179.逢魔、相対
わたしは封神の塔の最上階へと、ついにたどり着いた。
この塔のことを知り尽くしてる、かぐやさんがここまで道案内してくれたのだ。
出てくる敵はみんなで協力して倒してた。
そして……最上階。
見上げると空が広がっている。
目の前には庭園があった。けれど、庭の草木、花々は枯れ果てている。
庭園の奥に祭壇がある。
フードをかぶった人物が祭壇にしつらえた椅子に、深々と腰を下ろしていた。
「来たぞ、逢魔!」
かぐやさんが声を張り上げる。彼女の瞳には怒りの炎が浮かんでいた。
彼女から迷宮主の座を奪い、たくさんの人たちを殺し尽くした元凶なのだ。怒ってもしょうがないだろう。
「……来たか、聖魔王」
しかしフードの人物はかぐやさんではなく、わたしに向かってそういった。
「会いたかったぜ、聖魔王」
「……なんでですか?」
「そりゃあ、くく……これを見れば一発だろう?」
フードの人物は、自分の顔を覆っているフードを取る。
……そこに居たのは、一人の男性だった。
「……!?」
「この顔に見覚えがあるだろう?」
「あ……あ……」
なんてことだ……。
フードの下に隠れていた素顔……。
わたしは、その顔に、見覚えがあった。
『姉ちゃんどうしたの?』
くま吉君がわたしを心配してる。魔物の赤ちゃん達も同じだ。
でも……わたしは彼らの声を、遠くに感じていた。
嘘……そんな……。
『おまえ誰だ! 姉ちゃんに何したんだよ!』
くま吉君がその人……否、その御方に尋ねる。
すると……。
「おれは何もしてないさ。ただショックを受けてるんだろうよ。なにせ……」
にやり、と邪悪に笑うその顔は……。
わたしが、心から、お慕いしてる御方……。
「このおれ、【ノアール】を生で見たんだからよぉ」
……わたしの前に立ち塞がる、ボス。逢魔。
その正体が、わたしが今までずっと善なる神と信じてきた、ノアール様だったのだ。




