表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/196

40.愚かな王子と偽の聖女は、地獄に落ちる



《モーモックSide》


 キリエが神聖結界で、全て元通りにした、一方……。

 彼女を追放したモーモックはというと……。


『なんだ……どうなっている!? なぜぼくは、この姿なのだ!』


 モーモックはゾンビ姿のままだった。

 場所は王都外れの森のなか。


 彼は体中が腐った状態で立っている。


『たしかぼくは……王都でゾンビとなって暴れて……』


 周りの人間たちを襲い、次々とゾンビにしていった。

 大量のゾンビたちとともに、王都を蹂躙していた。


『そこにキリエがあらわれて……』

『モーモック……』

『! ハスレア!』


 同じく、ゾンビとなったハスレアが、なぜかそこにいた。

 美しかった彼女はもういない。

 そこにいたのは、腐った肉の塊だ。


『よかったぁ……もーもっくぅ~……言葉が通じる人が居てぇ……』


 腐り果てた聖女が、涙を流しながら近づいてくる。

 だがそれはおぞましいのひとことだった。


『ち、近寄るなばけもの!!!!』


 ばしっ! とモーモックがハスレアを叩く。

 彼女はぽかんとしたあと、彼を見て言う。


『化け物なんてひどいわよぉ……』

『うるさい! 自分の顔を見て見ろ!』


 彼女が跪いた場所に、水たまりがあった。

 そこに写るのは……。


 目玉がとれて、皮膚がただれ、髪の毛がずり落ちた……まさしく化け物。


『いやぁ、いやぁああああああ! こんな姿……いやよぉ! いやぁああああああああああああああああああああ!!!!』


 ゾンビとなったハスレアが絶望のあまり慟哭する。


『おねがい! 元に戻してぇえ! もどしてよぉお!』

『……ぼくだって戻りたいさ』


 こんなゾンビの姿でいたいわけがない。 

 人間に戻りたい……。


『そうだわ! キリエにたのみましょう! あいつなら治せるわ!』


 彼女はもう、キリエの力を認めていた。

 自分では使えなかった、奇跡の力。


 キリエはそれを自在に使って見せたのだ。


『そうだな……もう……キリエにすがるしかない……謝ろう』

『そうね……』


 ふたりとも、ゾンビでいたときの記憶はボンヤリとだが覚えていた。

 光の翼を生やし、そして王都にあったもの全てを元通りに戻した……。


 まさしくキリエは、女神であった。

 

『ぼくたちは間違っていた……彼女は神だったのだ』

『そうね……本当に悪いことしたわ。謝って……なおしてもらいましょ』


 二匹のゾンビは、そういいながら、森の外へ出る……。

 そのときだった。


 じゅううううう!


『『うぎゃぁああああああああああああああああああああああ!!!!』』


 森を出て、日の光を浴びた瞬間、彼らの身体に激痛が走った。

 その場に倒れて動けなくなる。


『いたいよぉおおおお!』

『なんだぁ! なんだよこれぇえええええええええええええ!?』


 あまりの痛さに悶絶する。

 その場からとにかく退散しようとした。


 だが……動けない。


『足が取れて動けないわ!』

『いてええ! いでええよぉおお! ああああああああああ!』


 ゾンビとなった二人は泣き叫ぶ。

 彼らは……助けを求める。


 少し歩いたところにある、王都に。


『『助けてぇええ! キリエ様ぁああああああああああああ!』』


 だが……。


『『なんでえええええええええええええええええ!?』』


 キリエはあらわれない。

 こうして彼女に救いを求めているのに。

 そのときだ。


「それは当然でやがるです」

『『誰だ!?』』


 バサッ……! と白い翼が広がる。

 目の前に現れたのは、光る翼を持った、美しい少年だ。


 そう……。


『て、天使……?』

「てめらの言葉で言うのなら、まあ、そうでやがるです」


 長髪の、美少年。

 真っ赤な髪の毛に、キリエと同様の、光の翼を持つ。


 黒いスーツに、天使の輪っか。

 そして、背中には1本の剣を背負っている。


「ぼくはミカエルです」

『み、ミカエル……神話に出てくる、あの?』

「そうでやがるです。ぼくは神の代行者でやがるです」


 ミカエルと名乗った天使は、哀れな存在でもみるかのような目線を、モーモックたちに向ける。


「おめーらは神に見放されたです。だから、【神候補】の力が発動しなかったでやがるです」

『か、神候補……誰のことだ?』

「てめえらがひどいことした、あのお姉ちゃんでやがるです」

『! き、キリエのことか……!』


 こくん、とミカエルがうなずく。


「あの神候補でやがるです。第一の試練を突破しやがったです」

『第一の……試練?』


 まるで、第二、第三があるかのようないいかただ。

 試練とは、何を試しているのか……。


「ゾンビになった王都の民たちを、みんな人間に戻しただけでなく、死者蘇生もした。そして、壊れた建物を直し、ゾンビの腐肉で腐った土地を浄化した。なかなかです。90点をあげましょうです」


 にっこり、とミカエルが微笑む。


「これは、先が楽しみですね。新たなる神が生まれるのも、そう遠くないです」


 ふわ……とミカエルが翼を広げて、その場をあとにしようとする。


『ま、待ってくれ! ぼくたちも助けてくれ!』


 ミカエルは言っていた。

 キリエがゾンビになったひとたちを、みんな元に戻したと。


『ぼくたちはまだ人間に戻ってないぞ!』

『そ、そうよ! 人間に戻して! 戻してよぉ!』


 しかしミカエルは、冷たいまなざしを彼らに向ける。


「無理に決まってやがるです」

『『どうして!?』』

「てめえらは、神に救われるべき人間じゃないからです。この穢れた魂の、悪人どもめ」


 ミカエルが軽蔑のまなざしを、醜い肉塊に向けて言う。


「神が助けるのは、神を信じる善良な魂のもちぬしだけ。てめえらみたいな、薄汚い魂は、神が手助けする価値もない。よって、神はてめえらを冥界へ落とすことを決定したです」

『めいかい……?』

「地の底に存在する、魂の牢獄でやがるです。救うことのできない悪人の魂は、冥界にある魂の牢獄にとらわれて、一生苦しみ続けるです」


 この世界において、万物は転生する。

 しかし冥界に落ちた魂は、転生することができず、一生、不滅の存在として、生き続けなければいけない。


「光の届かない、暗くて、寒い牢獄の中で、自らの行いを悔い続けるです」


 どんどんと肉体が蒸発していく。

 骨すらも残らず……消滅する。


 やがて魂だけとなったモーモックとハスレア。

 地面から無数の手が伸びて、彼らの魂を掴む。


『いやぁ! なにこれぇええ!』

「冥界の番人が、てめらをお出迎えです」


 無数の手はモーモックたちの魂を、地の底へと引きずり込んでいく。

 ずぶずぶ……とふたりの魂が地面に沈んでいく。


『いやぁああああああ! 助けてキリエ様ぁああああああああ!』

『キリエぇえええええええええ! ぼくが悪かったよおぉおおおおおお! たすけてよぉおおおおおおおおおおおお!』


 涙を流しながら、泣き叫ぶ二人。

 しかし彼らの声が神……そして、神候補であるキリエに届くことはない。


「じゃあな、きたねえ魂の持ち主ども。冥界の牢獄で、一生苦しみ続けるがいいです」

『『いやぁああああああああああああ!』』


 ……モーモックは地に落とされながら、激しく後悔した。

 こんな馬鹿な女と、出会わなければ。

 今頃、こんな目に会わなかったのに……。


『ごめんなさいキリエ様ぁあああああ! たすけてぇええええ! わたしだけでもぉおおお!』

『なんだとてめええ! てめえのせいだろうがぁああああ!』


 ……最後の最後まで、ふたりは醜く罵り合っていた。

 これでは、神も神候補キリエも助けられないだろう。


 やがて二人の魂が完全に消滅する。

 その様を見て、天使ミカエルは言う。

 

「善人は救われ、悪人は裁かれる。それが、この世界のルール、でやがるです」


【★読者の皆様へ お願いがあります】


ブクマ、評価はモチベーション維持向上につながります!


現時点でも構いませんので、

ページ下部↓の【☆☆☆☆☆】から評価して頂けると嬉しいです!


お好きな★を入れてください!


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 「地の底に存在する、魂の牢獄でやがるです。救うことのできない悪人の魂は、冥界にある魂の牢獄にとらわれて、一生苦しみ続けるです」 ↑ 生が終わり死んで冥界行くのに一生とは?? 変えるとし…
[一言] 能力がぶっ飛んでたからノア様のお遊びかと思ったら普通に神々の挑戦なのか…
[気になる点] 「やがて二人の魂が完全に消滅する。」 一生、不滅の存在、と前述しているのに、「消滅」とはおかしな表現だと思います。 (死んだのに「一生」というのも変ですが)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ