37.神は守護者を引き連れ、降臨する
《キリエSide》
わたしは救いを求める声に導かれて、奈落の森から別の場所へと転移してきた。
誰かが神に祈ったのだろう。
前にもあった。
神さまの命令に従い、わたしは救いを求める民の元へときたわけなのだが……。
「ここは……王都の大神殿?」
勝手知ったる、ゲータ・ニィガ王国にある大神殿の中だ。
だが危機的状況であることは一瞬で理解できた。
「ギッシャシャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
屍竜が目の前に居て、背後には元同僚の聖職者や、そして、イオン司祭様が倒れている。
「聖女……キリエ……様……」
イオン司祭様の体はボロボロだった。
今にも死んでしまいそうなほどのダメージを負っている。
わたしは神さまに祈る。
どうか、彼をお助け下さい。
この方はたくさんの人たちに、心の安寧を与えていた。
凄い司祭様なのだ。
死んでいい人じゃないのです。
どうか……。
わたしが目をつむって、神に祈ると……。
「なんだ!?」「あのまばゆい光は!?」「見ろ! 司祭様がみるみるうちに元気になってくぞ!!!」
目を開けると、綺麗な姿をしたイオン司祭様がいた。
どうやら神さまは、彼に助けの手を差し伸べたようである。
「あんな重傷を一発で直すなんて……さすがです、キリエ神様!」
イオン様が、なんかわたしに対して敬意を払ってくる……?
気のせいよね、わたしは彼の元部下なのよ?
まあ、今はどうでも良い。
「屍竜さん。あなたも、苦しみから救って差し上げるわ。おとなしくして」
「ギシャシャシャシャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
口から毒のブレスを放つ。
神の祈りにより、聖なるバリアが張られる。
毒ブレスはバリアで防げるのだけど……。
防御してる間、わたしは治療・浄化をすることができない。
「ギッシャアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
今度は屍竜が殴りかかってくる。
見上げるほどの巨体から、凄まじい勢いのパンチが繰り出される。
ぐしゃぁあ……!!!!!
「み、見ろ! キリエ様のバリアが、屍竜の攻撃を防いだぞ!?」
「それどころか、殴ったドラゴンの拳にダメージを与えるなんて!」
「すごいです! さすがキリエ神様!!!!」
ん? んん~……?
やっぱり聞き間違えかしら。
元同僚達が、わたしに神なんてつける……わけないわよね。
彼らもノアール神に仕える聖職者たちなんだし……。
「ぎしゃしゃ! ぎっしゃぁああああああああああああ!!!」
屍竜がめちゃくちゃに拳を振るってくる。
バリアはびくともしない。
しかし結界を解くわけにはいかない。
後ろにいる、民やイオン様を守れなくなる。
こまったわ……。
と、そのときだ。
『ドラゴンきぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっく!!!!!』
上空からものすごい早さで、何かが飛んできて、屍竜を蹴飛ばしたのである。
「ギシャアアアアアアアア!!!!」
屍竜が悲鳴を上げながら吹っ飛んでいく。
わたしは、今駆けつけてくれた【彼女】を見上げる……!
「アニラさん!!!!」
『応! キリエ! 助けに来たぜ……!!!』
暴虐竜アニラ。
竜魔王の称号を持つ、強力無比なドラゴンである。
「あ、あ、アニラぁ……!?」「ばかな! あの暴虐竜がどうして!?」「ひぎぃい! 殺されるぅううう!」
聖職者の皆さん、そして匿われていた民達が震え上がっていた。
そういえば、アニラさんって大昔にやらかしたせいで、悪評が伝わってるんだったわ。
「安心してください。みなさん。彼女は味方です」
「「「み、味方……?」」」
にぃい……とアニラさんがドラゴンの姿で笑うと、親指を立てる。
『応よ! おれさまはキリエの女! キリエの言うことなら何でも聞く! 人間の味方するってんだったら、おれさまも味方をするぜ!』
「「「おおおお! す、すごい……!」」」
そうでしょうとも。
アニラさんは凄いドラゴンなのです。
「「「さすがですキリエ神様!」」」
ほわい?
なんでわたし……? というかまた神……?
「あの伝説の暴虐竜を配下に加えてしまうなんて……!」「やっぱりキリエ様はすごいおかただ!」
ううん……もういいや。
全部あとで、誤解を解こう。
「アニラさん、しばらくの間、屍竜の相手をお任せします。わたしは街のゾンビ達を治療します!」
しかし問題は……人手が足りるだろうか。
王都は広いし、ゾンビになった人たちは結構な数がいる……。
『大丈夫だ! 他にも助っ人が来てるぜ!』
『『『キリエ様ぁあああああああああああああああ!!!』』』
どどどどどど! という足音がする。
わたしは窓から身を乗り出すと、そこには……。
「みんな……!」
森の民である、魔物達が、駆け寄ってきたのである。
『『『キリエ様をお助けし隊! ただいま参上!』』』
くま吉くんに、スラちゃん、ぐーちゃん。
シンドゥーラさんに、チャトゥラさん。
森に暮らす民達が、人間を守るために……駆けつけてくれた。
神さま……見ていらっしゃるでしょうか。
人間達に虐げられていた彼らが、自発的に、人助けのために動いている。
なんと、尊く、美しい行いでしょう……。
『みな! キリエ様の手足となり、彼女の望みを遂行するのです!』
『『『合点承知!!!』』』
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