52.恋の神様
わたしたちは、ガンコジーさんのアトリエで夕ご飯を食べていた。
膝の上に乗っかっている毛玉、もとい、グリフォンの子供ぐーちゃん。
「ぴゅい~♡ 美味しぃ~♡」
食べ物の実にはいっていたグラタンを、ぐーちゃんに食べさせながら、わたしもご飯を食べる。
ガンコジーさんとデッカーちゃんはというと……。
「あれ? 二人ともどうしたの? 食が進んでないようだけど」
するとデッカーちゃんが真面目な顔で、わたしにこう言ってくる。
「キリエ様。おらたちの国を、助けてくれないべや?」
「国を……助ける?」
「んだべ。今、国はピンチなんだべ」
「ふむ……」
ここに来たのも神の思し召し。
きっとノアール神は、ガンコジーさんの病気を治すだけじゃなくて、この国をも救ってこいと、そう言いたかったのでしょう。
神の使いであるわたしに、断る理由も無かった。
神が解決しろというのなら、しましょう。それが神に仕えるものの使命だからね。
「聞きましょう」
デッカーちゃんは安堵の息をついたあとに説明してくる。
「実は今……この国を、不死の軍勢がせめてきているんだべ」
「不死の……軍勢?」
こくん、とガンコジーさんがうなずく。
「国中に、不死の化け物どもがうろついているんじゃ」
「キリエ様も見たでしょ? おらが、ゾンビ化した犬に襲われてるとこ」
ああ、居たわね確かに。
「彼奴らは腐姫の配下なのじゃ」
「腐姫……?」
「不死の軍勢を率いる、女王のような存在じゃ。やつは不死の存在を使って、悪さをしておる」
酷い人もいたものだ。
他人の平和を脅かそうとするなんてっ!
「あれ? でもこの国には山小人と巨人がいるのよね? どちらもすごいって聞くわ。腐姫なんてやっつけられないの?」
するとデッカーちゃんは気まずそうな顔をしながら言う。
「お恥ずかしながら、巨人と山小人は、昔から仲が悪いんだべ」
「わしら山小人は、巨人たちを図体がデカいだけのグズだと」
「おらたち巨人は、でかいやつが偉いって思ってるんだべ」
なるほど……それでいがみ合っているのね。
……って、あれ?
「でもおかしいわ。なら、どうして二人は恋人同士なの?」
「「こ、こ、恋人ぉ……!?」」
あれ、違ったのかしら……?
とっても仲よさそうに見えたのだけど。
「べ、別にわしはこの女のことなんて……」
「ふぇええ……」
「ああもう! 泣くな! くそ! やりにくいな!」
「ふえええ……」
ふむ……なるほど。
恋人未満、友達以上、そんな関係性ってことかしら。
でも……ひどいわ。
「ガンコジーさん、あなたデッカーちゃんのこと好きなんでしょ?」
「なっ!? じょ、嬢ちゃんなにを……」
「好きだからちょっかい出しちゃう気持ちはわかるわ」
王都の孤児院でも、そういう子はたくさんいた。
でもいけないの。
「本当に好きなら、意地悪しないで好きって言わないと。それに、男の子が女の子泣かせちゃだめでしょう? めっ!」
わたしはガンコジーさんのそばによって、ぺん、と頭を叩く。
『ふん……わしだってほんとはデッカーのこと好きじゃわい』
あれ? この声……まさかガンコジーさんの声?
これは……わたしが昔使っていた、念話の力だわ。
『じゃが素直になれぬだけじゃ……わしはまだ神器も作れぬ未熟者。とてもこの強い女に釣り合わん……。神器を完成させた暁には、こいつに思いを告げようと思っておったのじゃ』
あら、まあまあ、なんてロマンチックなんでしょう。
「が、ガンコジー! ほ、ほんとだべかそれ?」
「「え……?」」
デッカーちゃんが、顔を真っ赤にしているわ。
目をうるませて、口元を抑えている。
でも全体的に、うれしそうにしているのが伝わってきた。
あ、あれ……?
「おらのこと……好きって。神器を完成させたらプロポーズするって……」
「なっ!? なぜわしの心の声が聞こえてるんじゃ貴様!」
あれ……?
これもしかして……。
わたしのせい?
念話で心の声を聞いて、わたしを中継地点にして、彼の心の声を、デッカーちゃんに届けてたってこと……?
そ、それってプライバシーの侵害じゃ……あわわわ。
「ご、ごめんな……」
「ガンコジー! おらうれしいー!」
だきっ! とデッカーちゃんがガンコジーさんに抱きつく。
ちゅっちゅっちゅ、とキスをしまくる!
「こ、こらやめろ! わしはまだ神器を完成させてない……」
「待つ! おら待つよ! だっておらのこと好きってわかったから! 何年でも、何十年でも待つ! えへ♡ えへへへへっ♡」
な、なんだか知らないけど……う、上手く行ったみたいね!
「嬢ちゃん……あんたがやったのか? わしの心を、デッカーに届けたのか?」
「え、ええ……ごめんなさい……」
事故なのよ……。
しかし。
「いや、礼を言わせてもらいたい」
はえ……?
お礼……?
「素直になれんわしの、悩みの声を聞き、わしらのために、こうして思いを届けてくれたのだろう?」
「え? いや……ちが……」
完全に事故だったんだけど……?
「すごい! まるで恋の神さまみたいだべ! キリエ様は、本当に凄いお方だべー!」
デッカーちゃんが笑顔で、わたしにだきついてくる。
ふぐぅう……く、苦しい……。
胸が苦しい。物理的にも、精神的にも。
「ち、違うの……これは力が暴発しちゃって……」
「ありがとう! キリエ様は人を幸せにする、凄い偉い神さまだべー!」
また神様扱いされてるー!
ああもう……! 違うっていうのにー!
どうしてこうなるのぉ……!!!!
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