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25.封印を解除し、暴虐竜を仲間にする



 わたしは北の山脈に封印されていた、暴虐竜ことアニラさんの元に来ていた。

 アニラさんは、友達である初代聖魔王エレソン様を守ろうとしていたことが判明した。


 そこへ、フェンリルのチャトゥラさんが到着したのだった。

 洞窟にて。


「アニラ……久しぶりですね」


 獣人姿のチャトゥラさんが、見上げるほどの巨大な竜、アニラさんにあいさつをする。

 ふたりは既知の間柄なの?


『ああ。おれさまもそこの駄犬同様に、エレソンの配下だったからな』


 駄犬……。


「失礼な、トカゲ。私は貴様と違って、ただの配下ではない。忠実なる一番のしもべだ」

『あ? なーにが一番だ! おれさまのほうが腕っ節は強いっつーの』

「なんだと?」

『なんだよ?』


 二人とも……。

 とても、仲が良いのねっ。


「『よくない!!!!』」


 ふふふ……ケンカするほど仲が良いというしね。

 わたしは知ってるのよ。


「ごほんっ。それでアニラ、あなたはこれからどうするおつもりですか?」


 チャトゥラさんが友達であるアニラさんに尋ねる。


『……エレソンは死んだんだな』

「……そうですね」


 ふたりとも、やっぱりエレソン様のこと、とても大事に思っていたのね。


『エレソンが死んで……おれさまは生きる理由を見失っちまったよ』


 そんな……悲しいこと言わないで。

 何かしたいことないの?


 しばらくの沈黙の後に、ぽつり……とアニラさんが言う。


『……外に出たい』


 外に?

 いいじゃない!


 一緒に行きましょう!

 しかしチャトゥラさんが首を振る。


「キリエ様、それはいけません。アニラはここから出れないのです」

『わかってるよ……エレソンの施した、この封印だろ?』


 アニラさんの周りには、半透明の結界が張ってある。

 これがあるせいで、アニラさんは外に出れないでいるのだ。


『でも……おれさまは、どうしても出たい。ずっとじゃなくていい、一回だけでいい』

「無理です。エレソン様の施したこの封印は、誰にも解除不可能です。私にも、外にいる結界魔法の使い手や、聖女にも」

『そう……か』


 アニラさんが、凄く落ち込んでいる。

 ……ああ、なるほど。


 わたしはアニラさんが、どうして外に出たいのかわかったわ。

 そういうことなのね……。


 よし!

 わたしに任せて!


『キリエ?』

「しかしキリエ様、この聖魔王の封印は、誰にも解除不可能なものです。それに、もう一つ問題があるのです」


 もう一つの問題?


「はい、それは、エレソン様がこの暴虐竜を閉じ込めた理由にも直結します」

『なに? おい駄犬、どういうことだっ!』


 チャトゥラさんは説明する。


「アニラ。そもそも慈悲深いエレソン様が、配下である貴様を封印するのはおかしいとは思わないですか?」

『そりゃ……まあ。でもそれは、おれさまが暴れまくってたから、反省しろって……』

「無論その意味もあります。ですが……」


 アニラさんを守っていたのでしょう?

 するとチャトゥラさんは、目を剥いてわたしを見る。


「どうしてそれを……?」


 わかるわ、エレソン様の気持ち。

 多分アニラさんは強すぎて、各地で暴れ回るものだから、人々からの恨みを買ったのでしょう。


 暴虐竜、倒すべし。

 みたいな空気があったのでは?


「……おっしゃるとおりです。さすがです、キリエ様。ご慧眼であられます」

『そ、そんな……そんなことになってたのかよ……。じゃあ、エレソンは、おれさまを守るために……』


 そう。

 悪い竜は封印された、もう大丈夫とおそらくみんなに言ってきかせたのよ。


 この結界は、あなたを閉じ込めるために張ったのではないわ。

 これはあなたを、守るための結界なのよ。


『うう……エレソン……うぉおおおおおおおおおおおお!』


 がぉおお! とアニラさんが吠える。

 多分辛かったのね。


 大事なお友達に、閉じ込められたのが。 そのわけがわからなくて、不安だったんだわ。


『ああ……ありがとう。おかげで……すっきりしたぜ。でも……なおのこと、外に出たくなった』

「しかしアニラ、話は戻りますが、あなたを外に出すわけにはいきません。暴虐竜は強い力を持っています。この封印ごしでも、その気配は伝わっています」


 なるほど……。

 封印の外に出てしまうと、悪い竜が封印を解かれた。


 そう思われて、また人間達に討伐されてしまうかもしれない……と。


「そのとおりです。アニラはここにいるべきです。そもそも、この封印は誰にも解けないですし」


 え?

 そんなことないわよ。


「『は……?』」


 ようは、この結界を解除し、なおかつ、アニラさんの力をセーブできればいいのね。


「そ、それは……そうですが。ですが、そんなの無理です。結界の解除だけでも不可能なのに、この強大な力を持つ竜の力をセーブすることなど……」


 問題ないわ。

 神様に、不可能はないの。


「おお! なんと頼もしいセリフを! さすがです、キリエ神さま!」

『しかし……どーすんだよ?』


 わたしは結界に近づいて、手を触れる

 神さま……どうかこの優しい竜を救うための、力を貸してください。


 目を閉じて祈る。

 アニラさんを助ける方法を思い描きながら。


 すると……。


『! け、結界が! どんどんと小さくなっていくよぉ!』


 大丈夫よ、アニラさん。

 そのまま動かないで。


『おれさまの体にぴったりと……。! どんどんとおれさまの体ごと小さく!』


「そうか! 結界を解除し、消すのではなく! 形を変えるのですね!」


 その通り。

 まあ、解除もできるのだけども、せっかくエレソン様が作ってくれた封印を、消すのはもったいないわ。


 そこで、現在の結界の形を、アニラさんの体と魂にぴったりと合うように変形させる。

 ドーム状の、固定した結界から、洋服のように、その人の体にぴったりと合う形へと。


 固定化を解除し、動かせるようにする。

 そうすることで……結界を体におおったまま、外を出歩けるようになる。

 これなら、アニラさんの強い力をセーブしつつ、外に出歩けるようになる。


 結界を解除できないなら、結界ごと動かせるようにすればいい。


「す、すごいです! そのような発想……誰も思いつきません!」

「おお! すげえ! 見ろよチャトゥラ! キリエ!」


 わたしは目を開ける……。

 そこには……。


 ど、どちらさま?

 とても美しい、大人の【女性】が立っていた。


「おれさまだぜ! アニラだよ!」


 あ、アニラさん?

 え、じょ、女性だったの!?


「おうよキリエ! なんだ、おれさまを男だと思ってたのか?」


 え、ええ……。

 しかし、改めてみると、美しいです。


 背が高く、小麦色の肌をしてる。

 紅蓮の長い髪がある。


 これだけみると、ナイスバディなお姉さんだわ。

 でも頭からツノがはえ、お尻から竜の尻尾が生えてる。


 竜人ドラゴニュートみたい……。


「なんですかそのはしたない格好は! 全裸なんて!」

「しかたねーだろ、おれさまは服なんて着ないんだから」


 わたしはスラちゃんから習ったスキル、アイテムボックスから、毛布を取りだしてわたす。

 これを、着てください。


「おお! キリエ~! ありがと~!」


 ばっ! とアニラさんはわたしに抱きついて……。

 ちゅちゅっ、と頬にキスをしてきた。


「なぁにをしてるんだ貴様ぁあああああああああああああああああああ!!!」


 空気がビリビリとふるえるほどの大声を出す、チャトゥラさん。


「別にいいだろー。おれさま、今日からキリエの配下となる! おれさまはキリエが気に入ったのだ! おれさまの嫁となってくれ!」

「ふざけるなトカゲぇえええええええええええええええええ!」


 チャトゥラさんがドロップキックを食らわせようとする。

 しかしアニラさんはその蹴りを手で受け止めて、後ろに放り投げる。


「なんだチャトゥラ? おまえもおれさまのキリエを好いているのか?」

「な、なななあ! そ、そんな恐れ多いことを……というか貴様! なんだおれさまのって! キリエ様は森の民全員のキリエ様だぞ!」


 ふふふふ……仲良いなぁ、ふたりとも。

 まあ、何はともあれ、アニラさんが元気になって良かったわ。


「ありがとな、キリエ! おれさま、おまえのためにこれから、尽くすとしよう!」


 感謝なんて不要ですし、尽くすなんて

言わなくて良いです。

 仲良くしましょ、同じ森にくらす仲間じゃないですか。


「おうよ!」

「貴様不敬だぞ! キリエ様になんて口の利き方をぉおお!」


    ★


《世界各国Side》


「なに!? 暴虐竜アニラの気配が消えただと!?」

「馬鹿な! あの北の山脈に捕らわれていたアニラが!?」

「うそだろう!? 誰が討伐したのだ!?」

「いや、誰かが捕まえたのかもしれない!」

「いずれにしろあ、あり得ない……! 


『暴虐竜が死んだだと?』

『馬鹿な、ありえない』

『しかしあの馬鹿でかい気配が消えたんだぞ? 死んだ以外に考えられない』

『いや死んだとは限らない』

『いずれにしろ……これは大事件だ』

『ああ、我ら魔物の勢力図が、がらりと変わる大事件だ』


「『いったい……誰が、暴虐竜を討伐したのだ!?』」 


 ……この件は、人間、そして魔物間に大激震を巻き起こしていたのだが……。

 当のキリエ本人は、そんなこと、まったく気づいていないのだった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 代表作くらい一つに固定したらどうですか?ころころ代表作が変わってたらそれもう代表作じゃないから [一言] 一位なれるといいですねww最後のチャンス…本当に都合のいい単語ですね
2023/03/26 13:11 退会済み
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