第四十話
ドワーフ村の入り口で門番に挨拶する。
「この前来た人間だな」
「そうです、村長の依頼が終わったので報告に来ました」
「そうか通っていいぞ」
村に入り村長の家へ向かう、村のドワーフの子供達は前に訪れた時と同じように珍しそうにクレイ達を見ていた、村長の家に入り報告を始める。
「鉱山の最下層に毒の呪いを使うモンスターがいました、奇病の原因はそいつの呪いです」
「呪いを使うモンスターか」
「魔法陣を壊したのでもう大丈夫ですよ」
「魔法陣は誰が書いたのだ?」
「あの辺りには古代遺跡があるのかも知れませんね」
「古代遺跡か」
「魔力を集める魔法陣でした、集まった魔力にアンデッドモンスターが引き寄せられ強力なアンデッドが発生したのでしょうね」
「退治出来たんならもう安全だな」
「アンデッド討伐で坑道が崩れちゃったから採掘再開には時間が掛かりそうです」
「まあしょうがねーな、ほれ頼まれてたインゴットと裁縫針だ受けとるといい」
ドワーフが作ってくれた裁縫針は銀色に輝く綺麗な針で長さや太さ別に分けられケースに数本入っていた。
「ありがとうございます」
「裁縫針はお前が使うのか?」
「裁縫マスタリーのスキルを持ってるんです」
「ほう、人間なのに器用なんだな、それでこれからどこへ行くんだ?」
「この後ジャイナ王国の王都へ行きます」
「気をつけて行けよ、またこの村にも寄ってくれ」
「はい」
報告が終わり鉱山の町ウエムへ再び出発する。クルマで移動する合間に少しずつ編んでいた強化服が完成した、次は武道着を編もうと魔力糸の太さを調整しているとクラリスがじっと強化服を見つめている。
「どうしたの?」
「クレイ様は何でも出来るのですね」
「クラリスも編んでみる?」
「私には難しいです」
「強化服は破れてない?」
「はい」
「破れたりほつれたりしたら教えてね、替えも編んであるから」
「ありがとうございます、次は何を編むんですか?」
「武道着に挑戦しようと思ってる、でも先にホワイトドラゴンの毛皮でコートを作りたいな」
「防寒着ですか」
「実際は暑さも寒さも両方防げるんだけどね」
「楽しみです」
「どこかの町でゆっくりしたいね」
「はい」
鉱山の町ウエムに到着すると魔法師長に会いに行き魔法師団と一緒に王都へ出発した、王都は鉱山の町ウエムから見てずっと東にあるがその中間地点にポワラ山と言うとても高い山があるため街道は南に大きく迂回している。
「オーガだ!戦闘準備!」
「クレイ俺達も」
「大丈夫そうだよ」
「なかなかやりますね、王国魔法師団」
魔法師団にとってオーガは強敵では無い、ファイアボールやアイスニードルが連続で発射され簡単に討伐された。
「あの数のオーガを簡単に倒すとはな」
「ロックオーガやアイスオーガも混じってたが、なかなかやりおるのう」
それからもゴブリンやオークが出没したがクレイ達の出番は無く魔法師団が討伐した、中でも団長と副団長は別格の強さで進化したゴブリンウィザードやオークソルジャーを相手に単独で倒していた。
「帝国や共和国の魔法師より強いんじゃないか?」
「戦力的にはインペリアルガードと互角かそれ以上だね」
「街道にしてはモンスターが強いのが気になるの」
「山岳地帯はモンスターの進化が早いのかもな」
街道を進むと城塞都市グラントがある、さらに南の法王国から侵攻されるのを防ぐ目的で作られた巨大な砦だ、クレイ達はここに物資の補給と休息を兼ね立ち寄った。
「魔法師長様お待ちしておりました!」
「法王国に動きはあったか」
「いいえ、何もありません!」
「いつ侵攻があるか分からんから注意は怠るなよ」
「はい!」
「彼らは我々の恩人だ失礼の無いようにな」
「承知しました!」
魔法師団と共に城塞内に入る、城塞内は兵士の宿舎と工房が主な施設で普通の町のように商店街や宿屋などは無かった、来客用の宿泊施設に案内され荷物を置く、兵士の宿舎を少し贅沢にしたような施設でベッドもテーブルもそれ程豪華では無かったが旅の疲れを取るには十分だった、少し休憩した後で案内係の兵士に城塞内を一通り案内してもらう。




