145.キリエ神像
わたしは現在、デッドエンドって場所に居る。
奈落の森の外れにある、不毛の地だった。
何もない荒野だったその場所に、しかし、今は大きな街ができてる。
レンガ造りの立派な街だ。外の敵から身を守るための、外壁まで存在する。
ガンコジーさんとドワーフ、巨人族とデッカーちゃんたちのおかげで、ここは人も魔物も暮らせる、便利な街になっていた。
そんな、素敵な街の中心に……【二つ】の像がある。
ひとつは、誰でも知ってる神、ノアール神像。
わたしが敬愛し、天導教会の人たちみんながあがめている神様……。
……そして、その隣には、もう一つの神の像がある。
……不遜にも、わたしの像なのだ。
「ええと……みんな、じゃあ、朝のお祈りはじめましょうか」
「「「うぇーい!」」」
いつの間にか、魔物の子以外の人たちも集まっていた。
みんな早起きなのよね。わたしのお祈りに付き合ってくれる、のはいいんだけど……。
「さ、みんな、神様の前で跪いて」
さっ、とわたしはノアール神様のまえでひざまづく。
……しかし魔物や街の人たちは、キリエ像のまえで、跪いていた……!
「あ、あのねみんな。神様の前でっていったよね?」
別に、どの神を信じるかは、その人の自由よ?
でも……でもね、みんなが今豊かに暮らせてるのは、ノアール神さまのお力があってこそなの。わたしがまあ、神様の力を使って、神の威を知らしめてはいるけども……。
「「「おっけー! 神様っ」」」
やっぱり、ノアール神さまではなく、わたしの像の前で、みんなが頭をさげ、お祈りをしている……!
よくないわ……実によくない。
一番の神様はノアール神さま。
みんなにもそれをわかってほしい!
「きょ、今日はその、わたしじゃなくて、ノアール神さまにお祈りをしてみましょうか!」
「「「…………」」」
「み、みんなが大好きな神に、お、お祈りしましょう!」
するとみんな……神の前で祈りだした。
……わたしの像、ではなく、わたしに向かって……!
「「「キリエさま、大好き!」」」
ああ……ごめんなさい、ノアール神さま……。
みんなも悪い人たちじゃあないんです。ちょっと勘違いしてるだけなんです。お許しくださいませ……。




