66.わたしって、もしかして
フェフキの街にきているわたしたち。
「今日は遅いから、この街で一泊していきーや」
「いいんですか、イッコジーさん」
「かまへんよ。あんたらは恩人やからな」
このまま無理してみんなが怪我なんてしたら大変だわ。
お言葉に甘えるとしよう。
「ありがとう、イッコジーさん」
「おう。とりまメシにでもするか。言っても、今物流がとまってるさかい、干し肉と固いパンくらいしかふるまへんのやけどな」
物流が停まってる……?
ああ、そうか、今腐姫のせいで国が大変なことになってるから、外から人が入って来れないのか。
ほんと、酷いことするひとだわ、早く説法してあげないとっ。
『ねーちゃーん』『ぴゅいー、おなかへったー』『しちゅー』
くま吉君たちが空腹をうったえてくる。
イッコジーさんは申し訳なさそうに言う。
「悪いな魔物ちゃんたち、シチュー作りたくっても食材が……」
「大丈夫よ、イッコジーさん。祈れば」
「は……?」
ぽっかーん……としているイッコジーさん。
だが口元をひくつかせながら、「いやいや……」と首を横に振る。
「お祈りっちゅーのは、ご飯があって、恵んでくれてありがとーってやるあれやんな?」
「そうよ」
「ご飯ないやん」
「あるわ。祈れば神が恵んでくださるもの」
「あ、あれは……比喩表現やんな?」
「いいえ、神さまはいつだってわたしたちを見ているわ。お祈りを捧げれば、神さまは食べるものを恵んでくださるの。見ててね」
わたしは目を閉じて、神さまに祈る。
どうか神さま、我らにささやかな糧を与えてくだ「なんやてぇええええええええええええええええええ!?」
わたしが祈りを捧げている途中で、イッコジーさんが叫ぶ。
目を開けると、そこにはうぞうぞと食べ物の実の蔦が生えていた。
「なんやこれ!? 椰子の実!? 蔦生えてるし! ここ室内やし! なんやねんなこれ!?」
「神さまのご飯よ」
「はぁん!? どういうこっちゃ!?」
確かに、初めて見る人ではびっくりするかもしれないわ。
くま吉くんが、手本を見せるように、食べ物の実をもぎる。
ぱかっ、と蓋を開けると……。
「なんじゃこりゃぁああああああああああああああああああああ!?」
『シチューも知らないの、ドワーフの姉ちゃん?』
「しってるわ! しってるからおどろいてんや!!!!!!!!!」
くま吉君が上手に両手を使って、シチューを食べているわ。
本当にお行儀いいわよね、この子。うふふ。
「うふふちゃうわ! なに当たり前みたいな顔してんや! 植物! これ植物やんな!?」
「そうね、それが?」
「どこの世界に、シチュー入ってる植物があるねん!?」
「? ここにあるけども」
「ここにあるこれがオカシイって言ってるンや!!!!」
おかしいって……。
変かしらこれ。
「だって神さまがお作りになられた食べ物なのよ? 見たことなくて当然じゃない?」
「いや神さまやのーて、あんたが作ったんやろ……!」
「いえいえ、わたしはただ、祈っただけです」
「目ぇ見開けや!」
「祈る最中に目は開けられないわ」
「ああもぉおおおお! なんやねんこいつ! マジでなんやねんこいつぅうううううううううう!」
頭を抱えてぐわんぐわんと体をゆするイッコジーさん。
「食事中は静かにしましょうね」
「だれの! せいや! おもってんねーーーーーーーーーーーーーーん!」
「誰のせい?」
「あんたやぁああああああああああ!」
わたし何かしたかしら……?
ただ祈っただけなんだけど……。
『まーまー、ドワーフの姉ちゃん、食べてみなって。飛ぶぞ?』
くま吉君が食べ物の実をもぎって、イッコジーさんにわたす。
彼女はいぶかしがりながらも、蓋を開けて、シチューをすする。
「うんまぁああああああああああい!」
涙を浮かべながら、がつがつと、イッコジーさんがシチューを食べていく(食べ物の実にはスプーンもついてる)
「なんや! こんなうまいシチュー産まれてはじめてや! なんてうまいんや!」
「それはよかったわ。食べ終わったら神に感謝しましょうね」
「ああ、キリエ嬢ちゃんは、ほんま……神なんやな」
いや、いやいやいや……。
「だからわたしじゃ……」
『『『ありがとう、キリエ神さま!』』』
「だからわたしじゃないってばー!」
ケラケラと笑う魔物さんたち。
もうっ、からかってるのねっ。わるい子っ。
そんな様子を、遠くからイッコジーさんが見ていう。
「王都にある行列のできるレストラン以上の、クオリティやでこのシチュー。ちゅーか、この木の実を売れば、ぼろ儲け間違いなしやン……」
「売らないわよ?」
「なんでや!?」
「だって神さまがおめぐみくださったものですもの」
神さまが、無償でわたしたちに提供してくれてるものを、お金をもうけるためにうるなんて、言語道断だわ。
「なんちゅーか……。キリエの嬢ちゃんは……あれやな」
「あれって?」
「色々と、馬鹿なんやな……」
ば、ばかぁ~?
ええ!?
そんな……。
「ああ、悪い意味だけやないで。馬鹿正直っちゅーか、良い意味で純粋やなぁって」
「は、はあ……え、わたし馬鹿じゃ無いですよね?」
わたしはガンコジーさんに尋ねてみる。
彼はつつぅ……と目をそらした。
ええ!?
「で、デッカーちゃん! わ、わたし
……馬鹿じゃ無いよねっ?」
「え、ええっと……が、ガンコジー! シチュー冷めちゃうべ! あーん!」
はぐらかされた!!!!!
え、そ、そんな……。
「く、くまきちくーん……わたし、馬鹿じゃ無いよねえ」
魔物さんたちはみんな優しいわ。
くま吉君にもふっ、と抱きついて尋ねてみる。
『姉ちゃんは馬鹿じゃ無いやい!』
「くま吉君っ!」
『かなり変なだけだい!』
「くま吉君!?」
え、ええ!? わたしって……変だったの!?
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