「うーん、エサを与えてみるか」
アイテムボックスから魔法石と薬草を出して与えてみたが食べない。
「違うのか、そうだ!進化の秘石はどうか」
与えてると食べようとはするがまだそのレベルじゃないのか食べてくれない。
「やっぱり新鮮な肉系か」
ゴールデンボアの肉を与えるとピョコンと包み込み食べ始めた。
「そうか食材でいいのか」
アイテムボックスにあるドロップ品の食材を小さく切り与えるとどんどん食べてくれた、そして遂に進化の秘石を食べた。
「おー、やった進化だ!初めて見た」
光っていたスライムが綺麗な丸い青いスライムになった。
「話せるようになったか?」
「オイシ、カッタ」
「おー、話せる」
「ボク、キミ、スキ」
「うんうん、心通った会話」
「ナマエ、ツケル」
「名前か、プニムでどうかな」
「ボク、プニム、ヨロシク」
プニムの額に魔法文字が現れる。
「これでテイム成功かな」
携帯端末で確認するとテイムモンスターの名前にプニムと表示された種族はマジカルスライムとなっている。
「マジカルスライムに進化したのか」
詳しく調べてみるとスライムはモンスターや動物の肉を食べると成長するそうだ、そこでまだ食べていない種類の肉を食べさせるとレベルアップした。
「ちょっと強くなったね」
「プニム、ツヨイ」
クレイ達の食材でもあるのであまり多く食べさせられない。
「生きたモンスターを食べてくれるようになればいいんだけどな」
プニムの育成方法を考えているとフォルト達が帰ってきた、毎回のことだがかなりボロボロになっている。
「お帰り、だいぶ疲れてるね」
「今回は特に疲れた」
「少し休ませてください」
「どうやらテイム成功したみたいだね」
「はい」
「進化したのかい?」
「そうなんです、もっともっと強くしてやりたいんです」
「強いモンスターをテイムした方が早いと思うけどな」
「スライムはあまり強くなりませんか?」
「そんなことは無いぞ最強種まで進化すればドラゴンを補食できるくらいにはなるぞ」
「それは楽しみだ」
「今日は休んで行くか?」
「みんな疲れてるしそうさせてもらうか」
「賛成」
「ありがとうございます」
ダンジョン創造主の住むこの最下層には宿泊施設に温泉までありヘルシーだが美味しい食事を食べる、大きなベッドでゆっくり眠るとすっかり元気になった。
「では転移装置で帰ってくれるか」
「ありがとうございます」
「また来ておくれ」
「お名前を聞いてもいいですか?」
「レイラ」
古竜レイラにお礼を言い転移装置で一階へ移動するプニムはベルトにつけている小さな鞄に入れ持ち運ぶようにした。




