74.地面に突き刺さった聖剣を無理やり引っこ抜く
【★おしらせ】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
カイ・パゴスにきているわたしたち。
腐姫っていう、悪い人を説法するために、王都へ向かう道すがら、ドワーフさんとトロルさんを助けることにしてる。
湖の水を、ノアール様が奇跡の力で割ってくださった。
急いで、トロルのデッカーちゃんのお父さんに、近づかないと。
「くま吉君、急いで!」
『がってんしょうちだい!』
魔物さんたち、そしてガンコジーさんとデッカーちゃん(イッコジーさんとキムズカジーさんはフェフキの街にいる)は、急いで湖を渡ろうとする……。
「なっ!? じょ、嬢ちゃんアレを!」
大灰狼の背中に乗っている、ガンコジーさんが、前を指さす。
「わぁ! 綺麗な光だべ……! なんだべかあれ?」
「あれは……まさか……」
たしかに目をこらすと、何かが強く輝いてるのがわかった。
黄金の、まるで太陽のような光を放っている……。
「湖の下に眠るという……まさか……あれは!」
「くま吉君、ハリーアップ。スルーOK」
「のぉおおおおおおおおおお!」
ガンコジーさんが叫ぶ。
なんだろう?
「き、キリエの嬢ちゃん! あ、あれは……この国にあるとうわさされていた、伝説の武具じゃ!」
「くま吉君、ハリーアップ」
「のぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
あまりに叫ぶものだから、一時足を止めるわたしたち。
「ガンコジーさん、今非常時なのよ? デッカーちゃんのお父さんたちトロルが、普段居るところにいない。やっと見つけた今、彼らを見失うわけにはいかないでしょう?」
急ぎだっていうのに、状況がわかってないのかしら。
かわいそうに。
「いや聞いてくれ嬢ちゃん。わしは神器が作りたい。神器とは神が作ったアイテムで、各地のどこかに眠っているという。そして……この光り輝く剣こそが、神器の1本とされている……聖剣ファルシオンなのじゃ……!」
な、長い……。
ええと、とりあえず凄い剣ってことね。
「是非とも回収させてほしい! 自分が神器を作るときの参考にしたいのじゃ!」
「そう……じゃあ早く回収してね」
「うむ!」
まったく急いでるときに……。
男の子って、やぁね。急ぎの仕事があるというのに、オモチャ見つけてはしゃぐなんて。
はっ、人の悪口を言ってしまった。
いけないわ。
神さまは見ている。
悪口を言ってはいけない、怒られちゃうわ。
『姉ちゃんはその伝説の聖剣、ファルシオンってやつに興味ないの?』
「ありません。わたしは女の子ですもの、武器なんて興味ないわ」
ガンコジーさんが地面に突き刺さった剣を抜こうとする。
「ふぐう……ふぐうううううう! ぬぅう……抜けん……」
「おらがぬく! ぬぅううん! ぐぅううううう! ぬけなぁい……」
ふたりともが頑張って剣を抜こうとしている。
でもどれだけ引っ張ろうとしても駄目。
『だめだー、おいらでも抜けないよぅ』
魔物であるくま吉君でも抜けないんじゃ、無理ね。
「さ、いきましょ」
「ううむ……しかしあきらめきれん……是非とも手に入れたい……」
「わたしには、理解できませんね」
「そうか……ノアール神がかつて使っていたという、聖剣ファルシオンなのだが……」
「それを早く言いなさい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
それなら話は別じゃ無いの!!!!
どうして先に言わないのかしらっ!
「じょ、嬢ちゃんどうしたんだ……?」
「ノアール神が地上に落とした物なら、回収しないとっ!」
元の持ち主に返してあげないと!
「しかし……ドワーフでもトロルでも抜けぬ、ましてや魔物でも抜けぬしろもの。とてもじゃないが、嬢ちゃんの細腕では引き抜けるとは思えんぞい?」
「そんなの関係ないわ。これはノアール神さまのもの。なら、神の使いであるわたしも抜けて当然」
わたしは聖剣ファルシオンの前に立ち、柄をつかんで……。
「ふんにゅぅううううううううううううううううう!」
……か、かたい……。
ぬ、抜けない……だと……?
そんな、馬鹿な……!
「どうして、わたしはノアール神様に使える女……主の落とし物を拾ってさしあげようとしているのに、どうして拒まれるのっ?」
「この手の武器は、使い手を選ぶからな。おそらくは、武芸の達人を求めておるのじゃろう」
確かにノアール神は武芸も達者だったと聞くわ。
魔法の方が得意だったけど、剣で戦うこともできたらしい(すごい素敵かっこいい)。
「あきらめな、嬢ちゃん」
「ふ……理解しました。そういうことね」
「そうそう」
「祈りが足りなかったと」
「どうしてそうなった!?」
そう……結局のところ祈り、祈りが全てを解決する。
わたしは聖剣ファルシオンを、両手で包み込み、そしてそのまま祈る。
「神さま……どうかわたしに、この剣をつかみ取る力を……!」
そのときだ。
ずぼぉお……!
「抜けたー! やったー!」
「「えええええええええええ!?」」
あれ……どうしたのだろう、みんな……?
『ね、姉ちゃん……剣が……抜けた……』
「ええ、わたしは剣に選ばれたようだわ」
『そうじゃあない! 剣のさきっちょ、、地面がついてる……!』
……たしかに、剣の先端部分に、湖底の土がついてるわ。
「これじゃ剣が抜けたというより、剣が刺さっている地面ごと、怪力で無理矢理引き抜いたのほうが正しいような……」
「スラちゃん!」『あいー』
頭の上に載っている、スライム赤ちゃんのスラちゃんが、ぐばっ、と大きく口を開ける。
持ち上げた聖剣を、スラちゃんがばくりと食べて、収納する。
「「…………」」
「解決★(横ピース)」
さて、ノアール神様の武器も回収したし、さっさとデッカーちゃんのお父さんの元へれっつらごーよ!
「なんちゅー力業……」
「キリエ様ってたまにおかしくなるべな」
『姉ちゃんそういうところあるから……』
「なにか?(迫真)」
「「『いえ、なんでもないっす……』」」
【★新作の短編、投稿しました!】
タイトルは――
『最強壁役が実は世界最強の剣士だった件〜味方のダメージを全て肩代わりしてたのに、無知な勇者に「壁役は不要」と追い出された俺、剣士に転職し大成する。勇者パーティは優秀な盾を失い崩壊する』
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