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第二十七話

100階までの階層は多くが毒の沼地になっており毒の泡がブクブクと噴き出していた、このフロアは丸ごと1つの部屋になっている。


「また凍らせるか」

「いや、清めてしまおう」

「この広さだぞ」

「セイクリッドウインド」


聖なる風が吹き抜ける空気中の毒素が清められ綺麗な空気になった、続いて毒の沼が徐々に清められ沼の水がどんどん澄んで底が見えるまでになった、床も壁も天井も清められ隠れていたであろうモンスターがキラキラと消えて行った、清めた沼に生息していた魔物も消えドロップ品が沈んでいる。


「聖人や聖女の魔法でもここまではできぬのではないか?」

「そうか?この階層みたいに迷路になってないと楽だな」

「そう言えるのはクレイだけじゃぞ」


100階までの各フロアは全て毒のフロアだったので全て清めた、聖属性が弱点でないアースジャイアントやスナイパーゴーレムなどのモンスターも多少生息していたが空気が澄み見晴らしの良くなったフロアでは見つけやすく遠距離から魔法で倒して進んだ。


「本当に100階まで来てしもうたの」

「古竜です」


扉を開け中に入る広いフロアの真ん中で頭に角の生えた少女が待ち構えていた、そちらに歩いて行くといきなり怒鳴られる。


「よくも私のダンジョンを滅茶苦茶にしてくれたな!」

「怒っておるぞ」

「氷の件かそれとも毒の沼を清めたせいか」

「両方だよ!あと橋も!」

「単独でここまで来るのは大変なんだ、多めにみてくれ」

「修復にどれだけ時間が掛かるか、まったくもう」

「手伝おうか?」

「いーや結構よ!あなたのことはジン様から聞いているわ、向こうで話しましょう」


奥の部屋に案内されテーブルに用意された紅茶を飲みながら話を聞く。


「私はこのダンジョンの創造主、古竜のライラよ」

「俺はクレイこっちがティアだ」

「フェアリーがここまで来れるとはね」

「儂は隠れておっただけじゃ」

「このダンジョンは対空攻撃のモンスターが多く配置されていたでしょ?」

「確かにフェアリーには攻略が難しそうだな」

「さて、ご褒美だけどまずはクレイあなたには浮遊魔法を安定させるスキルの使い方を説明するわ、飛行の極意ってのがあるでしょ」

「ちょっと待て!人間が飛行の極意など使えんじゃろ?」

「クレイは特別なのよ、フライの魔法で飛行できるようになるわ」

「フライの魔法は一定の高さまで浮遊するだけじゃないのか」

「翼も羽根も無いのに鳥のように自由に飛べるわ、練習してみて」

「そうか、後で練習してみる」

「それとティアには対空攻撃の耐性スキルを付与してあげる」

「なんじゃと!そんなスキルが存在するのか!」

「ワンダーガードを付与!」


ティアの体が光り始めスキルの取得が可能となった。


「これか、これで対空攻撃の耐性が得られるんじゃな」

「弓や弾丸はもちろん対空武技にも効果があるわ、但し無効じゃないからね、あくまでも耐性だから」

「ありがたいわい、クレイにも付与せんのか?」

「クレイは取得済みだ」

「そうなのか、奴はいったい何者なんじゃ?」

「進化した人間、まあこの世界で一人だけしかいないんだけどね」

「何か特別な存在なんじゃな」

「クレイがフライの飛行練習をするあいだ私が鍛練してやろう」

「せっかくじゃお手合わせ願おうかの」


数時間後クレイはフライで空中を自在に飛べるようになり満足していた、フライによる飛行は自分のみが対象で仲間に使っても浮遊の効果しかない、だが対空攻撃を避けられるのはありがたい。


「ウイングドラゴンの鱗とストームドラゴンの鱗が手に入ったしティアの武具でも作るか」


奥にある工房へ入るとアイテムボックスからベースの防具として軽鎧とライトシールド、武器は杖を取り出し使う全てドロップ品だ、フェアリー用に作るので大きさが違うが形は参考になる、匠のハンマーで武具を作っているとティアとライラが戻ってきた。


「ライラ、工房を使わせてもらってるぞ」

「構わないわ、飛行訓練はどう?」

「思ったより簡単だった、ティアとライラは何してたんだ?」

「鍛練じゃ 、久しぶりに全力を出したぞ」

「ライラに勝てたか?」

「ただのフェアリーが勝てるわけ無かろう」

「そうか、これを作っておいた着てみろ」

「儂の武具か、ふむ」


着替え終わったティアは動きを確認し飛行を繰り返し杖をくるくる回している。


「これを人間が作ったなど誰も信じんじゃろうな」

「気に入ったか?」

「軽いし動きやすい、この杖はストームドラゴンの鱗で作ったのか?」

「そうだ、魔力を込めてかざすとストームブレスと同じ効果がある」

「風属性も強化されるようじゃな、防具はウイングドラゴンの鱗か軽いはずじゃな素材を活かしたいい品じゃ」

「気に入ったようだな」


紅茶を飲みながらやり取りを聞いていたライラが話しかける。


「帰りは転移装置で帰れるようにしておいた、また来てくれ」

「また来てもいいのか?」

「転移装置で来いよ、ダンジョンを壊すのは無しだからな」


ライラも久しぶりの来客が嬉しかったのだろう、最初は怒っていたが帰る時には笑顔で見送ってくれた。


「じゃあまた来るよ」

「ではな」


転送装置でダンジョン一階へ戻り町へ移動した。


「今日は白猫亭で休もう」

「久しぶりにベッドで休めるの」


疲れてくたくたのティアは風呂に入りすぐに眠ってしまった。

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