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38.守護者の活躍



《チャトゥラSide》


 キリエの配下である、聖十二支デーバのひとりチャトゥラ。

 彼は森の民を率いて、聖女の窮地に助太刀しにきた。


「チャトゥラさんはみんなの指揮をお願いね。わたしは怪我人の治療と隔離をするわ」

「わかりました。ゾンビはどういたしましょう」

「無力化してください。殺すのは駄目です」


 ……ゾンビは頭を潰せば死ぬ。

 だがキリエはそれをよしとしないようだ。


 チャトゥラは人間に対する興味など毛ほども持ち合わせていない。

 彼が唯一心を許すのは、初代聖魔王エレソンの遺志を継ぐ存在、キリエだけだ。

 その彼女が、殺しはするなというのなら、それに従うまで。


「わかりました。では、私は民を率いてゾンビどもの無力化を。キリエ様は怪我人の治療と結界による隔離。シンドゥーラはキリエ様についてください」


 こくん、とうなずく。

 グリフォンのシンドゥーラがキリエを背中に乗せて飛び立つ。


 残されたチャトゥラは、遠くで暴れてるアニラに言う。


「聞いてましたねアニラ……!」

『わかってるよ! 殺しは無し! だろ!』


 暴虐竜アニラ。

 彼女は聖魔王エレソンと同様、魔王種(※最上位の魔物)。


 だが強い力を暴力に使ってしまうような暴れん坊だった。

 エレソンですら、手を焼く存在。


 ……それがどうだ。


『ほかでもねえ、キリエの頼みだ! おれさまはそれに従うぜえ!』


 巨大な屍竜と取っ組み合う、暴虐竜アニラ。

 あの竜を従わせてしまうなんて。


 暴力では無く、人を生かすために、力を振えるようになるなんて。


「やはりキリエ様は……素晴らしいお方だ」


 キリエ・イノリ。

 彼女が来てからすべてが好転した。


 森の問題も、魔物と人の問題も、なにもかも。

 きっとキリエは天より舞い降りた、神の一柱なのだろうとチャトゥラは思っている。


 アニラは屍竜の腹を蹴飛ばす。


『おらどうしたドラゴンよぉ? それでおわりか? ああん?』


 明らかに弱者をなぶっていた。

 ……まあ殺してないから、よしとしよう。


「では皆さん、行動開始です!」

『『『おー!』』』


 くま吉をはじめ、モンスター達が建物の周りに居たゾンビ達と相対する。


『くらえ……! くま拳!』


 くま吉が思い切り拳をたたきつける。

 どごぉん! という大きな音ととともに、ゾンビの群れが吹っ飛ぶ。


『やるじゃないかいくま吉! 息子が活路を開いた! さぁいくよおまえら!』


 どどど! とくま吉の母、くま子が森の魔物達とともに外に出る。

 ゾンビであふれかえる王都のなか、魔物達が応戦する。


『いって! 母ちゃん! ゾンビにかまれちまったよぅ!』

『安心しなくま吉! 自分の体をみな!』

『! キリエ姉ちゃんの加護が!』


 そう……魔物達の体には、いつの間にか聖なる結界が付与されていた。


『キリエはあたいらを守るため、飛び立つ前に力をくれたのさ!』

『ありがとうねえちゃん! うぉおお! おいらがんばるぞー!』


 魔物達がキリエのもとで団結している。 それはかつてエレソンがいたときと同じ光景。


「あの壊れた建物のなかから人の気配です!」


 チャトゥラが命じると、魔物達が押し寄せる。


『ぴゅいー! かぜくらえー!』

『すらーのみずもくらえー』


 グリフォン、そしてスライムの子供がゾンビを押し流す。

 そしてくま吉が壊れた壁を、ぐいっと持ち上げる。


「ひぃ……!」「ま、魔物……!」「おしまいだぁ!」


 人間達だ。どうやら隠れてやり過ごそうとしていたのだろう。


 助けてくれたくま吉たちに完全に怯えている……。

 チャトゥラが出て行こうとしたそのときだ。


『みなさん! 聞いてください!』


 キリエの声が脳裏に響き渡る。


「これは……初めて出会ったときに、キリエ様が使っていた心の声!」


 テレパシーを届ける力が、キリエには備わっていた。

 傷付いた魂が回復したことで使われなくなったのだが……。


『魔物さん達は、仲間です! わたしの手伝いをしてくださってるんです!』


「キリエ様の声だ!」「なに、あの優しい聖女様が!」「キリエ様が助けに来てくれたんだ!」


 王都の民たちの顔が一気に明るくなる。

 キリエのことを皆知っているのだろう。

『怖がらないでください! 魔物さん達は仲間です!』


 それだけ言うと、心の声は消えた。

 くま吉が助けた、王都の人が……。


「ありがとうよ、くまちゃん!」


 皆がくま吉、そして他の魔物達に感謝の言葉を述べる。

 ……彼らは一様に驚いてるようだ。


 魔物とは本来、人間から忌み嫌われてる存在だから。

 キリエが側にいないのに、人間達は自分たちに感謝してきてくれる。


「これも……キリエ様の人徳のなす業……か」


 キリエがいなかったら、魔物は今も昔も、人類の敵扱いされていただろう。

 キリエがいてくれたからこそ、彼らは一つになれたのだ。


「やはり……あのお方は女神。この荒れ果てた地上に降り立った……」

『チャトゥラじゃま! どきな!』


 どごぉおん! という音ととともに、屍竜ドラゴンゾンビが倒れる。

 その際の破片がチャトゥラの頭にごつんと当たった。


「トカゲぇ……! 何しやがるのです!」

『おめーがぼっと突っ立ってるのがわるい』


 アニラはキリエの命令通り、屍竜ドラゴンゾンビの相手をしてる様子。

 敵の体にダメージは入ってるが、死んでいないようだ。


『他にも同じように、こまってる人間がいるんだ。何一カ所に突っ立ってぼさってしてるんだよ、指揮官だろ、てめえ』


 ……そうだった。

 アニラに発破をかけられて、己の立場を再認識した。


「わかっております。皆……散開して、ゾンビを制圧。さらに倒壊した建物のなかに人が居ないかをたしかめ、可能なら救助を!」

『『『おう!』』』


 みな、キリエのために尽力してる。

 あの人がいなかったら、ここまでの団結は見せなかっただろう。


 チャトゥラは彼女が森の主になってくれたことに深く感謝しながら、嫌いな人間達を守るために、奮闘するのだった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 主人公は盗賊に襲われて、喋れなくなると同時に聖女の力に目覚めたんですよね? それでテレパシーに目覚めたのが通報された後なら王都の民が主人公の声を聞く機会なんてなかったと思うんですけど、…
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