178.他者のため
わたしはかぐやさん、くま吉くんたち、そしてゆらちゃんを連れて、封神の塔を昇っていく。
目指すは屋上。
そこに、この騒動の元凶、逢魔がいるそうだ。
わたしは逢魔の元へ、説法をしに行く。
彼は危険だ。
同じ魔王種なのに、その力を他者の平和を脅かすことにしか使っていない。
そんなのは駄目。
力は他人を不幸にするためではなく、幸せにするために振るわれるべきだわ。
それを、ちゃんとわかってもらわないと。
『おらおらぁ! いくぜぇええい!』
大人化したくま吉くんの背中に乗る私。
くま吉君は猛スピードで塔を駆け上っていく。
ゆらちゃんはかぐや様をお姫様抱っこし、すさまじいスピードで走っている。
魔物の赤ちゃん達はわんこさんの背中に乗っている。
道中、わたしたちの行く手を阻むように、魔導人形が出現し、襲いかかってくる。
「結界!」
わたしは結界を使って魔導人形たちを動けなくする。
ゆらちゃんが片手で大剣を持ち……。
「ちぇい!」
大剣を軽く振るうだけで、魔導人形は一発で消し飛んだ。
『ゆらちゃんすげえー!』『ぴゅいいい! ちからもちー!』『もちもち!』『おもちー!』
やんややんや、と赤ちゃん達がゆらちゃんを褒める。
一方、かぐやさまも驚いてるようだ。
「ゆら……ソナタそんなに強かったかの?」
「ううん……キリエ様のおかげ……」
「なるほどのぉ。確かにおまえ様はわらわを凌駕するほどの、強い魔王種のようじゃしなぁ」
今までだったらノアール様のお力、といっていたところだろう。
でもわたしは、もうこれが自分の力だと自覚してる。
力の自覚が、わたしに進化をもたらしたような気がする。
どうすれば、どういう結果をもたらすのか理解できる。
わたしは名前をつけたりいやしたり、とにかく他者に魔力を付与することで、凄い力を他者に分け与えることができるのだわ。
多分、これがわたしの使命なのだろう。
自分の力を、他人のために使いなさい。そう、ノアール様が、おっしゃってる気がした。




