第二十三話
レジスタンスの拠点で宮殿制圧の準備に取りかかる、翌日まだ夜明け前に出陣し宮殿前広場に到着すると急いで陣を敷く、クレイは宮殿周辺の地図を確認し強力な広範囲シールド魔法を使う、その形は宮殿を中央にドーム状に地下深くまで展開した、魔力を流し続け強度と耐久時間を上昇させる。
「こんなもんか、半日はもつだろう」
レジスタンス兵から歓声が上がると宮殿正門が開き中から兵士が次々に出て来た。
「帝国重装歩兵が出て来たぜ」
「一気に行くぞ!」
ルースの指揮で戦いが始まった、宮殿からレーザー砲が発射されるだがクレイが着弾ポイントにシールド魔法を使いこれを防ぐ、前進するレジスタンス兵が帝国重装歩兵と戦いを始めた、クラリスが重装歩兵をなぎ倒しフォルトが弓で宮殿のレーザー砲を狙い撃ちする、戦いはレジスタンス有利で進むかに思われた。
「ウォーー!」
中央にインペリアルガードのマックスが現れレジスタンス兵を次々になぎ払う、一般のレジスタンス兵では歯が立たない。
「なんだあいつ!」
「私が行きます!」
フォルトの援護を受けたクラリスがマックスの前に出ると大盾を構える。
「パワースマッシュ!」
「くっ」
「クロススマッシュ!」
「くはっ」
「このやろー!」
フォルトがショートソードを手にクラリスに加勢する。
「ライジングスマッシュ!」
「うへ」
「クロススマッシュ!」
クラリスとフォルトの二人がかりでもマックスの方が優勢で戦闘は続く、クレイは宮殿上部からの攻撃を攻撃魔法で無力化すると魔法師やスナイパーなどの遠距離攻撃部隊に照準を変更するその間にもクラリスとフォルトが次第に追い詰められて行った。
「ここまでだ!ダブルスマッシュ!」
「ぐは!」
「うぁ!」
深傷を負った二人にクレイが駆け寄り回復魔法を使う。
「サークルヒールウインド!」
「ほう、それを治すか」
「次は僕が相手をしよう」
「強化薬が必要だな」
マックスが薬を飲むと筋肉が膨張しステータスが跳ね上がった。
「フレイムインパクト!」
クレイはロングソードで受け止めると同時に魔法を放つ。
「ウインドカッター!」
「ぐふ」
「アイスニードル!」
マックスは盾で攻撃を防ごうとするが魔法の威力が高く後方へ吹き飛ばされた、盾は使い物にならないほどボロボロになっている。
「化け物め!」
「降伏するなら命は取らないよ」
「まだだ!」
マックスが新たに薬を飲み干すと全身から紫の煙りが溢れ出た。
「体の限界を越えてる」
「この一撃に全てをかける!」
一気に駆け寄り上段に構えた宝剣をクレイに向け振り下ろす。
「タイガーストライク!」
マックスの全身全霊を込めた一撃を盾で受け止める激しい火花が飛び散り宝剣を振り抜こうと力を込めるがクレイの盾は切り裂けない。
「いい剣技だった」
「ぐふぅ」
「限界越えちゃダメでしょ」
倒れるマックスの体をクレイが支えた、薬の反動で全身から血が吹き出し気を失っているこのまま放置しておいても死んでしまうだろう。
「ヒールウインド!」
マックスの体が薄い緑の光を放つ、だが限度を越えて使用した強化薬の影響で筋肉や骨にまで大きなダメージが残っている、これでは後遺症が出るだろう。
「薬のダメージがでかすぎるな、フルリカバー!」
上級回復魔法を使うとマックスの体が光に包まれ筋肉や骨に残っているダメージも回復した、これで後遺症も残らないだろう。
「シャドウバインド!」
気絶しているマックスの体を魔法で拘束しフォルトに預ける。
「ルースに渡して」
「了解」
「クラリスは一緒に行こう」
「はい!」
クレイが最前線に進み帝国重装歩兵と対峙する、ゆっくりと前進するがマックスを倒したクレイに向かって来る者はおらず左右に分かれ道ができる、そのまま前進し宮殿入り口へ到達するとレジスタンスの兵が宮殿内部に侵入を始める。
「メリウス宰相と皇帝陛下を拘束する行くよ」
「はい!クレイ様」
エレベーターは停止しているためレジスタンス兵は階段を駆け上がって行く、クレイはクラリスと転移魔法で議事堂へ移動し入り口の大きな扉を勢いよく蹴り開けた、視線がクレイ達に集まる議事堂内には多くの貴族とメリウス宰相がいた。
「何者だ!」
「レジスタンス軍です、降伏しますか?」
「ふざけるな!護衛の兵士は何している!」
入って来た兵士をクラリスがランスでなぎ倒すとクレイが前に進みもう一度問う。
「降伏しませんか?」
「死ね!」
貴族の一人がレーザー銃でクレイを射撃する、通常の盾なら溶かしてしまう強力な武器だがクレイがシールド魔法で防いだ。
「しょうがない」
クレイがロングソードを振るとレーザー銃を撃った貴族とその近くにいた貴族数人をまとめて切り殺した。
「クレイ様皆殺しでいいですか?」
「そうだね」
クラリスがランスを構える。
「待ってくれ!降伏する!」
「私も降伏だ!」
次々と降伏を叫ぶ貴族にがっかりするクラリス。
「メリウス宰相はどうしますか?」
「降参だ」
「じゃあ全員拘束します」
レジスタンス兵が宮殿の制圧を完了しメリウス宰相は失脚、派閥の貴族も全て平民となり宮殿から追放となった、クイント共和国から王太子が帰国し皇帝に即位すると父親の元皇帝は引退メリウス宰相派閥の王子達も宮殿を去った、新たにフロイス公爵が宰相にルースが軍の最高司令官に就任すると発表された、その後クイント共和国とは不戦条約を締結し賠償金の一部を技術提供で支払うことで合意する、こうしてエステリア帝国とクイント共和国の戦争は終結したのだった。
「クレイ殿、今回の件深く感謝する」
戦後しばらくして新皇帝、フロイス公爵、ルース将軍らに呼び出され宮殿の広間に来ていた。
「フロイス宰相、大変でしょうけど頑張ってください」
「褒賞金の他に何か欲しいものはあるかね?」
「帝国のダンジョンに入る許可をください」
「ダンジョンは元から誰でも入れる他には?」
「じゃあ遺跡に入る許可を」
「封印の遺跡か、もちろん許可しよう他には?」
「クレイ殿は欲がありませんな」
ルースが笑顔で腕組みしながら話しかける。
「そうですかね」
「本来なら騎士の称号や貴族の爵位を授与するところだが共和国の英雄を引き抜くような真似はできませんからな」
「なら西のエリオン聖王国へ行く通行証をもらえませんか?」
「用意させよう、だがまだまだ足りませんな、今はまだ思い付かないようなら必要になった時に申し出てくださいますかな」
「そうしてもらえると助かります」
クレイが笑顔でそう言うとフロイス宰相もルース将軍も笑顔で頷いていた。




