146.神パワー
朝のお祈りを済ませた後……。
魔物さんたちは三々五々散らばっていく。
現場を任せているくま子さん曰く、みんなそれぞれ働いてるそうなのだ。
「わ、わたしも働かないと……」
『姉ちゃんは働かなくていいんだよ?』
デッドエンド村にて。
くま吉君がわたしを乗っけた状態で言う。
「駄目よ。わたしも手伝わないと」
『それは駄目だぜ』
「だめ……?」
『うん。姉ちゃん怪我させたら、おいら母ちゃんに叱られちまうし、みんな悲しむぜ』
そうはいっても……一人だけなにもしないのもね……。
『姉ちゃんはしょ、しょー……しょちょ……所長だからな!』
「所長……? 象徴みたいな?」
『そうそれ! そこにいて、どっしり構えてればいいんだって母ちゃん言ってたよ』
そんなこと言われても……わたし、みんなが働いてるのに、自分だけなにもしないなんて、できないわ。申し訳なさ過ぎる。でも何もするなって言うし……。
でもくま子さんの言いたいこともわかる。わたしが怪我したら、大勢の森の民たちを心配させるのよね。うーん……うーん……
『そんなに何かしたいなら……がんばれー! って応援すれば?』
「応援……? そんなことでいいの?」
『うん! みんな姉ちゃんにがんばれーって、言われたら、がんばるー! ってなる、よなぁ?』
頭の上のぐーちゃんと、抱っこしてるスラちゃんが『『なリュー!』』と同意する。
そういうものなのかしら……?
「じゃあ、そうね。みんなを励ましにいきましょう。まずは……ドワーフさんたちのもとへ向かってね」
『あいさー!』
くま吉君が村の中をぽてぽてと歩いて行く。
働いてるドワーフさんや魔物さん達が、すれ違いざまにわたしに挨拶をしてくれる。
「おはよう、皆さん。せいがでますね」
『『『うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!』』』
ごぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
「え……ええ!? なにこれ!?」
なんか、魔物さんたちの体から、黄金のオーラ? が出てるんだけどっ?
どうなってるのかしら……?
『やる気!』『元気!』『『ふぁいあー!』』
すごいスピードで魔物さんたちが去ってった……。
な、何かしら……?
ほどなくして、ドワーフのガンコジーさんと、恋人のデッカーちゃんのもとへとやってきた。
ドワーフとトロルの二族は、新しい建物をどんどんと建てていってる。魔物さんたちは今まで基本野宿だったから、ドワーフさんたちの作るおうちの快適さに、涙を流してるみたい。
こうして多種族が集まって、それぞれの長所を生かし、さらに幸せになる……。とてもいいことだと思うわ。ノアール神様もきっと、この平和でみんなが共存する小さな世界を見て、喜んでいることでしょう。
「よぉ、魔王様。いや、神様かな? ん?」
「やめてください、ガンコジーさん……からかわないで……」
本当に凹んでいるのだから。わたしにとって神はノアール神さまだけなのに……。
「悪かったな嬢ちゃん。あの像、いらんかったか?」
ガンコジーさんがノアール神様の像を造ってくれた。そこは感謝してる。……でもキリエ神像はちょっとやめてほしかった……。
とはいえ。
「いえ、あの、ありがとうございます。みんなにお祈りの概念を覚えてもらうためには、必要なものでしたから……」
わたしの像もね。
「あー! キリエちゃん様だべー!」
「デッカーちゃんっ」
わたしたちは手をつないで、きゃっきゃと飛び跳ねる。
「新しいおうちたくさんたててくださり、ありがとうござます。みんな喜んでます。この調子でその……がんばって」
すると……。
「ふぉおおおおお! 体に力がみなぎるだべ~~~~~~~~~~~~!」
デッカーちゃんの体も黄金に輝いてる!?
「ど、どうなってるの……?」
「前にヴァジュラの嬢ちゃんがいってたが、神は何かするだけで、そこに神気ってものが宿るらしい」
「は、はあ……?」
「嬢ちゃんが励ますと、神気っていう神のパワーが対象に宿り、パフォーマンスがあがるんだそうだ」
え、えっと……。
つまり、わたしが励ますだけで、気持ち的に元気になるんじゃあなくて、実際にパワーがアップするってこと……!?
『さすが姉ちゃん、はげましも神だぜ!』『かみー』『しゅげー』
「……わたし、なんだかどんどん、人間離れしていってる……?」
「安心しろ。嬢ちゃん。今に始まったことじゃあないから」
うう……




