第三十四話
クレイ達はエリオン聖王国を出発し南へクルマを走らせる、数日で十字路の交差点に到着した。
東へ行くとエステリア帝国このまま南へ行くと港町だ、クレイ達はノーム族の村がある西へ向かう、少し荒れた道を数日進むと森が見えてきた、村はこの森の中にある。
「あの森の中にノーム族の村があるんだな」
「そうじゃ、砦があるはずじゃからそこで竜鱗を見せるんじゃぞ」
「アレクセイの鱗だね」
「他の竜鱗と何か違いはあるのか?」
「色が少し違うかな、アレクセイのは少し青色の光沢があるんだ」
森の手前でクルマを降りると歩いて森の中に入る、クルマはクレイが魔法でガレージを作りその中に停車しておいた、森ではゴブリンやオークなどのモンスターが出没したが今のクレイ達にとっては取るに足らない相手だった。
「普通の森だな」
「あれが砦か」
森が開けた場所にノームの砦があった、見張り役のノームが砦の上から周囲を警戒している、村にはこの砦を通らないと入れない。
「こんな森の中に急に近代的な建物があるとは驚きだな」
緑色の壁は明らかに金属製で人間の町を守る城壁より丈夫そうだった、上部には砲台がありこちらを向いている。
「そこの人間!これより先はノーム族の村だ!」
「古竜アレクセイの紹介でやってきました、これを見てください」
砦からノーム族の兵士がやってきて竜鱗を受け取り戻って行く、ノーム族は背が低く歩く後ろ姿は子供のように見える、しばらくして砦の中に入る許可が下り中へ入れてくれた、中は広く多くの兵士やスーツを着た人々が仕事をしていた、丸いメガネをかけたスーツ姿のノームと兵士が二人出迎えてくれ、お辞儀をし話しかけてきたきた。
「先ほどは失礼した」
「いいえ、構いません」
「ようこそノーム族の村へ、ここから先は彼女が案内します」
髪の毛を編み込んだ若い女性のノームがペコリとお辞儀をした。
「私はミーネですよろしくお願いします」
「こちらこそお世話になります」
砦を抜けるときれいに整備された道が続いているその向こうに高い壁が見えてきた。
「村を守る壁が見えてきました、壁の上はドーム状になってまして空からの侵入を防いでいます」
「村の中から空は見えないのですか」
「開閉式になってますので開いている時は見えますがだいたい閉じてますね」
「この森にはあまり強いモンスターもいないようですね」
「はい、定期的にモンスターを狩りに行きますので進化前のモンスターしかいないと思います」
壁の門にはセンサーが付いておりミーネが手を置くとタッチパネルが表示された。
「開きました、行きましょう」
門が自動で開き中に入ると想像していたより明るく整備された道路や近代的な建物が並んでいた、森の中とはとても思えない景色だった。
「村長の家に案内します」
村の中には多くのノーム族が生活しており珍しそうにこちらを見ている。
「すみません、人間を見る機会が少ないので」
「そうですよね、構いませんよ」
「儂もおるぞ」
「フェアリー族ですか!人間よりも珍しいです」
十分ほど歩くと大きな建物の前に到着した、ここに村長がいるようだ、建物の前にいるノームの兵士に挨拶し中に入る。
「ミーネです、旅の方をお連れしました」
「入りなさい」
中に入るとノーム族の女性が二人と執事風の男性が一人出迎えてくれた。
「クレイと言います」
「こちらへ」
案内された部屋に入る、中は広い客間になっており白い長い髭を生やしたノームが椅子に座っていた。
「こちらに座ってもらいなさい」
「クレイさんこちらへ」
促されソファーに座る、テーブルにお茶が運ばれてきた。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
「人間とフェアリーのパーティとは珍しいですな」
「村長よ、儂の名はティアじゃ、聞き覚えはあるか?」
「フェアリーのティア様ですか、ふむふむ、五百年ほど前にこの村を訪れたフェアリーがいたと記憶しておりますが」
「もうそんなになるかのう」
村長は目を見開き頷くとティアを見つめそれが本物と確信し軽く頭を下げた。
「お久しぶりですティア様」
「しばらく封印されておったからの」
「それで今回はどのような要件で参られた?」
「裁縫の針が欲しいんです」
「人間の町には裁縫の針も無いのかな?」
「裁縫マスタリーのスキルを使いこなせる針が必要なんです」
「なんと!人間でありながら裁縫マスタリーとはまことか!」
「はい」
クレイはここにくる途中に自分で編んだ強化服をアイテムボックスから取り出す、広げて見せ執事風の男に渡すと村長の椅子まで運んでくれた、受け取った村長が弾力性や編み目を確認している。
「この村でもここまでの服を編める者は少ないじゃろう、だが残念じゃ、今この村にはお主の希望する針は無い、針の元となる鉱石なら村の南にある鉱山で採れるんじゃが」
執事風の男が困った顔で詳細を説明する。
「鉱山の入り口には獣が棲みついている、古竜アレクセイ様の鱗は本物だった、ティア様達で何とか排除してもらえませんか?」
「獣を退治すればいいのか?」
村長が大声で異を唱える。
「ダメじゃ!聖獣様を退治など恐れ多い、この村の北西に聖獣の森があるそこへ帰ってもらうのじゃ」
執事風の男が村長に意見するどうやらこの村も困っているようだ。
「ですが言葉が通じないのではどうしようもありません」
「ダークエルフなら言葉が分かるはずじゃ、エルフの町に派遣した者が帰るまで・・」
「もう三ヶ月になりますぞ!モンスターと言葉が通じるダークエルフなどいないのですよ!」
村長と執事風の男が言い争いをしている、クレイはスキルリストを確認するとダークエルフのスキルかは不明だがモンスターテイマーのスキルが村長の言うモンスターの言葉が分かるに相当するのではないだろうかと思った。
「友好的なモンスターの言葉なら分かるかも知れません、僕達をそこまで連れて行ってくれませんか?」
「なんと!まことか!」
「言葉が分かっても説得できるか分かりませんけどね」
「村長!この者に頼みましょう」
「うむ、じゃが聖獣様を怒らせてはならぬぞ!」
「分かりました」
「ではターナー案内しなさい」
「承知しました」
村長の家を出て鉱山へと出発する、執事風の男ターナーがブレストアーマーを身につけ現れると村を出て森を南へ進んだ、ターナーは戦闘力も高く森の中で遭遇したゴブリンやオークを弓と短刀で倒しながら先頭を歩いてくれた、クレイ達も戦闘に参加しながら二日間森の中を進む。




