166.迷宮の中へ
わたしは迷宮都市ナントにある、封神の塔というダンジョンへとやってきた。
ここにいる、前の迷宮主さんを蘇生させ、悪い迷宮主さんに、説法するためだ。
『わー……! でっっっっっけ~!』
塔の内部、くま吉くんが空を見上げながら言う。
『ぐるぐる階段! ぴゅー!』
『ぐーるぐーる~』
『らせんかいだんー』
くるくる、と魔物の子らがその場で回っている。
壁に沿って階段が、上へと続いていた。
すごいわ、どこまで繋がってるんだろう……。
「キリエ様。あっしが、中の偵察を行います」
わんこさん(人間バージョン)が言う。
「お願いね」
「はい! 分身の術!」
わんこさんがそう叫ぶと、同じ姿をした、分身が出現する。
「散れ!」
ばっ! とわんこさん分身が、走り出す。
階段を上るもの、壁をよじ登るもの。
分身さんたちが、このダンジョンの構造を調べてくれている。
『キリエ姉ちゃん、こっからどーすんの?』
「まずは内部の構造を把握することが先決ね。いまわんこさんがやってくれてるから、ちょっと待ちましょう」
すると……。
『ぴゅ! なんか……おちてくるよぉー!』
上から、何か大きなモノが落ちてきた。
ズズゥウウウウウウウン!
「これは……魔導人形……?」
魔法で動く、特殊な人形。
魔導人形だわ。
それにしても……おっきい……。
『キリエ姉ちゃんに、手ぇだすんじゃねえぞごらー!』
ぼんっ、とくま吉君が大きくなる。
どうやらくま吉君が戦おうとしてるらしい。
……ノアール神様、どうか、くま吉君が傷付かないように、お守りください。
『でたぁ! ねーちゃの、せーなるびーむだぁ!』
『ひっさつわざきたー』
くま吉君が光り輝いてる。
むんっ、と構えると、くま吉君がつっこむ。
『くらえ! 熊パンチ!』
かわいらしいネーミングとは裏腹に……。
バゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!
魔導人形は、くま吉君のパンチを受けて、粉々になった。
『うぉー! 今日もぜっこーちょー! 姉ちゃんの力は……って、どうしたのねーちゃん?』
わたしはくま吉君の手に触れる。
治癒の光を施す。
「おてて、いたかったね。ごめんね」
……あんな硬いのを殴ったら、手が痛むと思ったのだ。
『キリエ神の加護があるから、だいじょーぶ!』
『もーまんたーい』
……キリエ神じゃないんだけども。
まあ、無事っぽいからよかった。
「キリエ様、内部構造を調べてまいりました。こちらをどうぞ」
わんこさんが、わたしに地図を渡してくる。
彼女が情報を統括して、地図にしてくれたようだ。
「ありがとう」
図面に目を落とす。
どうやら、螺旋階段がずっと続いてるんじゃなくて、そこから通路が無数に分岐してるような構造らしい。
地図上に、★マークがあった。
「ここに、いるのね」
「はい。おそらくは。ただ、厳重に鍵が掛かっておりました」
今の迷宮主からすれば、前の人が復活してしまうと、困る。
だから閉じ込めてる……って、考えるのならば、ここにわたしたちの探し人がいる可能性は高い。
「参りましょう」
『『『おいさー!』』』
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