第二十八話
白猫亭で一晩泊まり翌日フォルト達が待つ封印の遺跡へ転移魔法で移動する、ダンジョン攻略に二十日間を要した、その間フォルトとクラリスは魔導アーマーの操縦をマスターし森のモンスターを倒せるようになっていた、遺跡の外は戦闘の影響で少し荒れている。
「フォルト、クラリス久しぶりだね」
「クレイ様」
「クレイもうダンジョン探索終わったのか!」
「まあね、そっちはどう?」
「だいぶ慣れたぞ」
「外のモンスター程度は倒せるようになりました」
「クリン、戦艦はどう?」
「まだ時間がかかります」
「まあゆっくりでいいよ」
「それで今後はどうするんだ?」
「エリオン聖王国へ行こうと思う」
「準備はできています」
「街道まで転移魔法で移動してクルマで出発だ」
「ならしばらくこいつともお別れか」
「残ってもいいんだよ」
「いや、俺も行くぜ」
「クリンは引き続き修理頼むよ」
「了解しました」
転移魔法で移動しクルマに乗り込む、西へ向かうと三日で関所に到着し通行証を見せ無事入国を果たした、次はエリオン聖王国王都を目指す。
「クレイよ、今さらじゃが儂はエリオン聖王国が好かんのじゃ、ダンジョン攻略を終わらせたらさっさと次へ行かぬか?」
「何かあるのか?」
「クレイ様、それについては私から説明いたします、エリオン聖王国は多くの亜人を捕まえ奴隷にしています。特に西にある古代樹の森にはエルフ族と獣人族が住んでいまして、奴隷狩りと称して捕まえ奴隷商に売ってるのです」
「そんなことしてエルフ族や獣人族が攻めてこないのか?」
「聖王国を守る城壁が堅牢で兵器の質も高く何より国の人口が多いので兵士の数が違い過ぎるのです、亜人が戦争を仕掛けても勝てません」
「それなら逆にエルフ族や獣人族を滅ぼせるんじゃない?」
「エルフ族や獣人族が住む古代樹の森は自然の要塞です、身体能力が高い相手に住み慣れた森での戦闘では聖王国も勝ち目がありません」
「なら奴隷狩りが返り討ちになる場合もあるの?」
「ありますね、それでも奴隷として高く売れるので奴隷狩りは無くなりません」
「好きになれないのは分かった、ティアの気持ちを優先しよう」
街道を3日走り聖王国王都に到着した、検問で通行証とダンジョン探索者登録を確認されると鋼鉄製の城門をくぐる、町を守る城壁は高く厚いエルフ族や獣人族でもこれを突破するのは難しいだろう。
「案内板があります」
「まずは宿だな」
「表通りの東側か行こう」
町の中央へ向かう道を進み右側にある宿を見て回る、あまり豪華な宿は避け山猫亭と言う宿に入った、チェックインを済ませ食堂に向かう。
「ずいぶん賑わってるな」
「あそこが空いています」
テーブルを囲い座ると接客係がすぐにやってきた。
「いらっしゃいませ!ご注文はお決まりですか?」
「俺はやまどりの照り焼きとサラダそれに卵スープ」
「僕はハンバーグ定食と唐揚げとポテト」
「私はオレンジ牛のステーキセット」
「かしこまりました!」
「かなり繁盛してますね」
「明日あれがありますからね」
「あれって?」
少し困った表情でクレイ達を見ると仕方なく答える。
「えーっと、あれを見にいらしたとは思えませんね、明日の昼過ぎに亜人の公開処刑があるんです」
「公開処刑!、犯罪者か何かですか?」
「数日前にエルフと獣人の兵士が攻めて来まして反撃した際に捕えた者達だそうです」
「奴隷にしないんですね」
「いつもならそうするんですが今回はエルフの姫がいるそうで見せしめに処刑前に凌辱するそうです」
「それで男の人が多いんですね」
「お客さんも見に行かれるんですか?」
「僕たちは長旅で疲れてるから部屋で休みます」
ほっとした表情で耳打ちするように小声で話す。
「そうですか、亜人とは言え同じ女性としては見物に行く人の気が知れません」
クレイが頷くと接客係は急いで注文を伝えに行った。
「処刑の前に凌辱なんてな」
「気分が悪いです」
「クレイ、来る途中でこの国を早く出ようと言ったが助けてやれんもんかのう」
ティアがポケットから顔を出しそう言うとまた顔を引っ込めた。
「部屋で話そうか」
注文した料理が運ばれてくるとそれを食べ部屋へ戻る、唐揚げとポテトは包んでもらい部屋に持ち帰った、部屋に入るとティアがポケットから飛び出し机の上に着地する。
「クレイ、何とかならんか?」
「食堂で他のテーブルの奴らが話してるのを聞いたが処刑されるのは全部で十五人だそうだ」
「凌辱されるのは五人だそうです」
「方法を考えないとね」
「転移魔法で何とかならんか?」
「転移魔法は対象が一人増えると消費魔力が大幅に増えるんだよ」
「俺達も手伝うぜ」
「なら8人乗りのクルマを二台調達してきて」
「やってみる」
「フォルト、私も行きます」
「調達できたら西の門から一旦出よう」
「クレイはここで待っててくれ、行ってくる」
フォルトとクラリスが出て行きクレイはアイテムボックスの整理を始めた。
「ティア食べていいよ」
「唐揚げじゃな」
「気に入らないか?」
「大好物じゃ、ポテトの塩加減もなかなかいい」
「お茶ここに置いとくぞ」
ティアは唐揚げを頬張りニコニコ頷いている。




