表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

66/196

66.わたしって、もしかして



 フェフキの街にきているわたしたち。


「今日は遅いから、この街で一泊していきーや」

「いいんですか、イッコジーさん」

「かまへんよ。あんたらは恩人やからな」


 このまま無理してみんなが怪我なんてしたら大変だわ。

 お言葉に甘えるとしよう。


「ありがとう、イッコジーさん」

「おう。とりまメシにでもするか。言っても、今物流がとまってるさかい、干し肉と固いパンくらいしかふるまへんのやけどな」


 物流が停まってる……?

 ああ、そうか、今腐姫のせいで国が大変なことになってるから、外から人が入って来れないのか。


 ほんと、酷いことするひとだわ、早く説法してあげないとっ。


『ねーちゃーん』『ぴゅいー、おなかへったー』『しちゅー』


 くま吉君たちが空腹をうったえてくる。

 イッコジーさんは申し訳なさそうに言う。


「悪いな魔物ちゃんたち、シチュー作りたくっても食材が……」

「大丈夫よ、イッコジーさん。祈れば」

「は……?」


 ぽっかーん……としているイッコジーさん。

 だが口元をひくつかせながら、「いやいや……」と首を横に振る。


「お祈りっちゅーのは、ご飯があって、恵んでくれてありがとーってやるあれやんな?」

「そうよ」

「ご飯ないやん」

「あるわ。祈れば神が恵んでくださるもの」

「あ、あれは……比喩表現やんな?」

「いいえ、神さまはいつだってわたしたちを見ているわ。お祈りを捧げれば、神さまは食べるものを恵んでくださるの。見ててね」


 わたしは目を閉じて、神さまに祈る。

 どうか神さま、我らにささやかな糧を与えてくだ「なんやてぇええええええええええええええええええ!?」


 わたしが祈りを捧げている途中で、イッコジーさんが叫ぶ。

 目を開けると、そこにはうぞうぞと食べ物の実の蔦が生えていた。


「なんやこれ!? 椰子の実!? 蔦生えてるし! ここ室内やし! なんやねんなこれ!?」

「神さまのご飯よ」

「はぁん!? どういうこっちゃ!?」


 確かに、初めて見る人ではびっくりするかもしれないわ。

 くま吉くんが、手本を見せるように、食べ物の実をもぎる。


 ぱかっ、と蓋を開けると……。


「なんじゃこりゃぁああああああああああああああああああああ!?」

『シチューも知らないの、ドワーフの姉ちゃん?』

「しってるわ! しってるからおどろいてんや!!!!!!!!!」


 くま吉君が上手に両手を使って、シチューを食べているわ。

 本当にお行儀いいわよね、この子。うふふ。


「うふふちゃうわ! なに当たり前みたいな顔してんや! 植物! これ植物やんな!?」

「そうね、それが?」

「どこの世界に、シチュー入ってる植物があるねん!?」

「? ここにあるけども」

「ここにあるこれがオカシイって言ってるンや!!!!」


 おかしいって……。

 変かしらこれ。


「だって神さまがお作りになられた食べ物なのよ? 見たことなくて当然じゃない?」

「いや神さまやのーて、あんたが作ったんやろ……!」

「いえいえ、わたしはただ、祈っただけです」

「目ぇ見開けや!」

「祈る最中に目は開けられないわ」

「ああもぉおおおお! なんやねんこいつ! マジでなんやねんこいつぅうううううううううう!」


 頭を抱えてぐわんぐわんと体をゆするイッコジーさん。


「食事中は静かにしましょうね」

「だれの! せいや! おもってんねーーーーーーーーーーーーーーん!」

「誰のせい?」

「あんたやぁああああああああああ!」


 わたし何かしたかしら……?

 ただ祈っただけなんだけど……。


『まーまー、ドワーフの姉ちゃん、食べてみなって。飛ぶぞ?』


 くま吉君が食べ物の実をもぎって、イッコジーさんにわたす。

 彼女はいぶかしがりながらも、蓋を開けて、シチューをすする。


「うんまぁああああああああああい!」


 涙を浮かべながら、がつがつと、イッコジーさんがシチューを食べていく(食べ物の実にはスプーンもついてる)


「なんや! こんなうまいシチュー産まれてはじめてや! なんてうまいんや!」

「それはよかったわ。食べ終わったら神に感謝しましょうね」

「ああ、キリエ嬢ちゃんは、ほんま……神なんやな」


 いや、いやいやいや……。


「だからわたしじゃ……」

『『『ありがとう、キリエ神さま!』』』

「だからわたしじゃないってばー!」


 ケラケラと笑う魔物さんたち。

 もうっ、からかってるのねっ。わるい子っ。


 そんな様子を、遠くからイッコジーさんが見ていう。


「王都にある行列のできるレストラン以上の、クオリティやでこのシチュー。ちゅーか、この木の実を売れば、ぼろ儲け間違いなしやン……」

「売らないわよ?」

「なんでや!?」

「だって神さまがおめぐみくださったものですもの」


 神さまが、無償でわたしたちに提供してくれてるものを、お金をもうけるためにうるなんて、言語道断だわ。


「なんちゅーか……。キリエの嬢ちゃんは……あれやな」

「あれって?」

「色々と、馬鹿なんやな……」


 ば、ばかぁ~?

 ええ!?

 そんな……。


「ああ、悪い意味だけやないで。馬鹿正直っちゅーか、良い意味で純粋やなぁって」

「は、はあ……え、わたし馬鹿じゃ無いですよね?」


 わたしはガンコジーさんに尋ねてみる。

 彼はつつぅ……と目をそらした。


 ええ!?


「で、デッカーちゃん! わ、わたし

……馬鹿じゃ無いよねっ?」

「え、ええっと……が、ガンコジー! シチュー冷めちゃうべ! あーん!」


 はぐらかされた!!!!!

 え、そ、そんな……。


「く、くまきちくーん……わたし、馬鹿じゃ無いよねえ」


 魔物さんたちはみんな優しいわ。

 くま吉君にもふっ、と抱きついて尋ねてみる。


『姉ちゃんは馬鹿じゃ無いやい!』

「くま吉君っ!」

『かなり変なだけだい!』

「くま吉君!?」


 え、ええ!? わたしって……変だったの!?

【★読者の皆様へ お願いがあります】


ブクマ、評価はモチベーション維持向上につながります!


現時点でも構いませんので、

ページ下部↓の【☆☆☆☆☆】から評価して頂けると嬉しいです!


お好きな★を入れてください!


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] バカ正直 だからこそ聖女なんでしょうし 神様候補なんでしょうね
[一言] せやなー変わり者やなー(茜ちゃん並感)
[良い点] キリエ神、変では…wありませんw ものすごく変わり者wだけど、別の神様に祈る神様ってだけですw 後、自身の力を頑なにノアール神の力だと思い込んでるだけw [一言] 基本、無自覚チートってイ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ