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第三十三話

最下層の扉は今までと違いダンジョンの創造主にふさわしい威厳のある扉だった、扉の前に立つとクリンが情報を伝える


「ダンジョン創造主古竜の部屋です」

「はい、じゃあ開けます」


扉を開け中に入る、部屋の中央付近で待っていた男性が古竜のようだ、丸いメガネを掛けた執事のような姿で尻尾と角がある。


「クレイ様ですね?私はこのダンジョンの創造主アレクセイと申します、ジン様から話しは聞いておりますこちらへどうぞ」


紳士的な話し方で迎えられ奥の部屋でテーブルを囲みコーヒーを飲む。


「それでは、何を望まれますでしょうか?」

「僕の裁縫スキルで壊れない針と糸が欲しいです」

「糸は差し上げられるのですが針はここには無いのです」

「どこにいけば手に入りますか?」

「この国の南西に裁縫が得意なノーム族の村があります針の材料を分けてもらえばクレイ様のスキルで作成可能でしょう」

「鍛治のスキルで作るのか、うん分かった」


メイド服の女性が箱を運んできたアレクセイに渡すと蓋を開け中身を取り出す、手のひらに収まる大きさの棒状の道具だった。


「これは魔力糸を作る魔道具で魔力を込めるとこの先から糸が出ます、ここをスライドすると糸の太さが変わりさらにスライドすると切れます」

「糸の元は何ですか?」

「一般的にはミスリルや精霊銀を使いますがこの魔道具はスライムのコアを利用しています」

「スライム!」

「スライムは大量の魔力を流せますし糸状に成型しやすいですからね、強度は魔力に比例しますのでクレイ様の魔力ならかなりの強度になるでしょう」

「太い糸なら編み物も出来るかな?」

「糸に込める魔力を調節すれば可能ですが練習が必要でしょう」

「どこかで練習してもいいですか?」

「もちろん構いません、向こうに裁縫室がありますのでご自由にお使いください」

「ありがとう」

「そちらの三人は私と鍛練しましょう」

「え、おお、そうだな鍛練な」


フォルト達と別れ裁縫室へ移動すると糸を出す練習をしてみる、基本は無色透明の糸だが属性を加えると色付けできるし弾力性も魔力量によって変えられた。


「罠を仕掛ける時にも使えそうだな」


糸の太さや弾力性を確認しながら糸を並べてみる切断した糸であっても魔力を込めるとある程度なら弾力性や色を変えられると判明した。


「クリン、フォルトやクラリスの体のサイズ分かる?」

「はい、データで表示します」

「よし、じゃあこの編み棒を借りて編んでみるか」


毛糸のセーターを編むようにすごいスピードで正確に編み上げる、糸の色は黒で統一した。


「オッケー服はこれでいいとして、下だけど足首までのタイツみたいなのでいいかな」

「弾力性が高いので膝関節の動きも問題ないでしょう」

「よし、やるぞ」


裁縫マスタリーのスキルがあるので編み方を知らなくても完成形を想像するだけで編めるのには驚いたが三人分を編むのにはかなりの時間が掛かった。


「できた!我ながら上手に編めたぞ、うん」


アナライズで確認すると物理防御力はもちろん魔力を帯びているため魔法や冷気と熱にも耐性があるようだ。


「三人が帰ってきたようです」

「タイミングバッチリだ」


裁縫室を出るとソファーに座ってぐったりしている三人に笑顔で近寄りテーブルに完成した編み物を置く。


「三人の強化服を編んでみたんだ着てみてよ」

「クレイ様が私に編んでくださったのですか!」


クラリスはぎゅっと強化服を抱きしめキラキラした目で見つめている。


「小さかったら言ってね」

「大丈夫です体を服に合わせます!」

「いや、編み直すから」


ティアとフォルトは着替えを済ませ動きを確認している、クラリスは裸になろうと下着を脱ぎ始めたのでクレイが説得していた、そのせいで少し着替えが遅れている。


「どう?キツくない?」

「大丈夫だ、軽いし思ってたより伸縮性が高いな」

「儂も問題ないぞ」

「魔力に属性を入れて服に流せば色も変えられるんだ」

「儂はスカイブルーにするか」

「じゃあ俺は赤にするか」

「私は透明で・・」

「クラリス、透明はダメ」

「そうですか、仕方ありません、なら黒のままにしておきます」

「よし、じゃあ帰るか」

「帰りは転移装置をご利用ください、それとノーム族の村へ行かれるなら私の竜鱗を差し上げますので村の者にお見せください」

「交流があるんですね」

「昔の話です」


アレクセイから10枚竜鱗を受け取り転移装置で一階へ移動した、隠密薬を飲み姿を隠して町へ戻る。


「だいぶ落ち着いたな」

「あれから1ヶ月以上過ぎたからね」


山猫亭に入りゆっくり休むと今後の予定を相談する。


「ノーム族の村に向かうのですね」

「そう、まずはいらないドロップ品を売ってアイテムボックスを整理しよう」

「毛皮は売らないよな」

「うん、毛皮と食材は残す、処刑場の件はドロップ品の売却時にでも聞いといて」

「了解です、では行ってきます」


フォルトとクラリスがドロップ品の売却に出て行くと、その間クレイは部屋に備え付けてあるモニターでニュースを見ていた。


「ティア」

「なんじゃ?」

「処刑場のあの男達はなぜあんなに醜男だったんだ?」

「この国は身分差別が激しいんじゃ、最底辺の人間は奴隷よりはましじゃがカプセルは必要最低限しか使わせてもらえん」

「反乱に繋がらないのか?」

「そのための奴隷じゃ、獣人族もエルフ族も美形が多い、あの者達も奴隷で不満を解消しているのじゃろう」

「これから行くノーム族の奴隷もいるのか?」

「ノーム族か、いるかもしれんが人間以上の技術力で村を守っておる、それに見た目も普通じゃからのう、エルフや獣人を狙わずあえてノーム狩りをする奴はおらんじゃろーな」


そんな話をしてるうちに売却を済ませたフォルト達が帰って来た。


「ただ今戻りました!」

「ダンジョンの規制があったせいでなかなかいい値で売れたぞ」

「消耗品も買ってきました」

「情報は何か聞けた?」

「処刑場の件だが囚人達は国外に逃げたと発表されたそうだ」

「犯人は?」

「エルフの大魔術師とその仲間と断定されたそうです」

「奴隷狩りもしばらく自重するんじゃないか」

「そうだといいけど、まあ今日はゆっくりして明日に出発しよう」


こうして処刑場襲撃事件とエリオン聖王国による奴隷狩りは一応の決着がついたのだった。

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