81.集まる仲間たち
カイ・パゴスに、聖十二支のひとり、暴虐竜ことアニラさんがやってきた。
『オレ様の女に手ぇだすたぁ良い度胸だなあ……おい! デカブツよおぉ!』
アニラさんも結構大きい……のだけど、やっぱりリョウメンスクナの方が背が高い。
リョウメンスクナを大人くらいだとすると、アニラさんは幼児くらいだ。
膝のあたりに、アニラさんの頭があるみたいな、そんな感じ。(それでも大きいけど)
アニラさんは竜の姿で飛び上がって、ジャンプキックを放つ。
リョウメンスクナは二本の腕でガードする。
『ちっ……! なかなか硬えじゃねえかよ! おらぁ!』
アニラさんは翼をいかして高速移動しながら、リョウメンスクナに攻撃を図る。
でも相手は防御できてしまう。
「大きなダメージが入ってない……」
「キリエさまぁああああああああああああああああああ!」
この声は……チャトゥラさん!
上空を見上げると、空から犬耳の美男子が降ってきた。
涙をぶわぁああ……! と流しながら、わたしのもとへ降ってくる!
『くまきゃーっち!』
くま吉君がチャトゥラさんを受け止める。
ナイス。
「くま吉! なぜあなたが抱き留めるのですか!?」
『えー……おいら良いことしたと思ったんだけど……』
よいしょ、とくま吉君がチャトゥラさんをおろした。
わたしはくま吉君の背中を、よしよしとなでる。
「ありがとう」
『えへ~♡』
と、そこへ……。
「くま吉!」
「かあちゃんっ! おひさー」
人間状態のくま子さんが、グリフォンのシンドゥーラさんの背中に乗って降りてきた。
くま子さんはわたしに近づいて……。
ごちん!
「あいったぁ~……」
「キリエ! ったく、勝手に居なくなったらだめでしょう!? みんな心配したんだからね!」
空の民たちが上空でうなずいてるわ。
そうよね、勝手に出て行って、そのままだったんだ。
皆を心配させてしまった。
「ごめんなさい……」
神の使いであるというのに、誰かに迷惑をかけてしまうなんて……。
ノアール神様に怒られてしまうわ……ごめんなさい……。
するとくま子さんが、ぎゅっと優しく抱きしめてくれた。
そこから彼女が、もう怒ってないこと、そして……安堵してる気持ちが伝わってくる。
「無事でよかったさね」
「……うん、ごめんね」
「ま、次は気をつけなよ」
「うんっ」
くま吉君が近づいてきて、ぎゅーっとくま子さんとわたしを抱きしめる。
『ふたりケンカしなくて、おいらうれしー!』
「ったく、くま吉、あんたも勝手に居なくなって! わるい子だね!」
『うひー、ごめーん……』
まあまあ、となだめるわたし。
その間にも、アニラさんと空の民が、リョウメンスクナと戦っている。
いや……戦いって言って良いのかしら。
「キリエ様。状況をお伝えいただけないでしょうか」
わたしはチャトゥラさんたちに、詳細を語る。
ドワーフとトロルの国にきたこと。
そこで屍魔王と遭遇。
相手は神の力を宿し、現在暴走中……。
「腐姫……なるほど、ここが本拠地だったのですね! さすがキリエ様!」
えっと、何に感心してるのだろうか……。
「キリエ様のお力でも、アレを祓うことはできないのでしょうか?」
「さっき祈ってみたのだけど、ビームを押し返すだけだったわ」
腐っても、神ってことかしら。
ノアール様も神だし、力が拮抗してるのかも……。
いや、ちがう。
ノアール様が悪に負けるわけがない。
必要なのは……より強い祈りだ。
「キリエ様、これからどうしましょう」
「みんな、力を貸して」
わたしはチャトゥラさんたち、そしてトロル、ガンコジーさん達を見渡す。
「これから、【大祈祷】を行います」
「だい……きとう……? なんでしょう、キリエ様」
「複数名でやる、お祈りのことよ」
祈りはひとりでするより、大勢でやった方が神により祈りが届きやすい。
「みんなで一生懸命ノアール神様に祈るの。協力……してくれる?」
するとチャトゥラさんたち森の民と、この国で出会ったひとたちがうなずく。
みんな……ありがとう。
「じゃあ、みんな一緒に祈りましょう!」