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婚約破棄の後で

 ☆☆☆ファミール王国王都貴族学園


 我が国は領土こそ小国だが、伝統と文化がある。

 魔族を抑える要衝の地に位置し、世界から注目されている。


 私はジャームズ、その栄えあるファミール王国の第2王子にして貴族学園の2年生、生徒会長である。

 今日は入学式だ。

 婚約者も新入生としてやってくる。


 しかし、直前に婚約者を代えた。

 元の婚約者とは婚約解消ではない。破棄。いわゆる婚約破棄である。


 よく、王子が婚約破棄をして、その後、王が出てきて、王子は廃嫡ってあるよね。

 私は、そんな愚は犯さない。


 何故なら、父王陛下と、母上も了承済みだよ。


 私の兄上は今は帝国に留学中、留学を終えたら、向こうの第六皇女と婚約をして、王位を継ぐ予定だ、第2王子である私は、地方の辺境の伯爵家に婿入する。

 今も変わりない。


 だが、私の相手が変わったのだ。婚約者の義妹は母上の妹君の娘で、私から見たら従姉妹、幼馴染みだ。


 婚約者のローズマリーを不行跡で断罪し、娼館に売った。

 そのお金は賠償金として義妹に渡された。


 残酷だって?


 そうではない。


 婚約者を交代したにはワケがある。


 彼女は、生まれながら心が醜く、


 父親が亡くなってから本性を現した。

 再婚した伯母上と義妹を家族として認めないだけではなく、義妹を娼館に売ろうとしたから、因果応報だ。

 彼女の手下の一人が、私に直訴したので発覚した。


 彼女は最後まで、罪を認めない。


『殿下!私はそのようなことは企んでいません!何かの間違いです!』

『はあ?まだ、罪を認めないか。散々、キャサリンと叔母上を義妹と義母ではないと言っていたではないか?』

『そうです!あり得ません。父は病で伏せっていました。入籍日は一日中・・』

『ええい、お前は、娼館に行け!』


 こうして、ローズマリーを娼館に売り払い。

 改めて、キャサリンと婚約を結んだ。


 キャサリンとは

 幼い頃から、心通わせていたけども、王命により、ローズマリーと婚約をすることになった。

 叔母上はローズマリーの父と再婚したので、ローズマリーの義妹になったのだ。


 王命はアップルフィールド伯爵の令嬢と婚姻しろだから、守っている。


 えっ、こうゆう場合、婚約破棄された令嬢には何か不思議な力があって、後で仕返しされる?


 それは大丈夫だ。

 叔母上が機転を利かせて、ローズマリーが父親から継承されたものを取り上げたのだ。


 ローズマリーの父親は、口先一つで功績をあげて、伯爵に陞爵された元男爵だ。

 父上も扱いに悩んでいた。

 功績に報いなければならないが、疑惑も多い。だから、私こと第2王子の婚約者を娘の婚約者に指名し、伯爵にしたのだ。


 お、キャサリンがやってきた。


「おお、キャサリン、綺麗なドレスだ」

「綺麗でしょう~義姉様からの賠償金で買ったの~」


 ・・・ローズマリーを娼館に売ったお金か。キャサリンは天真爛漫だから、そんなことは気にしない性格なのだろう。


 お、もう、こんな時間だ。生徒会室に行く時間だ。


「いいか。キャサリン、生徒会の皆に紹介をする。『入って』と言ったらノックをして入るのだよ」


「は~い。クッキー焼いてきたの。皆さん、食べるかな?」


 ☆生徒会室


「やあ、皆、今日は天気がいいな」



「ジェームズ、ごきげんよう」

「やあ、ジェームズ!今日も良い天気だな」

「殿下にご挨拶するでゲス。おはようです!」



「皆、入学式日和だ。気分よく新入生を迎えられるね」



 大国のノース王国の王女、ザイツ帝国の皇子、我が国に帰朝した蛮族の酋長の息女が、我王国の貴族学園に留学で来られている。


 皆、立場を超え、一緒に生徒会で頑張っている仲間だ。

 私が、生徒会長である。

 生徒会役員に留学生が入るのは異例であるが、3人の熱望で入って頂いた。


 全く、私と親交を結ぼうとするのがミエミエだ。

 これも、政治だ。学園は政治を学ぶ場でもある。


「ジェームズ、今日は、入学式で、婚約者のローズマリー様も入学するのよね。是非、顔合わせを頼むわよ」


 とノース王国の王女カトリーヌが言えば、

 帝国の皇子グスタスが対抗心をむき出しにする。


「冬期の長期休暇の視察旅行に、我が帝国に婚約者殿と一緒に来られるがいいだろう。父上と母上から早く顔合わせをしたいと懇願されている」


「我国には最新のジュエリーとドレスがございますわ。ねえ、ジェームズ、婚約者殿の喜ぶ顔を見たくない?」


 蛮族のドロシーは身の程をわきまえ家来になりたいと懇願する。


「あっちは、ローズマリー様のメイドになりたいでゲス。殿下!紹介して下さい!」


 全く、皆、私に取り入ろうと必死だ。

 しかし、婚約者が変わったことを言わなければならない。


「ゴホン!」


 と咳払いをして、生徒会の外に控えているキャサリンに準備の合図をする。

 ここで、「入って」と私が言えば、生徒会室に入る予定だ。


「そうだ。入学式前に、新入生を代表して、挨拶をする私の婚約者を紹介しよう。ここで練習をしてもらう。皆、指導をお願いするよ。さあ、キャサリン、入って」


 ガチャ!


「は、初めまして、母はロマン公爵家出身のキャサリン・アップルフィールドです!皆様に会える日を楽しみにしてましたの~」


 キャサリンはノックもせずに入ったが、元気が良いのが長所だ。可愛らしい笑顔に、カテーシを披露する。さあ、皆、気に入ってくれたか?


 あれ、皆、返事がないな。呆気にとられている顔をしている。


「ジェ・・・ジェームズ、婚約者のお名前は、ローズマリー・アップルフィールドで、髪はダークブロンドで、目はアイスブルーではなかったのかしら」


「私は、手は農作業であれ、身長155㎝で、持っているドレスも控えめな色で、貞淑な印象だと聞いたが・・・何だ。このド派手なピンクのドレスの女は・・」


「皇子、王女、こいつは性悪尻軽女キャサリンでゲス!いつも、あっしらの部族を、実力もないのに、見下している三下でゲス!」


「「何だってーーー」」


 ・・・「何だってーー」は私の方だ。私の従姉妹でもあり、婚約者をこうもあしざまにいうとは、親しき仲にも礼儀あり。ここは毅然とした態度で・・


「おい、小国の王子ごときが、謀るか?ローズマリー嬢はどこにいる?」


「・・・グフタフ、この学園では皆、平等だ。その言い方はよくない・・・ぞ」


「余計なことはしゃべらない!早く、理由を話しなさい!」

「王子!嘘を言うと皮を剥ぐでゲスよ!」


 いつも、卑屈にご機嫌伺いしていた蛮族のドロシーまで高圧的な態度を取る。

 あまりの豹変ぶりキャサリンはジェームズの背中から、バスケットを差し出し、3人のご機嫌伺いをする。


「私が作ったの~食べて~」


 しかし、グフタフは、パン!とバスケットを手で振り払い。

 クッキーは床に落ちる。


「はあ?王族は基本人からもらった物は食さない。そんな常識もないのか?」


「ヒィ、ヒドイ、グスン、グスン」


「いい加減にしたまえ。私の婚約者だぞ!」


「私、皆様と仲良くなりたくて、クッキーを焼いてきたの。私がいたらなくて、義姉様を怒らせた私は悪いの。ジェームズに助けてもらっただけ・・」


「ああ、お前が悪くて、ジェームズが愚かなのだろう。俺はローズマリー嬢と親交を結べと勅命でこの学園に来たのだ。早く言わないと、しばくぞ!」


「ああ、分かった」

 ・・・仕方ない。私は、ここ一月で起こった事件を三人に話した。


 あれは、一月前のこと。ローズマリーの父親が亡くなって、私も義理で墓参りに来たのだ。

 葬儀には間に合わなかった。

 父親は、まあ、一応、義理の父親になるからな・・・あれ、何だっけ?


「スタローン殿だ!我が帝国にも名が知れ渡っているぞ!」

「呆れた。婚約者殿の父親でしょう?」

「鶏の方が賢いでゲス!」


 グッ、まあ、そうだが、ローズマリーとは6歳のころ、顔合わせをしただけだ、辺境の地に引きこもって、王都に出てこない。

 私もあまり気乗りしなかったのだ。

 その時はキャサリンと婚約するものばかりだと思っていたからな。

 一歳の時に、婚約者が決まっていたなんて絶望したものさ。


「・・呆れた。6歳のころから、一度も会っていないなんて、お手紙は?」

「何か、来ていたけど、作物がどうとか、何とか、つまらなかったから、2,3通見てやめた」


「・・・それはお前と結婚したときに領地経営に困らないように手紙で知らせていたのだ。全く、貞淑な。妻の鏡ではないか?」



 ・・・そうゆう理由で、父親の死を機に、初めて、ローズマリーの領地に行ったのだ、そしたら、

「殿下、お久しぶりです・・・実はご相談したいことがあります」

 と長旅で疲れている私に構わずに、叔母上とキャサリンを、家族ではないと、誹謗中傷したのだ。

『馬鹿なことを、伯母上は王族だ。王族がそんな偽装結婚をする訳がなかろう』

 と私は一蹴してやった。


「ちゃんと、ローズマリー様の話を聞いてあげなさいよ」


 グッ、いや・・まあ、いい。そして、キャサリンが・・大変なことになっていたのだ。

 王妃の妹である母を持ちながら、粗末なドレスに、イジメまで受けていた。


 ここからは、

 キャサリンがローズマリーの話を始めた。


「義姉様は、変わった方で・・・」

「お義姉さまが、ドレスとジュエリーを独占しているの。だから、ジャームズが会いに来たのに、みすぼらしいドレスしか着られなかった。グスン、グスン」

「それに・・お姉さまは淫乱なの。情夫が沢山いるって噂が・・」


 義姉様は、貴族なのに、人嫌いで、メイドは通いの近所の人だけ。人を信用しない。執事は置かない。領政を独り占めして母上も手を焼いていたのよ


「それは、スタローン殿は、功績を挙げたのに領地の加増なし、紙切れ一枚、伯爵にすると言われただけ、義務は伯爵、領地は男爵、実質、ペナルティーだ。おまけに不良品の王子まで押しつけられたのだからな」


「性悪キャサリン!そんな話はどうでもいいでゲス!ローズマリー様がどうなったかだけ話すでゲス!」


「ヒィ、お義姉様が、娼館に私を売る計画をしていると有志の方から告発を受けたの。

 私、怖くて、ジャームズに相談したら・・」


「ああ、ここからは私が話そう・・」


 私はローズマリーを糾弾し、婚約破棄をした。


 被害者であるキャサリンが健気にも、必死に、ローズマリーを庇ったので、命までは取らない。

 因果応報、義妹を売る予定だった娼館に、ローズマリーを売ったのだ。


 そして、キャサリンと婚約をし、今日の歓迎セレモニーで大々的に発表する予定だった。

 君たちに知らせなかったのはサプライズだよ。


 陰険なローズマリーよりも、キャサリンの可愛らしさを見れば一目で気に入ると思ったのだ。

 王命はアップルフィールド家の令嬢と結婚せよだからな。

 何も問題はないはずだ。


 その時、ドンドン!と激しいノックの音が響いた。


「皇子殿下!一大事です。新入生の中にローズマリー様がいません!馬鹿王子が、新入生の名簿の書き換えをしていないせいです!」

「王女殿下、戸籍を確認しましたが、スタローン殿が、再婚されています。今日になって判明しました。この国のズボラな戸籍管理のせいです!」

「姐御、武器と馬、持って来ましたゼ!」


(馬鹿王子?ズボラ?家来如きが、私と我国を侮辱?武器と馬、蛮族には武器の持ち込みを禁止していたはずだが)


 3人の従者、メイド、家来が、ローズマリーがいないことを察知して、それぞれ動いたのだ。


「皇帝陛下にお知らせして、兵の準備を、ローズマリー嬢、救出の邪魔をするなら、この国に圧力をかける!」

「ヒヒ、じゃあ、あっしらは、娼館を片っ端らに捜索して、ローズマリー様を救出するゲス!」

「侍女団を結成しなさい!娼館に売られたローズマリー様をケアするのは、私たちの役目よ!」


 三人は、それぞれ、配下に指示を出し、生徒会役員なのに、入学式を放り出して、出て行った。




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