184.奮い立つ子ら
キリエは、生きている。
くま吉はそう主張する。
わんこは、最初くま吉が現実を受け止められていないのかと思った。子供だから、人の死を理解できていないのはしょうがないと。
だが、違う。
くま吉は現状を理解できていないのではない。事実を告げている。そう、思わせるほどの目力があった。
「なにか、確証があるんですかい?」
「うん! 姉ちゃんは……くるよ! だから……おいらたちは姉ちゃんがくるまで! 姉ちゃんの体を守るんだ!」
くま吉が大人サイズへと変化する。
この場でただ一匹だけ、逢魔に立ち向かおうとしてる。
くま吉の姿を見て、わんこも自分を奮い立たせる。
キリエが生きてるかどうか、まだ自分にはわからない。
けれど、だ。
キリエが守ろうとしたこの世界を、あんな逢魔なんかに、支配されたくない。
「あっしも戦います」
「ぴゅい! ぐーちゃんも!」「すらも!」「ムイも!」
「……ワタシも、キリエ様を守る」
デュラハンのゆらもまた剣を構える。
うつむき立ち上がれないでいるのは、アニラただ一人。
「そこの竜よ」
「…………」
かぐやは、アニラの隣にやってきた。
「キリエは生きて、帰ってくるらしいぞ」
「…………」
アニラは動かない。彼女はかつて、一度自分の大事な人を死なせてしまってる。
また今回も、と自分を責めているのだろう。
かぐやはアニラの尻を蹴り上げる。
「何うじうじしてるのじゃ!」
アニラがキリエの死体を見つめる。
「この子が生きているか死んでいるかはわらわにもわからん。じゃが! そんな姿を見たキリエは、おぬしに対してどう思う?」
キリエは優しい子だ。
この森の民は皆、そんな優しい聖魔王のことが大好きだ。
誰かが悲しみ、落ち込んでいたら、キリエもまた悲しくなってしまう。
……アニラは、立ち上がる。
「キリエを、悲しませたくねえ!」
かっ! とアニラは竜の姿になる。
『おれは戦うぞ! いくぞ、ガキども!』
『『『うぉお!』』』




