第百三話
模擬戦用の杖を受け取り開始位置につくと試験官が手を上げ開始の合図をする、見学席には何人か観戦者がいて応援に来てくれたジュンス達の姿も見えた。
「さあ、行くわよプロテクトシールド、フォースシールド、エアウォール、アイアンの試験だしこれぐらいでいいわね、かかってらっしゃい」
ノルトは少し考え相手が攻撃して来ないなら攻撃を始める前に強化と防御の魔法を使い戦闘態勢を整えようと考えた。
「プロテクトガード、スーパープロテクトガード」
「防御魔法が得意なのかしら?」
「フォースガード、スーパーフォースガード」
「魔法防御も上手よ、カッパーにしてはね」
「ストレングスアップ、ストレングススーパーアップ」
「身体強化の魔法も得意なのね」
「アッパーウエポン、ハイアッパーウエポン」
「武器の強化は大事ね、でもこの杖の攻撃力を上げるのはどうなの?」
「ニードルウエポン、シャドーサーバントセブン、包囲陣!」
ノルトの影が起き上がり7人に分かれると女魔法師を囲むように移動する、全員の手にはトゲのついた杖が握られている。
「え、シャドー?何その魔法?分身?杖にトゲ?」
「一気に行く、用意、スタート!」
「うそ、魔法は?魔法師でしょ物理攻撃なの!何でよ!アイスウォール!ガーディアンゴーレム!私を守りなさい!」
ノルトを含め8名がトゲの付いた杖を一斉に構え女魔法師への攻撃を開始する。
「エイトスタッフ・オブ・ミートマッシャー!」
杖で叩きつけるとシールド魔法がガラスのように割れ、氷の防御魔法が砕け散る、風の防御魔法も消し飛んだ。
「ちょっと待って!こんなの聞いてないわ!」
ガーディアンゴーレムも攻撃に向かった3人の分身が振り下ろす杖の一撃で粉砕した、無防備になった女魔法師にトゲのついた8本の杖が振り下ろされる、頭、両肩、背中、腰、腹、両膝を杖が打ち付けたように見えた、見学席から悲鳴が上がっている、思わず立ち上がり目を覆う者、しゃがみこみ顔をそらす者、動けずにその場に立ちすくむ者、そんな見学者達が慌てた審判の大声で我に返る。
「そ、そこまで!」
トゲのついた杖は振り抜く直前で寸止めされていた、女魔法師は立ったまま気を失っていたようでノルトが魔法を解除しシャドーサーバントが消えるとばたりと倒れた、担架を持ったギルドの職員が急いでやって来て、医務室へ運んで行った。
「一本取れたよな?」
ノーダメージなので心配になり審判に向かってノルトが聞くと審判は何度も頷きながらノルトの勝利だと答えた。
「勝者ノルト、では試験部屋に戻って下さい」
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立ち上がっていたギルドマスターは脂汗を流し見学用の椅子に座る、体の震えが止まらない、将来有望な冒険者が試験を受けていると聞いて見に来たのだが危うく試験で死者が出るところだった、アイアンの試験にオリハルコンの相手はどうだろうかと思っていたが、杖が振り抜かれていればオリハルコン級の冒険者がミンチ肉になっていただろう、この国にオリハルコン級の冒険者は多くない昇級試験の模擬戦なんかで死んでしまっては大問題だ、本当に危なかった。
「ギルドマスター」
「どうだった?」
「無傷だそうです、ただ相当恐怖を感じたそうでもう二度と昇級試験の依頼は受けないと言っています」
「当然だな」
「彼の今後の昇級試験ですが」
「彼は免除にしよう、試験依頼を受ける者がいなくなる」
「かしこまりました」
「彼はパーティを組んでるのかね?」
「仮ですが緑の疾風と言うパーティと共に行動しているようです」
「そうか、彼が達成した依頼内容に気になる点はあるか?」
「素材の保存状態がとても良いと言う以外は特にありません、ただ」
「なんだ?」
「鉱石採取の依頼を達成後、鉱山ギルドに上質のオリハルコン鉱石がかなりの数売りに出されております」
「オリハルコン鉱石だと、ワド鉱山の最下層にあると報告されているが確かレッドフッドタラテクトが巣を作っていて手を出せないと聞いていたが」
「討伐された可能性がございます」
「そうか、あの実力なら可能性は高いな、今後も注意深く情報を集めてくれ」
「承知しました」
ギルドマスターは席を立つと実技試験の会場を出て行く、次の模擬戦が始まっていた、魔法師の試験官がいないため戦士の試験官が担当していたが受験者の魔法が直撃しKOされていた。
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ノルトは教室に戻り結果が発表されるまでの間模擬戦を振り返っていた、模擬戦用の杖は試合後に粉々になって消えてしまった、杖の耐久力も上げておくべきだったと反省する、魔法攻撃で無くても一本取れれば合格と思っていたが魔法師の試験なのに物理攻撃で勝利しても本当に良かったのだろうか?土魔法のロックハンマーで同じように攻撃する方が魔法師らしかったのではないか?色々考えたがもう終わってしまったので結果を待つしかない、考えているうちに全員の実技試験が終わり結果が発表された。
「合格者は新しいネームプレートを受け取って退出して下さい」
合格者の名前が読み上げられその中にノルトの名前もあった、笑顔でアイアンのネームプレートを受け取り教室を出るとジュンス達の所へ合格のネームプレートを見せに行った。
「合格した、これでE級だ」
「そうだな」
「どうした?」
「模擬戦だよ、あれはやりすぎでしょ」
「やっぱり魔法師が杖で殴って一本取るのは間違ってたか?」
「それもそうなんだけどさ、相手が死んじゃったかと思ったよ」
「あの女魔法師か、殺すわけ無いだろう?模擬戦なのに」
「それはそうじゃが見てる方はハラハラしたぞ」
「シールド魔法を使ってたからな、ファイアボールで撃ち抜いた方が良かったんだろうがオリハルコン級のシールド魔法がどの程度の耐久力があるか不明だったし、力加減に失敗すると殺しかねないだろ?安全策を取ったんだが」
「安全策かノルトが言うならそうなんだろうな、じゃあ昇級祝いに飯でも行くか」
「それは嬉しいなぜひ行こう」
その日は高級ステーキ店で仲間と盛り上がった、一緒にいた他の客にも飲み物を奢りみんなで楽しい夜を過ごしたのだった。




