第三話
「準備はいいな」
「よし、じゃあ行こう」
会社の駐車場からダンジョンまで専用の車に乗って出発する、町を守る壁を抜けてすぐにダンジョンの入り口があったそこは想像していた入口とは違い巨大な入口だった。
「こんなに大きいんですか!」
「初めて来ると驚くよな、ここはだいたい入口の真ん中になる」
「大勢の探索者が出入りするのよ、どんな入口を想像してたの?」
「鍾乳洞の入口みたいなのを想像してました」
「ダンジョンてのは洞窟じゃない建造物だぜ」
「まるで巨大遺跡ですね」
「中に入るぞ」
ぞろぞろと中へ進み改めてその広さに驚く、天井までは5メートル以上はありそうだ床も歩くとコツコツ音がする石造りの床だった。
「もっと暗いと思ってました」
「そうだろ、魔力を帯びた壁のせいらしいぜ」
「そうなんですか」
「いたぞ」
リンゾの声で戦闘準備に入る初めてのモンスターはゴブリンだったクレイも剣を構えていたがフォルトの弓で先制しリンゾとシアが斬り込む流れるようなベテランの動きに目が追い付かない俺の出番はなくあっさり討伐された、モンスターは倒せば消滅し魔法石を落とすこれは魔力の結晶で地上でのエネルギー源になっている、これを政府が高額で買い取るほかにも貴重な金属などの素材をドロップする場合もありどれも高額で取引されている。
「みなさん強いですね」
「まだ上層だからね」
「中層までは楽に行けるよ」
シアとフーシェの言うとおり上層のモンスターはあまり強くなく余裕を持って討伐しながら進んで行った。俺の出番は全くない。
「よし休憩」
「この小部屋は結界が張ってあるから安心してね」
「ここまでは順調だな」
「あのー、僕はこのままでいいんでしょうか?」
「クレイにも経験値が入るからレベルが上がるまでこのままで大丈夫だ」
「分かりました」
「みんな最初は同じだから気にしなくていいわよ」
「ありがとうございます、ところでこのダンジョンは何階まであるんですか?」
「100階と言われているが誰も到達してないからなぁ、俺達も49階が限界だ」
「50階に何かあるんですか?」
「このダンジョンは10階毎にボス部屋がある50階のボスを倒すには俺達だけじゃ無理なんだ」
「そのために人員を増やしたのよ」
「クレイが戦力になれば倒せるかもな」
「頑張ります」
「まあ、時間はあるしじっくり行こうや」
「レベル100は越えてもらわないとね」
「100ですか!みなさんは?」
「みんな100越えてるわよ」
「どうりで強いわけだ」
「じゃあそろそろ行くか」
初日は15階まで到達し引き返した、このメンバーの戦い方はフォルトとフーシェが弓と魔法で先制攻撃しリンゾとシアが向かってくるモンスターを切り払う、役割が決まっている分予想外のダメージも受けないベテランらしい戦い方だった、翌日以降もクレイのレベル上げを目的にゴブリンやオークなどを倒し3ヶ月過ぎた頃にはクレイのレベルも28まで上がっていた、少しは戦闘も経験したがまだまだ魔法石やドロップ品の回収が主な役割にはかわりなかった、この日もドロップを拾い集めていると今までと違う奇妙な石を発見した。
「これも魔法石ですか?」
深い緑の縞模様があり大きさもいつもはピンポン球程度なのに対し野球のボールくらいだった。
「これは進化の秘石だな」
「レアですか?」
「こんな浅い階層でドロップするのは珍しいが中層以降ならたまに出てくる」
「これがあれば進化できるんですか?」
「クレイ、試しに使ってみたらどうだ?魔力を込めるだけだぞ」
フォルトにそう言われ秘石に魔力を込めてみるが量が足りないのか変化がない、もっと思い切り魔力を込めてみる。
「人間には効果ないのよ・・てあれれ?」
突然クレイが持っていた秘石が輝き出しす、徐々に光が強くなりクレイの体を包み込む。
「クレイそれを放せ!」
「え!」
秘石を放そうとするが間に合わないまぶしい光に目がくらみ急に力が抜けその場に倒れた。
「クレイ!クレイ!」
リンゾの声が聞こえる、仲間達が呼んでいる声がだんだん小さくなりそのまま意識を失った。