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78.儀式



《腐姫Side》


 魔王種のひとり、腐姫くさりひめが率いる不死の軍勢は、聖魔王キリエの手によって、壊滅状態に追い込まれていた。


「くそ……なんなの……なんなのよあの女ぁ……!」


 キリエの攻撃(※無自覚な雪崩攻撃)によって、カイ・パゴスの王都であるカイの街は壊滅。

 また用意していたアンデッドたちは、浄化の魔力を帯びた雪崩によってきれいさっぱり天へ召された。


 腐姫はその際の攻撃を受けたことで、皮膚がただれて、醜い姿を露呈していた。

 何度も魔法で見た目を戻そうとしたが、駄目。

 それほどまでにキリエの聖なる魔力が強力だということだ。


「くそ……こうなったら……奥の手を使うしかない!」


 腐姫は邪悪に嗤うと、魔道具を手にとって、空を飛ぶ。


「けひひ……! キリエぇ……! おまえもこの国の連中もぉ……! 皆殺しだぁ!」


 腐姫は何度もキリエに作戦を潰されたこと、そして美しい自慢の顔に、傷をつけられたことから、彼女に対して強い憎悪を抱いていた。

 それこそ、絶対に殺すという気持ち、これで終わっても良いという覚悟とともに。


 吹雪のなか彼女は空を舞い、そして、手に持っている魔道具を掲げる。

 それは曲がりくねった、まがまがしいフォルムのナイフ。


「我が不滅の命! そしてこの地に住まう生命を生け贄に捧げ! 来たれ! 名状しがたき邪悪なる神よ!」


 ずぶ……! と腐姫の胸にナイフが突き刺さる。

 その瞬間、体中から血が噴き出した。


 大量の血は大地を汚し、そこから一気に周囲に広がっていく。

 まるで大量の汚泥のようであった。


 泥はカイ・パゴスの王都だけでなく、国全体に広がっていく。

 その泥に巻き込まれた生命は、泥の下へと沈んでいく。


 やがて……泥の中から、ひとつの命が産まれようとしていた。

 彼女は数多くの命を生け贄に……。


 禁忌を犯し、この世成らざる物を召喚したのである。

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