第百話
坑道を出て鉱山を下り山小屋まで戻ると一息つき食事にした、山小屋の管理人にも焼き鳥を分けてやりワイワイ賑やかな夕食となった。
「やっぱり坑道で食べるよりうまいのう」
「魔物が出ない安心感でそう感じるんだろうな」
「えっへん、全部で42個!やったね!」
「大量じゃの」
「ノルトが30個でしょ、金と銀それにミスリルも10個、ノルトが来てから幸運が舞い込んで来たわね」
「このオリハルコン鉱石で装備を揃えられたらなぁ」
「そうじゃのぅ、鉱石ではカネにはなってもオリハルコンの装備は揃わんし」
「それなら俺が揃えてやろうか?俺の父親は魔道具技師なんだ、その影響か分からないが俺は鍛治師のスキルが使える」
「え!作れるのか!オリハルコンだぞ!」
「うそ、本当に作れるの!」
「ワシのも揃えてもらえるのか?」
「もちろん、それじゃあ何が必要か教えてくれ」
ジュンスは大剣、大盾、鎧でフェムがショートソード2本、ショートシールド、ブレストアーマー、トールが杖、ショートシールド、ブレストアーマーが欲しいそうだ、鎧はそれぞれのサイズを教えてもらいノートに記入する。
「色はどうだ?好みはあるか」
「私は薄い緑がいいな」
「俺は無難にグレーかな」
「ワシはブラウンじゃ」
「よし分かった、じゃあ町に戻ってから1週間後でいいか?」
「1週間でも2週間でもいいぞ、じっくり作ってくれ」
「鉱石どれくらい必要?足りる?」
「俺が持ってる数で十分だ」
「儲けは折半だが武具の支払いはちゃんとするから」
「ああ、ジュンス達には世話になってるから格安にしておくよ」
山小屋で一泊し翌日に馬車で町へ向かった、途中の野営地帯で一泊し町へ戻るとギルドに依頼分のミスリル鉱石を納品する、他の鉱石は直接鉱山ギルドで売却するとジュンスが言うので理由を聞くと、その方が高く売れるからだそうだ。
「じゃあまたな」
「1週間後にギルドで待ってるよ」
「期待していてくれ」
ジュンス達と分かれ武具の工房がある区域に向かう、最初に見つけた工房に入ってみた、子供に工房を使わせてくれるのか不安はあったがとにかく交渉してみる。
「いらっしゃい」
「工房で武具の作成をしたいんだが貸してもらえないだろうか?」
「お前さんがか?鍛治スキルでも持ってるのか?」
「スキルは持ってる、もちろんただでとは言わない使用料はこれでどうだろうか?」
ノルトは銀鉱石と金鉱石をカウンターに置いた、店主は鉱石を調べ頷く、子供がどの程度の鍛治スキルを持っているのか興味もある、それに使用料は上質の鉱石だ損はない。
「上質の鉱石だ、いいだろう使わせてやる、分からないところは教えてやるからな」
「ありがとう、じゃあ早速だが使わせてもらうぞ」
ノルトは工房に入るとオリハルコン鉱石を取り出す、店主はそれを見てかなり驚いていた、鉱石をスキル匠のハンマーを使い叩きまずはインゴットに加工する、オリハルコンは熱に強い耐性があるので熱しても溶けないが匠のハンマーで叩くと形を変え不純物が取り払われて行く、それを再び匠のハンマーで叩き始める、時に力強く時に繊細に細かく叩くとその音が心地よいリズムを刻み飛び散る火花までもが美しく店主は思わず見とれてしまっていた、それを何回か繰り返すとショートソードが完成する。
「どうだろう?」
店主が受け取り品定めをする、どこを見ても完璧な仕上がりだった、このオリハルコンのショートソードを子供が作ったとはとても思えない、驚きを通り越して信じられないと言う表情をしている。
「完璧だ、その年でこれを作れるのか!」
「まだたくさん作らなきゃいけないんだ、明日もいいか?」
「ああ、好きなだけ使ってくれ、店は当分閉店にしておく」
「いいのか?客が来ないと困るんじゃ?」
「いや、俺もお前さんの鍛治の技を見たいんだ、ノートをとってもいいかな」
「ああ、構わない」
その日はショートソード2本と杖を1本作って終わりにした、店主に明日は朝から来ると告げ了承をもらい寮へ帰る、すると寮の玄関に見知った姿の二人が立っていた。
「リディア様、帰って来ましたよ!」
「ノルト、どこに行ってたんだ?」
「鉱山に鉱石を採取する依頼を受けてたんだ、それよりお前達毎日ここに?」
「い、いや、そんなはず無いだろ、たまたま通りかかったんだ」
「そうか、たまたまか、じゃあな」
「ま、待ってくれ!私達も冒険者ギルドに登録したんだ」
「そうか、頑張れよ」
「あ、その、もしよかったら、パ、パーティを組んでもらえないだろうか?」
予想通りの提案に貴族の子供が冒険者になる理由が見当たらないと思いリディアを見て答える。
「断る、だいたい貴族のお前が冒険者になる必要は無いだろ?」
「それはそうなんだが、その、訓練、そう訓練のためだ、上級魔法師の試験内容は知っているか?魔物と戦うんだぞ!なら冒険者として魔物を倒すのは訓練になるだろ」
「確かにそうだな」
「だがリアナと二人だと危ないし護衛を雇うと訓練にならないしな」
「なるほど」
「どうかな?」
冒険者を職業とするのでは無くあくまで試験対策として魔物と戦う訓練をしたいと言う理由は一理あると思った。
「明後日もう一度来てくれ、それまでに考えておく」
「そ、そうか!考えておいてくれ、じゃあな、明後日だな」
「ああ、またな」
そう言うとリディアとリアナは素直に帰って行った、ノルトはかなり疲れていたので居座られても困ると思っていたのだが、素直に帰ってくれてほっとしている、部屋に入り荷物を置き軽く夕食を食べシャワーを浴びるとその日はそれ以上考えるのをやめベッドでぐっすり眠ったのだった。
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「リディア様、上手く行きましたね」
「そうだな、でもまだ油断禁物だぞ」
「断るなら明後日に来て欲しいなんて言いませんよ」
「そうだな、だが条件を付けられる可能性はあるぞ」
「確かにそうですね」
「まあ、パーティを組めるなら条件は飲もう」
「はい」
「明後日が待ち遠しい」
帰り道、上機嫌の二人は笑顔で話ながら家に帰って行った。
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