144.新しい朝
わたしの名前はキリエ・イノリ。
天導教会のシスターだ。
ある日婚約破棄されて、そのうえ国外追放の憂き目に遭う。
王子の策略により、奈落の森においてかれたわたしは、一匹の魔物とで会う。
それがきっかけで、わたしは奈落の森の長、聖魔王となった。
その後色々あって、たくさんの友達が出来た。
今日も森で、わたしたちは元気に暮らしてるのだった……。
☆
「ん……朝ね」
目を覚ますと、極上のもふもふな毛皮の触感をおぼえる。
『ふがー……』『ぴゅー……』『ふぬー……』
魔物の子供たちが、わたしの周りにいて、眠っている。
熊のくま吉くん、グリフォンのぐーちゃん、スライムのすらちゃん。
仲の良い三人組は常にわたしと行動を共にしてる。
寝るときも一緒。
「はぁ……良い毛皮♡」
特にくま吉君の毛皮は最高。
ふわふわもこもこしてるし、常にお日さまみたいな匂いがしてて、しかも温かい。最強では?
しばしもふもふしたあと、よいしょとベッドから降りる。
朝のお祈りの時間だわ。
まだ部屋の中が薄暗いなか、支度をして、外に出る……。
ごんっ!
「あいったぁ~……」
「ちゃ、チャトゥラさん……ごめんなさい!」
「いえ! キリエ様、私めが悪いのです! どうか謝らないでください!」
チャトゥラさんが後頭部をさすりながら、立ち上がる。
「また朝まで護衛を?」
「当然! それが我ら、聖十二支の使命!」
……聖十二支。
先代聖魔王、エレソン様直属の、親衛隊? みたいな魔物達のことだ。
「使命なんて、やめてよ。わたしたち友達でしょう?」
「キリエ様は我らの指導者! 至高の御方!」
「ふぅ……」
わたしは、そういう上下関係とか、あまり好きではないのだ。
神の前では、地上の人たちはみな平等だと思ってる。
特に、この森のみんなは、わたしの……大事なお友達。
そう、友達なのだ。上とか下とか、そういうのはないのに。
チャトゥラは特に、頑固なのだ。
ふらふらとどこかへ消えてしまうわたしの身を案じて、側にいてくれる。
その気持ちはうれしいけど、でも……やっぱりちょっと過保護というか、やり過ぎ感は否めないし。
そんな風に、特別扱いしなくていいのにって思う。
わたしも、チャトゥラさんも、みんな友達なんだから。
「どちらへ向かわれるのですか?」
「朝のお祈りよ」
「ではついて行きます! 護衛です!」
「……そうね」
どうしたら、わたしたちは友達だって思ってもらえるのかしらね。




